破産寸前だった米大手楽器店の華麗なる復活劇

改装されたハリウッドの旗艦店の店内の一部(Photo by Guitar Center/Ryan Hunter)


ギターセンターが店舗にこだわる理由

ハリウッドの旗艦店のリニューアル——遠くからも目を惹く、数人のストリートアーティストによるジミ・ヘンドリックスの大きな壁画を掲げた堂々たる店構えだ——は計画の一環に過ぎない。ギターセンターは、その他の地域の店舗をリニューアルすると同時に、2018年末までに7つの新店舗をオープンする予定だ。それによってアメリカでの店舗数は約290に達する。高額なマージンや手頃なインターネット販売の影響で多くの小売業者が実店舗から離れるなか、ギターセンターは店舗数の増加にこだわり続ける。

なぜなら、そこにはある程度の必然性があるからだ。衣類や玩具のような商品が簡単にオンラインで販売できるのに対し、オンラインで楽器を売ることは簡単ではない。新しいキーボードの購入を検討している人は、実物を見たがる。その人がプロのミュージシャンであれば、なおさらだ。自らの手で鍵盤に触れ、その重みを感じ、メンテナンスや好みのリペアについて生身の人間と話したいと思うだろう。ギターセンターは今、「オムニチャンネル」というアプローチで勝負に挑んでいる。それは、数年前から店舗に導入しはじめた音楽教室などの実験的な試みを通してオンラインと実店舗の両方で消費者の興味を惹こうとしている。

一カ所ですべてが揃うという戦略は「Amazonが既に立証しています」とジャピンガは言った。複数領域での競争に参入することで、Amazonなどの巨大なシングルプレイヤーによって打ち負かされるリスクが減らせるのだ。さらにジャピンガは言った「誰もがギターセンターのストアにふらりと足を踏み入れだけで、誰かが弾くギターの演奏にドラマーやキーボーディストが加勢したり、さらには誰かが歌い出したりして店内でフラッシュモブのような体験ができることを理解してもらうのがとても重要です。とてもパワフルな体験です。誰だってショッピング中にそんな体験がしたいと思うでしょう。地域コミュニティに根付いた楽器店だからこそ、こうした心理がよくわかるのです」

それでも、典型的なロッカーという条件を満たさない人々に対して過去に同社が不親切な接客を行ってきたという非難もある。ギターセンターの店舗の多くは密集していて狭く、広々としたショッピングモールに慣れている一部の客層に対して無礼な印象を与えてきた。その一部の客層である女性は今、初心者ギタリスト市場の半分を占めている。ギターセンターはカスタマーサービスの改善に意欲的に取り組む姿勢を見せている。コールセンターのサポートスタッフを急増させ、ハリウッド店にならってよりフレンドリーなスタッフの育成にも励んでいる。「目標を達成したとはまだ言えませんが、これまでの私たちの状況からは大きな進歩です」。ジャピンガが言った。「これまでは、プロでもなければ楽器店には行きませんでした。今は、音楽という旅の最中にいるすべての人の役に立ちたいと思っています」

Translated by Shoko Natori

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