LGBTQプライド企画:『クィア・アイ』のキャストが語った私的ベストソング

写真左から、ジョナサン、アントニ、タン、ボビー、カラモ(Photo by Rolling Stone)

Netflixの人気リアリティ番組『クィア・アイ』の「ファブ5」ことゲイ5人組、ボビー、カラモ、タン、アントニ、ジョナサンが、それぞれお気に入りの気分がアガる曲を紹介。

2000年代半ば、エミー賞を受賞したビフォーアフターTV番組『クィア・アイ♂♀ゲイ5のダサ男改造計画』は、ニューヨークに住むイケてない男たちの人生をバラ色に変えた。ファイナルシーズンが終了して10年以上が経った2018年、さらに面白くなって復活。リブート版『クィア・アイ』が、今年2月にNetflixでスタートした。

リブート版では舞台をジョージア州に移し、アメリカ中部出身の新メンバーが南部の人々や彼らの家族、そしてコミュニティを改造してゆく。新たなファブ5のメンバーは、インテリアデザインの達人ボビー・バーク、カルチャーの伝道師カラモ・ブラウン、ワードローブ担当のタン・フランス、食通アントニ・ポロウスキ、そしてビューティ・エキスパートのジョナサン・ヴァン・ネス。6月には第2シーズンがスタートし、おしゃれな5人組がワイルドな南部に再び参上! 今回は人々に知恵を伝授するだけでなく、自分たちにも学ぶ機会が訪れる。

「今回は、僕たちの立場がちょっとだけ逆転するんだ。それがすごく良かったと思う」と、ローリングストーン誌とのインタビューで語るボビー・バーク。「第1話は、番組初の女性の依頼人。しかも、僕らは彼女を改造するだけじゃなく、彼女も僕たちを改造するんだ。画期的だろ? それからトランスジェンダーの男性も登場する。このエピソードは僕らもすごく気に入っているんだ。僕らはLGBTQコミュニティに属しているけれど、各々のグループが抱えている問題をすべて知ってるわけじゃない。彼から学んだこと、彼が教えてくれたことを、今度はぼくらが世界に伝えていくことで、トランスジェンダーの仲間たちが少しでも楽に生きられるようになるといいな。まずは知ること、そこから受け入れてみようかという気になるんだ」

・ボビー・バークが選んだベストソング
デスティニーズ・チャイルド「ソー・グッド」



ボビー:僕が影響を受けた思い出の曲は、デスティニーズ・チャイルドの「ソー・グッド」。なにかとケチをつける奴っているだろ? どうせお前にできるわけがない、とか、大したことはできないくせに、とか言う奴。この歌の出だしはこう。「私は何にもできないと言っていた方々に一言/いまや私はミュージックスター 誰にも邪魔させないわ」。悪口はやがて自分に返ってくるのさ。だから僕は、そんな奴らの言葉を信じるな、って言いたいんだ。常に前向きに、前に進んでいく。せいいっぱい努力して奴らの鼻を明かしてやろうぜ、ってね。

・カラモ・ブラウンが選んだベストソング
「ワーク・ビッチ」ブリトニー・スピアーズ



カラモ:僕が選んだのは、我らがゲイ・アイコン、ブリトニー・スピアーズのワーク・ビ……ダメだ、その先は言えないよ!  この曲が好きな理由は、なんといってもブリトニー。彼女のことを嫌う人も大勢いるけど、僕はどっちかっていうと、「Leave Britney Alone」っていう動画を投稿した彼……クリス・クロッカーだっけ? ああいう立ち位置なんだ。彼は、思いやりを持とうよ、相手の状況が分からないんだからさ、って誠心誠意訴えてた。あの動画のすごいところはそこ。それでブリトニーが復活したんだからね! 彼女は、僕らが人生に望むことすべてを代弁している。努力すれば必ず手に入るってね。物質的なことだけじゃなく――もちろん物質的なことも言っているけど、自分がより幸せだった時期、自分を愛してくれる家族に囲まれていた時期のことを言ってるんだと思う。一生懸命努力して、自分を信じていれば、おのずと道は開ける。家にこもってウダウダ文句言ってるだけじゃどうにもならないんだよ。ブリトニーも努力した結果、いまベガスのステージで頑張ってるじゃない? 僕もあのショウを観に行ったけど、もう最高だった!

・タン・フランスが選んだベストソング
「フリーダム」ビヨンセ



タン:賛否両論あるかもしれないけど、僕が選んだのはビヨンセの「フリーダム」。ジムでランニグマシーンに乗る時、この曲を聴くと力が湧いてくるんだ。でも、この曲はもっと深い。人生にくじけそうな時、挫折した時に、もっと頑張らなくちゃ、公平な社会を目指して戦わなくちゃ、と立ち上がる。この曲はそんな気分にさせてくれるんだ。アルバムが出たのは2~3年前だけど、今でも毎週ジムで運動するときは欠かさず聴いている。僕はただ走るっていうのは苦手でね。内から湧き上がるもの、使命を背負ってるんだって気分にならないとダメなんだ。毎日5キロぐらい走ることで、もっと先に行きたい、いつかは壁を破りたいって気持ちになるんだよ。

・ジョナサン・ヴァン・ネスが選んだベストソング
「ドリーム・ビッグ」ジャズミン・サリヴァン



ジョナサン:ジャズミン・サリヴァン大好き! 一番の理由は、彼女がいまの世の中を音楽で表現しているから。ほら、「今の時代に宣戦布告よ!」って感じでね。でも、僕の中で今ヘビロテなのは、ファースト・アルバム『フィアレス』の「ドリーム・ビッグ」。ちょうどこの曲が出たころ、僕は(有名ヘアサロンのハリー・ハーシュバーガーの)アシスタントになったばかりで、いわゆる“新米アシスタント”の気分に浸ってたんだ。サロンには超有名人もいて、僕は1日何時間もずっと働きっぱなし――しかも、都会に引っ越してきたばっかりで心細かった! すごく大変だったけど、最高のヘアスタイルの技術を教わった。そのおかげで今の僕がある。このアルバムは今もしっくりくる1枚で、何度も何度も聴いている。すごく勇気づけられるんだ。でも最近は、この曲を聴くと大泣きしちゃうんだよね。

・アントニ・ポロウスキが選んだベストソング
「サイエンス・オブ・サイレンス」リチャード・アシュクロフト



アントニ:えー、女性ポップシンガーが続いてるので(笑)僕は、リチャード・アシュクロフトをピックアップ! 彼はイギリスの象徴的存在なんだ。僕が選んだのは、アルバム『ヒューマン・コンディションズ』からの2枚目のシングル「サイエンス・オブ・サイレンス」。この曲を最初に知ったのは2年前、初めて男性と付き合うようになる前の頃かな。この曲は、自分探しの歌なんだ。歌詞の中で特に好きなのが、「自分自身を提議する言葉はいらない」っていう部分。自分探しを続けるうちに、自分の中でいろいろな発見をする。そして愛する誰かを見つけて、相手に自分をゆだねることで成長するんだ。僕自身、初めて男性に恋して付き合うことで、自分がゲイであることをようやく受け入れられた。自分がゲイでもいいんだ、自分が相手を心から愛して、尊敬していることが大事なんだってね。リチャード・アシュクロフトがどんなことを考えてこの曲を作ったのか知らないけど、僕はこういうふうに解釈した。心の内面を歌った曲で、僕の嗜好にぴったりマッチするんだ。

ーついでに質問するけど、ザ・ストロークスのTシャツは何枚持っているの?

アントニ:実は5枚持ってるんだけど、そのうち3枚は手放した。番組を始めた当初、僕はTシャツにジーンズというスタイルで、もうちょっとオシャレが必要だということになった。だったら好きなバンドを応援しようと思ってね。第2シーズンではザ・ナショナルのTシャツを着ている。僕はザ・ストロークスの大ファンで、寝ても覚めてもストロークス。それで番組のスタイリストがバンドのマネージャーに連絡してくれたんだ。そしたら彼らも番組のことを知ってて、力になってくれるって! 僕のためにTシャツを送ってくれたんだ。3回観に行ったコンサートを除けば、それがジュリアン・カサブランカスに一番近づけた瞬間だね。



Translated by Akiko Kato

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