[ALEXANDROS]の参謀役、磯部寛之「根源は夢であり、気持ちが大事」

[ALEXANDROS]磯部寛之(Photo by OGATA for Rolling Stone Japan)



早い段階からイメージは描けていた

ーそういう意味で、ご自身のベース・スタイルに影響を与えた人は誰なんですか。

これは本当に難しい質問ですね。よく聞かれるんですけど、毎回「難しい」って言っちゃうんです。本当に好きなベーシストは「知らない」んですよね。いないと言うと角が立つので、本当に無知なだけなんですけど。ただ、何回も言ってるんですけどザ・ストーン・ローゼズのマニのベースは好きです。特にプライマル・スクリーム時代のマニは本当に好きですね。シンプルなんだけどカッコいいの最たる例じゃないですか。ひとつこういう存在になれたらいいなと思っています。

ーマニがいて、スタイルが変化する中で最近参考にしている人物がいるかというと別にいない?

それこそベーシストというより、ヒップホップとかいろんな曲を聴いたときのリズムの感じ、すごく気持ちいいなって自分が反応したときは素直に反応するようにしています。お酒が好きだからレコードバーに行くんですけど、そのバーではしょっちゅう70年代とか80年代の往年のロックを流してるんです。聴いたことあるな、絶対に有名なんだろうけど曲名は知らない。でも、そういう中で音像感だったりリズムの感じは吸収していると思うんですよね。新作を作っているときも、やっぱりイメージとしてそれが出てくるんですよ。こういう感じにするためには、俺はどう弾いたらいいんだろうって。

ー昔のロックっぽいベース?

もう全部がごっちゃになってます。昔のロックも最近のヒップホップも、俺の中ではカッコいいものっていう一括りに入っていて。何かをやろうとなったときに、どこから引っ張り出してきたのか自分でもわからないんですけど、イメージが湧くんですよね。それをどうやったら実現できるんだろうって感じです。

ーアウトプットも天然的というか。

そうですね。だから気持ちいいものを。言葉にするとわかりづらい説明になっちゃうことが多いんですよね。感覚でやっているので。

ーでも、感覚的っていうのは大事ですよね。全員がきっちりやっていたら、たぶん窮屈なバンドになっていたと思うんです。リズムでやっているメンバーもいる中で、ベースラインを感覚的に支えているのは実は大事なことなんじゃないかなって。

そうだといいですね。バランスはすごくいいし。確かに聡泰はいろんなものを知っていて、「こうしたらこうなる」とシミュレートしながらやるわけなので。だから尊敬できる部分もあるのかもしれない。俺に持っていないものを持っている人って。

ーそういう意味で白井さんに対してはどう思っていますか。

マーくんは、リフメイカーとしてすごく優秀なギタリストだと思っていて。洋平から「こんな感じでいいフレーズない?」って振られたときも、「例えばこんなの」って弾いて「それいいじゃん!」ってなることがけっこうあるので。そのへんのセンスが俺はすごく好きですね。知識とか引き出しという意味でも、唯一、コードをちゃんとわかっている人間なんですよね。洋平も感覚でやるタイプなので。俺も「いいのできたわ」って弾いてたら、「ヒロ、ごめん。ここだけちょっとスケールアウトしてて」って教えてくれるのがマーくん。彼のいいところは、教えてくれることもそうなんですけど、「厳密に言うとこうなんだよ」って事実を教えてくれるだけで、「それでもヒロがいいんだったらいいんじゃない」って必ず言うんです。

ー間違っててもいいよって。

そう。一応、教えてくれるっていう優しさなんですよね。そこに俺はすごく感謝しています。俺から聞きにいくこともあります。「こんなの作ったんだけど、これってアウトしてる?」って。

ー今回のレコーディングで悩んだ部分はありましたか?

時間がないことくらいですかね。でも、時間なんて常にないですよ。あればあるだけアイデアが出てくるので、そんなものはバンドをやっている以上は毎回そうなんでしょうけど。言い訳するつもりじゃないですよ。でも、それ以外はないってことですね。

ーじゃあ、めちゃめちゃ楽しい環境で、めちゃめちゃ楽しく作れたって感じですね。

そうですね。

ーそういう解放感が曲にも出ている感じがしますよね。

洋平が最初に「今度はこんな感じで行きたいんだよね」って言ったとき、メンバーがわりと早い段階からイメージを描けていたからやり取りもスムーズだったし。もちろん、悩む曲は悩んだけど。時間の話で言えば、すごく根詰めた作業もあったので。周りに迷惑をかけたこともあったけど、やっぱり妥協しないでできたものに関してはすごく愛情も生まれるし。

ー悩んだ曲とかどれですか?

一番覚えているのは「KABUTO」ですね。まず、リズムパターンからなんですよ。リフはあって。どういうパターンに乗せるのが一番カッコいいのか考えたとき、全部がカッコいいんです。そういうのが一番困るんですよね。あっちがいいかな、やっぱりこっち!って、作っても振り出しに戻って……みたいな。総じて見れば上に上がるための作業なんですけど、本当に悩ましいですね。

ーすごく微妙なところなんですね。確かにどの曲もリズムパターンが凝ってますもんね。

シンプルなように見えて、どういうふうにシンプルにしていくか?という話があるので。

ーベースの音色でこだわっている部分はありますか?

ヴィンテージを今使っているんですけど、邪魔にならない音感。気持ちいい音域がちゃんと抜けてくるっていう。ベーシストとして、いわば基本中の基本のところに一番こだわっていますね。音色はそんなにいじらないんですよね。よっぽど楽曲的にとか、歪みをかましたりしない限りは、理想の音一発あれば大丈夫という感覚が自分の中にあって。

ーいろんなロック・バンドが抱えている問題で、ヒップホップのほうがバカみたいに大きい低音ってあるじゃないですか。デカい低音を作るってことに、自分の中でテーマにしていることはありますか? 

ベーシストとしては、そこらへんはあまり気にしていなくて。ベースで出しうる、気持ちのいいロー感が出ればいいのかなと思っているんですけど。楽曲的に、今後そういうウルトラローが必要な場合は俺がキーボードを弾いたり、シーケンスを叩いてもいいなと思っています。弾く楽器がベースなだけが俺の仕事じゃなくてもいいかもしれないし。


Photo by Azusa Takada

ー「川上さんの曲は世界一だ」という話がありましたが、世界一を目指し続けているというのは[ALEXANDROS]のストーリーにおいて一貫している部分だと思うんですけど、そもそも世界一のバンドって、2018年においてどういうものを指すと思いますか?

それはすごくいい質問ですね。もともと音楽って勝ち負けがある世界じゃないので、何をもって世界一かは難しい問題だと思うんですけど、俺の中でこれを成し遂げたら世界一と言っていいかなと思っている指標があって。それはグラストンベリー・フェスティバルのヘッドライナー。それはずっと変わらないです。2018年においてグラストンベリー・フェスティバルの価値が世界的に見てどうなのかはわからないですけど。でも、そこでヘッドライナーを務めることが、自分をそう評せることにつながっているので。

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE