ピンク・フロイドのニック・メイスンが語る、75歳でソロ活動を始めた理由

ソーサーフル・オブ・シークレッツでピンク・フロイドの初期の音楽を再現したメイスンChristaan Felber for Rolling Stone


そういうライブで見られないものこそがソーサーフル・オブ・シークレッツのセットのハイライトといえる。「ナイルの歌」のハードロックの攻撃性、トリッピーな「原子心母」の尺長のジャム、「太陽讃歌」のシュールな音楽の旅。ビーコン劇場で「太陽讃歌」を演奏していたとき、黒い服を着た男が舞台の袖から現れてリード・ヴォーカルをとった。それが2013年以来初めてメイスンと共演するロジャー・ウォーターズとわかると、観客の熱気が最高潮に達した。驚いている観客に向かってウォーターズは「私たちはとても親しい旧友だ。ところでニック、このライブ最高だな。思ったんだけど、お前の腕前、あの頃よりも格段に上がっているんじゃないか?」と言った。

今後のソーサーフル・オブ・シークレッツの予定は未定だ。しかし、メイスンは世界中をツアーするアイデアと、ライブ・アルバムを制作する可能性を示唆している。このバンド活動を一番喜んでいるのがメイスンの奥方ネッティーだ。彼女は女優としてイギリスで長い間活躍している。ビーコン劇場でのライブが始まる前に彼女が楽屋に顔を出した。そして、ネッティーは「彼がやっとプレイしているのを見て興奮しているの。理由を教えましょうか? 彼は生まれて初めてニック・メイスンとして有名になったんですもの」と喜んでいた。

メイスンはそれを聞いて奇妙に感じるらしい。「もともとバンドとしてこのプロジェクトを始めたわけだ。でも、今はなんというか……自分がこのバンドを率いているような雰囲気でね。もちろん全員でやっているのだけど、どうも、このバンドでの自分の存在が大切だと思われているようなんだ。これは全く予期していなかったことさ」と、若干の困惑を隠せない。

ビーコン劇場での公演後の打ち上げで、ウォーターズは隅っこでブルース・ウィリスと肩を寄せ合って話している。一方、メイスンは元ピンク・フロイドのツアー・キーボーディストのジョン・カリンや、かつてピンク・フロイドのコンサート・プロモーターだったマイケル・コールなどと挨拶をしている。メイスンが着ている白いボタンダウンシャツは、ライブ後の汗がひかないせいで濡れているが、彼の表情は活き活きと明るい。そして「このバンドで1曲歌いたいとロジャーが言ってきたときは冗談だと思った」と言って、メイスンが続ける。「今、本当に気分が良い。まあ、ライブのあとは大抵こんな気分だけどね。気分が悪くなる理由なんてないよ」と。

Translated by Miki Nakayama

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