マンソン・ファミリー描く新作映画、惨劇起こした殺人鬼をめぐる女性たちの「日常」

マンソン・ファミリーを描いた映画『Charlie Says(原題)』は、脚本家グィネヴィア・ターナーがコミューンで育った幼少期を下敷きにしたという点で、他とは一線を画している。(©︎ IFC Films)



『Charlie Says』では、登場人物の中でもとりわけヴァン・ホーテンの物語に焦点を当てている。高校時代のプロムクイーンはマンソン・ファミリーに加わり、ラビアンカ事件ではローズマリー・ラビアンカを押さえつけて16回も刺した。殺人罪で刑務所行きとなったマンソンや他の2人の女性と同様、ヴァン・ホーテンも当初は死刑を宣告されていたが、1972年にカリフォルニア州最高裁判所が死刑を違憲としたため、終身刑に切り替えられた。

ファミリーの女性たちに焦点を当てて映画を作るにあたり、ヴァン・ホーテンを主人公に選んだのは当然の結果だった。彼女はマンソン同様、他の女性たちにも熱を上げていたからだ。「パトリシア・クレンウィンケルはマンソンに狂おしいほど首ったけだったのに対し、レスリーは恋愛感情を抱いていませんでした。彼女は精神世界の探究者だったのです」とハロン監督。「カルト内で彼女がもっとも強い絆を感じていたのはパット(パトリシア)でした。2人の関係はとても強く、それが――マンソンの存在同様――2人をカルトにつなぎとめていたのです」

ターナーいわく、語り尽くされた物語に新たな視点を見出すのに、最初は苦労したという。そのとき出会ったのがカーリーン・フェイス氏の著書『The Long Prison Journey of Leslie Van Houten: Life Beyond the Cult(原題)』だ。著者のフェイス氏は『Charlie Says』の中にも登場する。

大学教授のフェイス氏は、服役中のマンソン・ファミリーの女性たちに刑務所内で講義を行っていたが、次第にヴァン・ホーテンと親しくなり、2017年に他界するまで彼女の釈放を訴えた。生前のフェイス氏と言葉を交わしてヴァン・ホーテンとの友情を理解したターナーは、「ヴァン・ホーテンなら、もっとも深みのある、真に迫った人物が描ける」と感じた。フェイス氏はターナーに対して、映画のせいで仮釈放の可能性がふいになることは絶対にしないでくれ、と強く念を押した。

同じタイミングに、ヴァン・ホーテンという影のある人物像を描いたメジャー映画が世に出ることで、釈放への機運が高まるかもしれないが、2014年に『Charlie Says』に取り掛かった当時、そのような意図はターナー自身にとってまったくなかったと言う。実際のところ彼女とフェイス氏は、被害者の遺族に1969年8月の惨劇(映画監督ロマン・ポランスキーの妻で臨月を迎えていた女優のシャロン・テートの殺害)を思い出させてまで、映画を作る価値があるのかどうか意見が衝突していた。「現実の人々を描いていることは、自分でもはっきり分かっています。現実にいらっしゃる被害者と遺族の方々。その重みを、我々は自分のこととして感じるべきだと思うのです」

ターナーは故シャロン・テートの妹、デブラ・テート氏にも接触しようか迷っていた。彼女は被害者の権利を主張している人物だ。だが、ひとたび映画が完成したところで考えを変えた。「脚本を書いている間、ずっと彼女のことを考えていました。もし私が彼女の立場だったら、当然こう言うでしょう。『あなたたち、こんなお粗末な映画で私をバカにするつもり?』。だから彼女と話をするべきだと思ったんです。映画を見てもらって、『私たちの見解はこうです』と言うべきだと」とターナー氏は説明した。

結局ターナー氏は自分の視点、自分の個人的な経験を下敷きにして、丁寧かつ奥行きのある脚本を書くことが、3人の若い女性が殺人を犯すに至った動機を理解する助けになるだろうと思った。「この映画でできることのひとつは、彼女たちの物語に新たな視点を与えることだと思います」と彼女は言う。「歴史的に見ても、彼女たちにのためにもなると思います。世間が彼女たちを違った角度から見るきっかけになってほしいですね」

Translated by Akiko Kato

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE