[ALEXANDROS]のリズムを司る庄村聡泰「ドラムを演奏するというよりは、運転するというイメージ」


「演奏する」というより「運転する」イメージ

ー「独特の歪さ」って、[ALEXANDROS]の魅力を言い表すのにぴったりの表現ですね。ジャンルレスという話でいうと、先日の「VIP PARTY 2018」では、新旧のレパートリーから満遍なく演奏してたじゃないですか。あのライブを拝見しながら思ったのは、あれだけいろんなタイプの楽曲を一人のドラマーが叩きこなすのは大変そうだなって。実際にやってみてどうでしたか?

大変でしたけど、うまくいったかなと。また一つ、ちゃんと更新できた手応えを感じました。

ー初期の曲と最近の曲を同列でプレイするにあたって、どのようなことを意識しましたか?

今回のマリンスタジアムでは、どちらも同列に大きく響かせようと意識しながら演奏しました。性急なスピード感やマインドを持つ過去曲も、最近の曲と同じように、大きなアンサンブルを想像しながら寸分の狂いもなく叩くような感じで。だから自分の中では、ドタバタなアレンジだった過去曲も、雄弁に響かせるようにスパイスを効かせたつもりではあります。


Photo by AZUSA TAKADA

ー実際、昔の曲もスケール感が見劣りしなかったですもんね。「大きなアンサンブル」というのは、現在の[ALEXANDROS]や庄村さんにとって、大きなテーマの一つだと言えそうですか?

アメリカにいるとき、よくそういう話をしましたよ。現地のネットラジオをかけっぱなしにしながら、「このリズム感が~」「この踊れる感じは~」みたいなこと言ってました。あと、現地の方と話をしていたときに、「アメリカの音楽はリズムから曲が生まれる傾向にあるけど、日本はコード進行が先だよね」と話してて。だから、向こうの音楽はビートが骨太でぶれないんでしょうね。大勢の人がその上で踊っても、ビクともしない感じがするというか。そういう音作りについては、みんなでずっと考えていました。

ーでは、そういう骨太なビート感を出すために、「VIP PARTY 2018」ではどういった工夫をされたのでしょう?

まずはマインドの転換ですね。今までのライブではアドリブでいれてたフィルインも、(過去曲の)細かい部分を大きく聴かせるために、そこだけ引き気味で演奏してみたりとか。

ーバンド全体のグルーヴを大きく見せるために、敢えて一歩引いてみたと。変に手数が多くなりすぎると、スケール感が出しづらくなりますもんね。

そうなんですよ。やっぱり近年の曲はそこを意識してますね。ニューアルバムの収録曲に関しても、そういうマインドでリズムパターンを組んでから、さらにレコーディングで手を加えたので。例えば、アメリカで「LAST MINUTE」を録音するときも、現場でさらにハットの刻みを減らしたんです。そっちのほうが踊れるし隙間も生まれるから。そうすると今度はギターの刻みが前に出るよね、みたいな。その辺りは、プロデューサーとメンバーも交えてしっかり話し合いました。

ーニューヨークで制作したことによって、ほかにはどんな学びがありましたか?

ドラムっていうのは、外国人のビート感に対するコンプレックスをつい抱きがちな楽器なんですよ。それこそ、アフリカンアメリカン特有のグルーヴというものを出そうとしても、僕ら日本人が表現するには限界があって。

ーブラック・ミュージック系は特にそうですよね。そこはフィジカルやリズム感、音楽環境の違いなどもありますし、難しい話ですけど。

だから、僕も以前はコンプレックスがあったんですけど、そこからいい意味で脱けだすきっかけが向こうであったんです。というのも、現地でセッションする機会があったんですが、向こうのミュージシャンが僕のドラムを褒めてくれて。「Mosquito Bite」を録ったときも、「ドラムに当てるポイントがほぼ均一でやりやすい」とスタジオの方が言ってくれたんです。「俺が過去にやったドラマーなんか気分屋で、音もグチャグチャだしクリックにも乗れなかった。サトヤスはそこが安定しているのがいいよね」って。

ーそれはうれしいですね!

ステレオタイプな話で恐縮ですけど、「日本人=勤勉・誠実・真面目」みたいなものが、僕のドラムにも落とし込まれていたんでしょうね。そういう日本人らしいプレイが、まさかアメリカで評価されるとは思わなかったので。

ー今のお話はメチャクチャ興味深かったです。というのも、「VIP PARTY 2018」のライブ中も、僕はとにかく庄村さんのドラムに釘付けで。それこそ、サンダーキャットのバンドで叩いてたジャスティン・タイソンのように、もっと馬力のあるドラマーは海外にいるかもしれない。でも、庄村さんのプレイは[ALEXANDROS]のアンサンブルの中で、とにかく有機的に機能していて。生き物のような一体感というか、ある種のケミストリーを感じたんです。

ありがとうございます。

ーだからこそ、庄村さんのスタイルがどうやって培われたのかが気になって。その点、昔から今にかけての変化もあったりします?

そこに関しては、いつも緩やかに変化しっぱなしですね。過去のスタイルに戻ろうと思っても100%戻れないですし。ただ、当時の演奏については有り難いことに、時期ごとにレコーディングして残せてあるので。

ーですよね。

スタイルの話にもつながりますけど、僕って感情的に演奏するタイプではないんですよ。昔は表に出してたけど、自分のパーソナリティを省みたときに、感情を抑えたほうが向いてそうな気がしたんです。TOTALFATのBuntaは感情の入れ込み具合がすごくて、そういう人を見ると憧れたりもするんですけど。そうやってほかのドラマーさんと自分を対比させることで、今のスタイルが形成されたんだと思います。あと、ライブ中の意識としては、ドラムを「演奏する」というより「運転する」ようなイメージで。特にマリンスタジアムくらいの規模感だと感じるんですけど、会場全体が巨大な一台の乗り物で。僕がドラムっていうコックピットの中から、その乗り物を運転している感じですね。

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