英インディ・レーベルのCEOが語る、アーティストからメジャー契約が敬遠される理由

Ditto MusicのCEO兼共同創設者、リー・パーソンズ氏(Photo by Ore Huiying/Getty Images for All That Matters)

チャンス・ザ・ラッパーに続けとばかりに、従来のメジャー契約を敬遠するアーティストが続々と登場。その理由をDitto Musicのリー・パーソンズCEOが語る。

昨年のグラミー授賞式で、チャンス・ザ・ラッパーは歴史を作った。CDやレコードのセールスが全くないにも関わらず、主要部門の一つを受賞したのだから。この快挙はシカゴ出身のラッパー以外にも衝撃を与えた。アルバム『Coloring Book』で、レコード会社が後ろ盾についたメジャー・アーティストの作品――カニエ・ウェストの『The Life of Pablo』やドレイクの『ヴューズ』など――をいくつも打ち負かしたチャンス・ザ・ラッパーは、「この賞をすべてのインディ・アーティストに捧げるよ!」と、ステージ上で叫んだ。

自力で手に入れたサクセスストーリーの波及効果で、多くの新人アーティストがインディの道を歩もうとしている。ある者は非メジャー系レーベルと契約し、ある者は斬新なリリース戦略を打ち出し、またある者は一匹狼として道を切り開かんとしている。音楽業界が長いリー・パーソンズ氏は、インディ・レーベル、Ditto MusicのCEO兼共同創設者。この会社は全世界に数十人のスタッフをかかえ、チャンス・ザ・ラッパーやエド・シーラン、ストームジー、サム・スミスらと組んで、SpotifyやiTunesといった数々のデジタル音楽ストアで楽曲をリリースしている。ローリングストーン誌のインタビューでパーソンズ氏は、インディ市場が盛り上がっている理由とこの先に待ち構える課題について語ってくれた。

ー従来のレコード契約という考え方は、ここ最近崩壊しつつあるようですね。Spotifyでは楽曲を直接アップロードできるサービスを提供していますし、ホテルがアーティストに代わってアルバムをリリースするような流れもあります。なぜこうしたことが起きているのでしょう?

問題は、たとえばアーティストがストリーミングの著作権料に関して不平を漏らしているという記事を見ると、常にレーベルが絡んでいるということだ。多くのアーティストは、ちゃんとストリーミングから収入を得ている。だがレーベルが絡んでくると、自分の手に渡るのは実際の稼ぎのほんの一部。Dittoの利用者の中には完全自営業のアーティストもいて、1年に100万ポンドも稼いでいる。ちゃんと売り上げが立っているから、レコード契約はいらないというわけだ。でも、レーベルとアルバム5枚の契約をしたアーティストを見ると、たいていの場合契約を交わしたのは5年以上も前、音楽業界がまだ落ち目だった頃だったりする。怒りをあらわにしているのはそういうアーティストだ。

レーベル側がアーティストに支払うのは、ロイヤリティの20パーセント程度。たとえばLil Uzi Vert。彼は1曲で800万ドルぐらい稼いでると思うんだけど、彼のようなアーティストでも実際に受け取るのは、前払い金やら必要経費やらを差し引いて、せいぜい200万ドルがいいところだ。ここ数年間、レコード契約したアーティストたちも報酬の少なさに気づき始めている。10年前にメジャー契約したアーティストで、大金を稼いでいるアーティストはそう多くない。契約内容がヒドイものだったせいでね。アーティストは、もっと多くの収入を得る手段として、インディ・レーベルやインディの手法に注目しているんだよ。

Translated by Akiko Kato

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