スーパーヒーローの謎を解明、MCUヒストリー10大事件

ソー役のクリス・ヘムズワース(©Marvel Studios)

ここまで来るのに11年。『アベンジャーズ/エンドゲーム』にたどり着くまでに21作品。一朝一夕でどうにかなるものではない。だがマーベル・スタジオはまぎれもなく、今日のポップカルチャーの世界を再構築した。今回は『アベンジャーズ/エンドゲーム』劇場公開に合わせ、マーベル・シネマティック・ユニバースの10大事件をプレイバック。

マーベル・スタジオ社長のケヴィン・ファイギ社長、『アイアンマン』のジョン・ファヴロー監督、『キャプテン・アメリカ/シビル・ウォー』『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』『アベンジャーズ/エンドゲーム』を手がけたアンソニー&ジョセフ・ルッソ監督などにも協力いただき、これら名場面の誕生秘話を語ってもらった。

その1:ニック・フューリー登場(『アイアンマン』2008年)


『アイアンマン』ニック・フューリー役のサミュエル・L・ジャクソン (©Marvel Studios)

むかしはエンドロールが始まったところで映画館を出ても、まったく問題なかった。ところが『アイアンマン』で、21世紀のポップカルチャーの方向性を大きく変える32秒の“オマケ映像”が登場した。サミュエル・L・ジャクソンが諜報員ニック・フューリーとして姿を表し、「アベンジャー計画」と、そして何よりも、夢にも思わなかった巨大クロスオーバー映画構想が公開されたのだ。だが当時、ジョン・ファヴロー監督はそこまで深く考えていたわけではなかった。「いいファンサービスだな、と思ったんだ」と監督。「クレジット後のちょっとしたお遊びさ。映画の最後に、ちょっとしたクエスチョンマークを残してやろうとね」


その2:ハルク、ロキを粉砕(『アベンジャーズ』2012年)


『アベンジャーズ』ロキ役のトム・ヒドルストン(©Marvel Enterprises/Kobal/REX/Shu)

「ハルクは巨大な自我の塊だよ」と、『アベンジャーズ』のジョス・ウェドン監督はローリングストーン誌に言った。緑色の怪物が思う存分怒りを発散させる矛先として、悪の権化ロキ(トム・ヒドルストン)退治ほどふさわしいものはあるまい。傲慢なセリフをさえぎって、ハルクは漫画のような猛スピードでロキをぶちのめし、5回連続でコンクリートの床にたたきつけ、最後にぼそり「たいしたことない神様だぜ」。ルーニー・トゥーンズ風のばかばかしい登場シーンは、その後の作品(『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』『マイティ・ソー・バトルロイヤル』)の直球ギャグにも垣間見れる。


その3:キャプテン・アメリカ、エレベーターから脱出(『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』2014年)


『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』で、キャプテン・アメリカことスティーブ・ロジャーズ(クリス・エヴァンス)(Film Frame ©2014 Marvel. All Rights Reserved)

誰もキャプテン・アメリカを窮地に立たせることなどできない。クリス・エヴァンス演じるキャプテンは手に汗握る5分間で、敵と思しき10人の男どもをエレベーターの中で叩きのめし(1度だけ壁に貼り付けられたが)、窓を破ってS.H.I.E.L.D.の本部を脱出。30階相当の高さを落下して、オートバイにまたがり、盾と素手で戦闘機を墜落させる。以上。正真正銘のドラマティックな見せ場だ。「天地がひっくり返るようなシーンだった」と、兄のジョーと監督を手がけたアンソニー・ロッソは言う。2人は70年代の政治スリラー風の要素を盛り込んだ、より現実味のあるMCU作品を目指した。「任務に忠実な兵士であり、生粋の正義漢キャプテン・アメリカはこの時初めて、忠誠を誓った相手から裏切られたことに気づくんだ」

2人はこのアクションシーンをスタントチームと一緒に練り上げ、脚本家のクリストファー・マルカスとスティーブン・マクフィーリーに脚本を戻し、アクションの要所要所にセリフを加えてもらった。こうして生まれたのが、キャプテン・アメリカのもっとも有名なセリフ。エレベーターの中で、自分を取り囲む敵意むきだしの乗員に、キャプテン・アメリカが警告を放つ。「始める前に一言。降りたい奴はいるかい?」


その4:ガーディアンズ集結(『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』2014年)


『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』左から:ロケット(声の出演はブラッドリー・クーパー)、グルート(声の出演はヴィン・ディーゼル)、スター・ロードことピーター・クイル(クリス・プラット)、ドラックス(デイヴ・バウティスタ)、ガモーラ(ゾーイ・サルダナ)(©Marvel 2014)

「俺たちを見てみろ。負け犬ばかりじゃないか」 銀河のならず者たちの寄せ集め反乱軍を危険な英雄的行動に駆り立てようと、クリス・プラット演じるスター・ロードが言うセリフだ。彼は言う、「一旗揚げる」チャンスだと。絵に描いたような決めセリフ、だが同時に感動的で愉快なシーンだ。目立った視覚効果もない――登場人物のうち約2名、血気盛んな抜け目ないロケット(ブラッドリー・クーパー)と、歩く植物グルート(ヴィン・ディーゼル)が完全にデジタルの産物であることを除けば。

「あのシーンになる頃には、あのキャラもすっかり板についていたよ」と、マーベル・スタジオ全作品の製作指揮を執るケヴィン・ファイギ社長は言う。「だからCGだとは考えもしないだろうね」 『ガーディアンズ』はマーベルの中でも思い切った作品だ。「みんなから突飛すぎると言われたよ」と、脚本兼監督を担当したジェームズ・ガン氏はローリングストーン誌に語った。「キャラクターはそれほど有名じゃないし、きっとマーベル初の失敗作になるだろうと言われた」(結局そうならなかった)。当初このシーンを構想していた時、マーベルはガン監督にもっと奇抜にするよう指示を出した。「ジェームズにメモを渡したんだ。『いいか、こういうシーンをもっと入れてくれ』」とファイギ社長。「『登場人物寄りの、純粋な笑いがもっと欲しいんだ。つまり、ジェームズ・ガンらしさをもっと出してほしいんだ』ってね」


その5:空港での戦い(『キャプテン・アメリカ/シビル・ウォー』2016年)


『キャプテン・アメリカ/シビル・ウォー』左から順に:ファルコンことサム・ウィルソン(アンソニー・マッキー)、アントマンことスコット・ラング(ポール・ラッド)、ホークアイことクリント・バートン(ジェレミー・レナー)、キャプテン・アメリカことスティーブ・ロジャーズ(クリス・エヴァンス)、スカーレット・ウィッチことワンダ・マキシモフ(エリザベス・オルセン)、ウィンター・ソルジャーことバッキー・バーンズ(セバスチャン・スタン) (©Marvel 2016)

コミック本の用語「見開きページ」とは、コマ割りなしで、1枚の絵がページを独占する――スケール命のアクションシーンではよく見られる手法だ。ロッソ兄弟はこの戦い「12人ものスーパーヒーローの総当たり戦」を見開きページだと考えた。アントマンのパワーが逆転し、巨大化してスクリーンに収まり切れなくなった時にはより効果を発揮した。あまりにも登場人物が多いので、ロッソ兄弟は冗談めいて、参考にするなら1963年のヒーロー大集合映画『おかしなおかしなおかしな世界』ぐらいしかないね、と言っていた。もっとも、人数でいうなら『インフィニティ・ウォー』とその続編のほうがはるかに上だが。「『シビル・ウォー』に取り掛かり始めてすぐ、あの空港シーンがコンセプトに加わった」とアンソニー・ロッソ。「いままで手がけたなかで一番複雑なアクションシーンだったよ」。登場人物の動きを把握することの他に、もうひとつ厄介だったのがCGキャラクターの多さだ。観客は知る由もないが、スパイダーマン、巨大化したアントマン、ブラックパンサーはすべてCG。アイアンマン、ウォーマシン、ビジョンもしかり。「いままでで1、2を争う難題だったよ」とアンソニー監督。「CGキャラをシーンと融合させなきゃいけなかったからね」

Translated by Akiko Kato

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