バイセクシャルとパンセクシャルの違いは何か?困惑するLGBTQコミュニティ

他の人々にとっては、バイセクシャルは種族の歴史ではなく、葛藤の末にようやく手にした個人のアイデンティティとなる。それなのに、今になってその呼び名は正しくないとか、時代遅れだとか、トランスジェンダーを嫌ってるとか言われるようになってしまった。それも、本来なら肩を抱き合うべき同胞たちから。

「僕はバイセクシャルという呼び名に誇りを持っている」と語るのは、ダニエル・セイント。彼は、人間関係やセックスライフのレッスンを提供する愛好会NSFWの創設者だ。「こういう風に考えられるようになるまで、30年かかったけどね。自分のセクシャリティには満足してるけど、パンセクシャルと言う言葉を使わないせいで、了見が狭いやつだと言われるのはたまったもんじゃない。包括的な新しい名称ができたからって、バイセクシャルを攻撃するべきじゃないよ。女性に惹かれないからといってゲイを責めたりしないのと同じように、バイセクシャルがトランスに惹かれなくても、バイセクシャルのせいじゃない」

バイセクシャルは異性愛者の男女にのみ惹かれるものだと考えるのは、セイントの他にも大勢いる。そして、多くのバイセクシャルの活動家たちが戦いを挑んでいるのは、まさに彼のような人々なのだ。

「もちろん、魅力的なトランスやノンコンフォーミングにも会ったことはあるよ。でも(彼らに対する)感情は、性的なものじゃなかったんだ」とセイントは続けた。「性的な感情よりも、彼ら自身、彼らの存在に対する敬意。セクシャリティに関わらず、相手に幸せになってほしいという思いなんだ」

果たして、トランスジェンダーやノンコンフォーミングに魅力を感じないのは、トランス嫌いになるのだろうか? もしそうだとすれば、LGBTQコミュニティは他の同胞を傷つけかねない名称に固執していることになるのでは?

「しばらくの間、バイセクシャルという名称に固執していた時があったの。パンセクシャルという言葉をもてはやす訳知り顔な人たちから、自分のアイデンティティを守るという大義名分でね」と言うのはジル・B。「最初は、バイセクシャルを守らなくちゃと思っていた。ストレートやゲイの人たちから圧力を受けたり、疎外されていた時みたいにね。船を導く船長のような。でも時間が経つにつれ、自分のセクシャリティの全容を正確に把握することのほうが大事だなと思うようになったの」

いずれにせよ、インタビューをした人々はみな口を揃えて、バイセクシャルやパンセクシャルの世界はすそ野が広く、複数の呼び名が共存する可能性がある、と言う。

「あらゆる人々を受け入れられる。僕たち全員がね。誰でも、自分が好きなアイデンティティを名乗る権利がある」とトルトレッラは言う。

多くの人々にとってバイセクシャルとは、パンセクシャルのような自由な性を包括する、大きなひとつの集合体。最近では、「バイ+(プラス)」という名称にして、広い意味でのバイセクシャルを強調すべきだという意見も出ている。

ジル・Bは、たとえバイセクシャルという名称が廃れても、クイアの世界には自由な性を受け入れる余地が残されていると信じている。「自由な性について対話が進めば、それが刺激になって、ストレートやゲイという言葉では十分表現できない存在が浮かび上がってくるでしょうね」

それでも、長い目でみたときに、あらゆるものに名称をつけることがコミュニティにいい影響を及ぼすかどうか、誰も確信できずにいる。ジル・Bの言葉を借りれば、「呼び名が増えているのは団結の証なのかしら? それとも分断の象徴? わからないわ」

Translated by Akiko Kato

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