ゾンビ映画を作ったジム・ジャームッシュ、禁煙成功は『大菩薩峠』のおかげだと語る

内臓を食べるシーンで具合が悪くなったイギー・ポップ

—イギー・ポップが飢えたウォーキング・デッドになるまで、どのような指示を出したのでしょうか?

俺はこれまでにもイギーと一緒に仕事をして来たけど、彼はとてもオープンだ。そして指示されるのが好きなんだよ。彼は、「OK、どうしたんだ、俺に何を求めてるんだ?」と知りたがる。今回一つ問題があったとしたら、彼は人工の内臓を食べ過ぎて病気になりそうだったってことかな。ヴィーガンのものもあったし、プラスティックで出来たものもあったし、いろんなものを彼のために準備した。彼はすごくたくさんのテイクを、長い時間をかけて撮ったんだ。しばらくすると、「今、すごく気持ちが悪い。ジム、俺は吐きたくないんだよ!」と言ってきた。だから、「いいよ。あと1ライク、君が内臓を持っているところを撮ったら終わりだからね……」と伝えた。

—今あなたがおっしゃったシーン以外は、 血みどろのシーンは少ないですね。彼らは処分される度に、埃になって散って行きます。この描写は、元々あったアイデアなのでしょうか?

そうだね。スプラッター映画は作りたくなかったから。血みどろ映画にもしたくなかった。でも作中では、たくさん首を落とされるシーンが出てくる。俺たちの体は、60%以上が水分で、心臓や脳もそうだろ? 俺は水風船や半分のソーセージのように、ただ歩いているだけの自分から、このイメージを得たんだ。だからゾンビには灰になってほしいと思った。彼らはもう、乾ききっているから……灰から灰になる。ゾンビに水気がないというアイデアが気に入ってね。今までのゾンビ映画の中で、こういう描写をした作品は無かったんじゃないかな。あるのかな?  俺は見たことがないんだ。でも、自分の独特のアイデアを盛り込むというのは、いつだって良いことだよね。

—キャストの皆さんを見ると、これはあなたの映画だとすぐにわかる内容になっています。

そうだと思う。俺は、自分の好きな人と働きたいからね。ビル(マーレイ)とアダム(ドライバー)、そしてクロエ(セヴィニー)のために、3人の保安官のパートを書いたんだ。そしてスティーヴ・ブシェミのために悪役を作った。なぜなら彼はすごく優しくて、気前が良くて、差別主義者でもないから、彼をめちゃくちゃ性格の悪い差別主義者に仕立て上げて、MAGAハット(Make America Great Againと書かれた帽子)を被せたんだ。彼ならそれをやってくれると思ったからね。


『ザ・デッド・ドント・ダイ』のアダム・ドライバー(©︎Focus Features)

Translated by Leyna Shibuya

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