発売禁止になったビートルズの「ブッチャーカバー」にまつわる裏話

写真家ロバート・ウィテカーによるグロテスクな“ブッチャー(虐殺者)”の写真が、図らずもビートルズの超レアで最も珍重されるコレクターズアイテムとなった。


ウィテカー同様、レノンもまた当時の世界における宗教の役割に大いに興味を持っていた。「キリスト教は今後、衰退し、消滅していくだろう」というイヴニング・スタンダード紙のモーリーン・クリーヴとのインタヴューにおける発言は有名だ。「僕らは今やイエス・キリストよりも有名だ。宗教かロックンロールか、どちらが先に消えてなくなるかはわからない」とジョンは言った。彼の発言はその後、1966年夏の終わりに米国で再び報道されるや、致命的とも言えるスキャンダルに発展した。それに先立つ3月25日、自信に満ち溢れ、実験的なことをしたいという欲望に駆られたビートルズは、ウィテカーのスタジオを訪れた。

キリスト教のイコンをモチーフにした不敬な写真は、バンドにとって間違いなくセールスポイントだった。しかし、飽きっぽいことで悪名高い彼らの興味を惹きつけたのは、撮影のために用意された一連の小道具だった。鎖状につながったソーセージ、入れ歯、生の豚肉の切り身、ガラスの義眼、ハンマー、クギ、白衣、鳥かご、切断された豚の頭部、バラバラになった人形が、まるでオカルトのフリーマーケットのように並べられていた。

「(ウィテカーとは)何度か撮影の仕事をしたことがあったので、彼は僕らの性格を心得ていた」とポール・マッカートニーは、ドキュメンタリー『ザ・ビートルズ・アンソロジー(The Beatles Anthology)』の中で語っている。「彼は僕らがブラックユーモアや悪い冗談が好きなことを知っていた。彼は“ひとつアイディアがある。この白衣を着てくれよ”って言うんだ。僕らにはそう抵抗のあることでもなかった。ただの人形とたくさんの肉というだけだった。彼が何を目指していたかはわからないが、それまで僕らがやらされてきたことよりは、少しばかりユニークに見えた。」

一方でジョージ・ハリスンの評価はそう寛大ではなかった。「気持ちが悪いし馬鹿げたアイディアだと思った。僕らは時々くだらないこともしてきた。そんな馬鹿なことでもそれがクールだとか格好いいとか思ったりしたが、あれは正にそういった類のものだった。あの時も、バンドの一員としてやらざるを得ない状況だった。だから僕らは撮影のために肉屋の白衣を着たんだ。」

サンプル

ウィテカーのみが三連イコンの本当の意味を把握していたのだが、彼は2011年に亡くなるまでに、何種類かの説明をしている。見開きカバーに使われるはずだった最初の写真では、女性がカメラに背を向けてひざまずき、その向こうにはファブフォーが鎖状につながったソーセージを手に立っている。ウィテカーによるとこの写真は、一般の人々と同じ人間としてのビートルズの“誕生”を象徴しているという。「ソーセージは、へその緒を表していた」と2004年に彼は、モジョ誌に語っている。「さらにその写真は、妊娠した女性の子宮の中にあるようなイメージで、乳首と大きな子宮も描かれ、ビートルズの4人のメンバーが女性のお腹の中で1本のへその緒でつながっているイメージになるはずだった。」

2枚目の写真はいわゆる“ブッチャー”ショットで、ビートルズが物理的にも精神的にも、名声によってバラバラにされる危機に瀕していることを示す。「12インチレコードの見開きカバーのセンターに来る2.5インチ角の写真になるはずだった」とウィテカーは、モジョ誌に語っている。「彼らの頭の周囲には、宝石をあしらった銀色の光輪が描かれている。さらに全体的に銀色と金色を使ってロシアのイコン風に仕上げ、教会に掲げられる聖人のように描きたかった。肉はファンを表し、入れ歯や義眼は、彼らを聖書に出てくる金の子牛のように崇拝することの誤りを示している。」

Translated by Smokva Tokyo

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