破産寸前だった米大手楽器店の華麗なる復活劇

楽器業界全体の売上は落ち込んでいる

米国における製造と小売業界を対象とするIBISWorld社の調査によると、ギターセンターは現在、楽器市場において34.8パーセントのシェアを占めている。それに対し、楽器業界はこの5年間において全般的に「調子はずれ」であるとされ、その収入は毎年3.7パーセントずつ落ち込んできた。「進むデジタル化によって人々がレジャーやスポーツに使う時間が減り、消費者が商品やサービスから離れた」とIBISWorld社の研究員が2018年に発表した最新の報告書に記した。「業界大手であるギターセンターを除く、ほとんどの楽器店が家族経営の独立型のローカル店舗や地方を拠点にしているため、楽器業界は全体的に極めて分断された業界である」

このように分裂化した状況をチャンスととらえることは可能だ。ギターセンターのCMOジーニー・ダダリオは、音楽に興味を持ってもらうためには、どんな方法も試したいと言う。その例が、「第二の人生」を楽しむシニア層を対象とした音楽教室、女性専用の音楽教室、需要の有無によって検討されるプロ向けのエンターテイメント・マーケティングのクラスなどだ。「相互作用的なチャンスを拡大することに力を入れ、私たちのサービスやサポートに頼ってもらえるようなシステムを目指しています」とダダリオは言った。

それでも、同社を悩ませているより厄介な問題が、ニュースで少なからず懐疑主義の対象となっている楽器との関連性にある。伝統的なロックンロールが音楽チャートから姿を消すなか、ヘンドリクス級に崇められるギタリストの時代も終わりを告げたことでエレキギター人気が消滅するだろうという憶測も飛んできた。しかし、現実は違う。実際、ギターメーカーはこの5年間で伸びている。ギターセンターの上空には暗雲が残っているが、だからこそ他の楽器を大々的にプロモーションし、ロック以外の音楽に興味を持っている人々のニーズにも応えようとしている(リニューアルオープンでのパークのライブはその好例だ)。

「私たちは様々な方法で変化を遂げてきましたが、まだ会社を前進させる最初の段階にいます」。ジャピンガが言った。キーワードは「最初の段階」だ。IBISWorld社のアナリスト、ダニエル・クックは「ギターセンターは、今後5年そこそこに返済しなければいけない負債を抱えているため、拡大計画は危険です」とローリングストーン誌に語った。それでも、近年の借り換えによって「新店舗をオープンするための余裕」ができ、実店舗と実体験に重点を置いた戦略とオンラインマーケティングが功を呈しているようだ。消費者トレンドが急速に変化し、音楽技術が絶えず進化を遂げるストリーミング主体の現代におけるギターセンターの次の挑戦は、常に改装を繰り返すのではなく、いかにして業界をリードできるかにある。

Translated by Shoko Natori

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