『アベンジャーズ/エンドゲーム』とスーパーヒーロー映画に見る<継承>の精神

しかしながら、 大ヒット中の本作は、スーパーヒーロー映画に一つの終わりをもたらすであろう。また11年という長い時間は、あらゆる文化から生まれたサブジャンル作品、そして映画製作の方法に、それぞれ新たな息を吹き込むのに十分な期間であった。マーベル・スタジオの社長であるケヴィン・ファイギ氏による実験的な取り組みは、業界全体を揺るがしたと言える。MCUの様々な作品がエンディング後のシーンを必要とした。観客はみな、ストーリーを多元的に理解したいのだ。オリジナルの『X-MEN』がスーパーヒーロー映画をシリアスな内容にできることを見せてくれたし、クリストファー・ノーランによる『バットマン』三部作は、自らの物語に忠実でいながら、作品作りができることを証明した。そしてMCUは、すべてになることができる、と提言している。アクション映画、スペース・オペラ、陰謀スリラー、バディ・コメディ、犯罪もの、戦争もの、 職場のコメディ、神話が詰め込まれたファンタジー、シェイクスピアの悲劇、など。それらは一つの知的財産から生まれたものであり、そこから、1000ものキャラクターの冒険活劇へと花開いて行ったのだ。

『アベンジャーズ/エンドゲーム』は、それらすべての物語と、これまで語られてきた歴史を、一つの大きな枠組みに収めようとしている。最初の30分は、ただのフェイントでしかないと思ってしまう。登場人物は、指の動き一つで宇宙の半分を消し去ったサノスを見つけるが、彼は、違う惑星で怠け者になっていた。その上、自分が破壊したものを元に戻す方法が、何もないことに気づく。そのうち1人のメンバーが、サノスを倒す。5年後、アントマンが現れ、パッと聞きだとめちゃくちゃに聞こえる、量子世界とタイムトラベルについて語り始める。「まだ、チャンスがあるとしたら?」と尋ねるのだ。はじめは懐疑的であったが、科学的な検証とともに、「塵になっていないメンバーと共に時を遡ろう」というアイデアになる。そして物語は、MCUがまだ描いていなかった過去をさかのぼり、サブプロットをすべて回収していく、という流れになるのだ。

『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』で受けたショックを思い出して欲しい。この映画の黒い面を持った兄弟である同作は、あなたが好きだったキャラクター、そして名の通った有名なキャラクターが、あなたの目の前で消えてしまったことを覚えているのではないだろうか? そしてエンドロールを迎えた時、あなたは皮肉にも、「これは詐欺か?」と思ったかもしれない。

しかし『アベンジャーズ/エンドゲーム』は違う。運命を変えることが予想されているが、今回は駆け引きが大きい。例えば所属しているタレントの契約が、ようやく満期を迎えたような駆け引きだ。その犠牲に晒された者は永久的、あるいは半永久的と感じられるような消え方をする。馴染みのある顔が戻ってくる分だけ、馴染みのある顔が、出口に向かう。誰が復讐を果たすのか、“フェイズ4”では誰がマーベルを牽引して行くのか、松明は彼らの手に渡ったのだ。監督のルッソ兄弟は、物事に観客の興味を寄せ集めながらも、それらを上手く動かす能力に長けている。彼らは映画製作者として、タイムトラベルの連続や、人々の目に移る宇宙がすべてを物語っている時、映像をどのように演出すれば、そこに機知を生み出すかを心得ているのだ。

Translated by Leyna Shibuya

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