『ポンキッキーズ』世代なんです!
ーライブ自体は最高でしたけど、日本で普通に暮らす人があの宗教観を理解するのは、けっこうハードル高い感じがしましたね。
そうなんですよ。方やサンダーキャットは、「ドラゴンボールZ」の歌とかですごく盛り上がっていて(笑)。本当に両極端でした。
ーほかに最近の音楽だと、どのへんに興味がありますか?
こないだ来日していたロイル・カーナーは観たかったですね。
ーサウスロンドンの若手ラッパーですよね。まだ23歳くらいで。ライブ盛り上がったらしいです。
そうそう。結局、仕事で残念ながら行けなくて……。昔好きだった感じの人が、ああやって都会的な匂いを持ってリバイバルしてるんだなって。僕の中では、オセロ&ザ・ヒプノティックスを思いだすんですよ。
ーわかります。ロイル・カーナーもジャジーな感じがしますもんね。
あと、ムラ・マサも今度の来日公演(12月)は行きたいです。こんな話をしてますけど、いま一番聴いてるのは米米CLUBなんですよ。
ーその振れ幅は最高ですね(笑)。でも、なんでまたそこへ?
やっぱり『ポンキッキーズ』世代なものでして。「Child’s days memory」を聴くと、ただただ楽しく、とにかく走り回っていた少年時代に気持ちが若返ってしまうんですよ。ある種の清涼剤のような一曲ですね。
ー同世代なのでわかりますよ。あの曲が使われてたの、20年ちょっと昔の話ですよね。
ええ。それで久々に聴いてみたら、やっぱりカッコいいなって。彼らはバンドでもアーティストでもないし、チンドン屋でもないんですよね。あのゴチャ混ぜは本当に個性的だったんだなって。米米CLUBは奥が深いですよ、今になって一人で再評価しています。
ー日本のシーンにもアンテナをかなり張られているじゃないですか。最近の若手で誰か気になるバンドはいますか?
踊FootWorksをよく聴いてますね、数カ月前に知る機会があって。あとはKing Gnuと、名古屋のSuspended 4thってバンドも超カッコいいんですよ。こないだ探してたら見つけたんですけど、まーくん(白井)は知ってたみたいで「ああ、サスフォーね」と言ってました。彼らのライブはぜひ観てみたい。
ーいやー、とめどなく名前が挙がっていきますね。やっぱり日々、いろんな音楽をガンガン探してるんですか?
そうですね、気になったらどんどん調べてます。でも、ただの趣味なんで。
ー音楽との出会いやドラマーとしてのルーツに関しては、LUNA SEAと真矢さん、洋楽ではマーズ・ヴォルタとジョン・セオドア(現クイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジ)が大きかったと伺ってます。では、現在に至るオープンマインドなリスナー観は、どのように培われたのでしょう?
人生を変えたという意味では、ちょうどマーズ・ウォルタの音楽を知った頃に通い詰めてた、レコード屋の店長さんとの出会いが一番デカかったかもしれない。毎日のように入り浸っては、新入荷のなかから「これ聡泰くん好きだと思うんだよね」って店内でかけてくれて。「カッコいいっすね。買いますわ」って。その方のおかげで、ありとあらゆる方面に面白い音楽が転がってることを知ることができたんです。
ー庄村さん、古い音楽もお好きですもんね。雑誌のアルバム5枚挙げる企画で、イタリアのプログレとかさらっと選んでてビックリしました。
いやいや。でも、縛りを気にせずに音楽を聴く楽しさを知ることができたのは、とても幸せな経験だったと思います。「○○と△△が実はつながってて……」みたいな、ファミリーツリー的な掘り下げ方もそこで学ばせてもらいましたし。
ーそれを覚えちゃうと、もうリスナーとしては止まらなくなりますよね。
そうですね。
ーそうやっていろんな音楽を聴いてきた庄村さんから見て、セールスやライブの集客とは別のところで、[ALEXANDROS]の音楽はこれまで正しく評価されてきたと思いますか?
うーん、どうなんでしょう。評価に正しいも正しくないもないですからね。それは難しい質問だと思います。
ーじゃあ、「もっと評価してほしいな」って思うときはあります?
それはもちろん。どんな曲に対しても心血を注いでますし、ずっとそう思っています。
ー例えば、どの辺りを評価してもらいたいですか?
いま活動しているバンドさんのなかでも、「枠への囚われてなさ」には自信がありますね。メタルな曲もあるし、ジャジーな感じの曲もあるし、エレクトロニカ系の曲だって、最近はかなり精度の高いものを作れているので。そういうふうに、いろんなリスナーに刺さりそうな曲を作ってきたことは自負していますけど。
ーそこは間違いないですよね。近年の[ALEXANDROS]は特にそうだと思います。ニューアルバムでも、その作風はますます強調されているようですよね。
ただ、それぞれのジャンルが真に好きな人たちには、まだリーチしてないのかなと思うこともあって。「自分の好きな感じだけだったら、もっと良かったのに」と思ってる方もいらっしゃるのかもしれないし。
ー「エレクトロだけやってればいいのに」みたいな感じですか?
そうです。僕らからすれば、そういう方にも絶対に好きになってもらえる曲はあると言いたい。でも、これもまた枠に囚われていないバンドの宿命なので。むしろ、これだけやんちゃにジャンルレス/シームレスにやらせていただいて、向こう見ずなバンドのまま今の位置にいるっていうのも、とても痛快なことなのかもしれないですし。
ー僕もそう思いますよ。ちなみに、いまおっしゃったようなところが、[ALEXANDROS]にとって最大の武器と言えると思いますかか?
諸刃の剣じゃないですか。武器というよりは個性という感じですね。
ーそういうエクレクティックな音楽性にバンドが向かっていくようになったのは、何がきっかけなどあったのでしょうか?
きっかけというよりは、洋平が曲のアイデアを出してきて、それをほかのメンバーがキャッチアップして、ゴチャ混ぜにした結果じゃないですか。まず、メロディの専門家である洋平が「こんな感じの曲をやりたい」とイメージを用意して。それをギター選任の白井、ベース選任の磯部、ドラム選任の僕っていうフィルターの中に通していく。そうすることで、それぞれが若干不揃いに仕上げたものを、一つの形に混ぜ合わせて完成させると。そのプロセスで重要なのが、みんな本気なんですよ。「僕の辞書には載ってないアイデアだったけど、自分なりに解釈してやってみたよ」と全力で取り組むんです。その不器用な心血の注ぎっぷりが、独特の歪さを生み出しているのかなって思います。