ローリングストーン誌が選ぶ「2019年ベスト・メタル・アルバム」トップ10

4位 アルセスト『Spiritual Instinct』


フランスのブラックゲイザー、アルセストが6枚目のアルバムをリリースした。「これらの2つの究極が自分の内側で争っている」とネージュ(Vo,Gt)がSpotifyのシリーズ番組『Metal Talks』で語っていた。「俺には欠点も闇もある。(中略)そしてそれが俺の魂の道筋なんだ。そういう状況を受け入れて生きないとダメなのさ」と。活気がどんどん積み上がる「Protection」では、ドラマーのウィンターハルターの無慈悲で破壊槌のようなドラミングと相まって、ネージュのトレモロの震えが加速する。そして「Sapphire」では、ネージュのギターが増長するポストパンクのリフを密かに騒動に紛れ込ませるのだ。次に待ち構えているのがノルウェー人アーティストのキャスリーン・シェパード、別の名をシルヴェーヌ。彼女は「L’Île Des Morts」のスラッシュのど真ん中で、ネージュと共にオペラ風のセレナーデを披露している。このような完璧なコントラストこそがアルセストの真骨頂だ。それこそ、毛布を少し上げて、その隙間からまばゆく光る荘厳なノイズを見ている感覚とも言える。(SE)




3位 ガシー・ウィルド『Gastir — Ghosts Invited』


世間がGaahl(Vo)について知っていることはたくさんあるが、ノルウェーのこの禁じられたブラック・メタル・シンガーはこれまでTrelldom、Gorgoroth、God Seedなどのフロントマンを務めてきた。彼はゲイであることを公表しているベジタリアンのヴィジュアル・アーティストでもある。しかし、これまでの彼の経歴があらわになっても、メタル界で最も得体のしれない人物であることに変わりはなく、彼のモチベーションは謎のまま。そのミステリーが彼の最新グループ=ガシー・ウィルド(Gaahls Wyrd)の1stフルアルバム『Gastir — Ghosts Invited』を一層魅惑的にしている。頭蓋骨がカタカタと音をたてるメタル・リフの間に、正体不明のギター・ブレイクが突っ込まれ(不気味な「Ek Erilar」で確認してほしい)、歌詞が囁かれ(「From the Spear」の歌詞を解読してみよう)、ボウイ風のドラマが展開され(「Ghosts Invited」)、イゴール・ストラヴィンスキーの交響曲で使った方が活きると思われる不協和音アレンジが施されている(「Though the Past and Past」)。何かに取り憑かれたような音楽だが、不覚にもその音楽に支配されたいと思ってしまうのだ。(KG)


Translated by Miki Nakayama

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