ニッチな趣味が、人生の大きなテーマ
ー今の喩えは大いに納得しました。そういう感覚じゃないと、[ALEXANDROS]の情報量は支えきれないでしょうから。今度の新作でも、「アルペジオ」や「SNOW SOUND」の2曲でだけでも求められてるプレイがかなり違いますよね。まず「アルペジオ」のハードな演奏は、ニルヴァーナにおけるデイヴ・グロールを思い浮かべました。
あの曲については、僕らが古くからお得意のビートパターンなんですよ。でも確かに、哀愁チックなところがあるので、グランジっぽさを感じていただけたのはそれもそれで有り難いですけどね。ただ、ニルヴァーナよりは枯れているので、パール・ジャムのほうが近い気がします。勝手に歌謡グランジと呼んでるんですけど(笑)。
ー方や「SNOW SOUND」に関しては、シンセサウンドに合わせたシュアな演奏が印象的でした。
あの曲は、僕が大好きなAORやニューロマンティックの甘い音や匂いをイメージしながらプレイしましたね。
ーAORまでお好きなんですね。
ボズ(・スキャッグス)は何回もライブを観たことあるし、レアなやつも好きですね。バーン&バーンズの『An Eye for an Eye』とか。あとはやっぱり、タキシードの来日をすごく楽しみにしています。
ー「明日、また」はどうでしょう?
「Starrrrrrr」以降に培ってきたビートと、中盤のダウンビートにEDM的な快楽性を盛り込みつつ、その裏で叩いてるドラムにはニュースクール・ハードコアにおけるダウンビートのニュアンスを入れています。自分の中で、スローなEDMとニュースクール・ハードコアのモッシュパートは近い感じがするんですよ。
ーお話を伺っていると、庄村さんの演奏にはリスナー気質に基づくボキャブラリーが存分に反映されてるみたいですね。そうですね。(洋平から)曲のアイデアが届いたときに、どんなプレイをしようかフラットに考えながら自分の引き出しを覗いてみると、「ここはこういう感じがいい」って返答が見つかるんですよ。メンバー間のディスカッションやセッションでも、イメージを伝えるために引っ張ってきますし。そうやって曲ごとに演奏の表情を変えていくのは、僕も得意なほうなんだと思います。ただ、あまりにも一貫性を欠いてしまってもいけないし。そこも諸刃の剣なのかなって。
[ALEXANDROS]庄村聡泰(Photo by OGATA for Rolling Stone Japan) ー川上さんからドラムへの注文が入ったりもするんですか?
かなりありますよ、フィルインとかは特にそうですね。彼の中で明確な映像が描かれていることもあったりするし。「アルペジオ」に関しても、僕としては細かいニュアンスを抜いて大味な感じでいくのかと想像してたら、軽快な裏拍で穴を埋めるようなビートに変わっていきましたね。「KABUTO」もそう。自分の中ではもっと大きなビートで行くつもりでしたけど、裏拍に入るスネアのノリで踊らせたいとなって、「OK、OK」って付け足したりとか。