アリス・クーパー、自身がヘロデ王を演じる舞台について語る

ーあの作品が発表された当時、あなたはロックと演劇を融合させるアーティストとして脚光を浴び始めており、70年代半ばにはそのスタイルを確立させました。もちろん『スーパースター』の方向性とは大きく異なっていましたが。

『悪夢へようこそ』のツアーで、俺たちはブロードウェイの舞台も顔負けの大掛かりなセットを使った。というか、あれは俺たちなりのブロードウェイだった。悪者が主役のおどろおどろしい喜劇さ。

ーそういう意味でも、喜劇的な『ヘロデ王の歌』はあなたにぴったりでしたね。

そうだな、すごくシニカルなキャラクターのシニカルな曲だからな。自分なりのヴァージョンを作るにあたって、俺はあの役に一番ふさわしい人物像についてずっと考えてた。それはアラン・リックマンだと俺は結論づけた。彼ならヘロデ王をどう演じたか、俺はそう考えながらあの曲に取り組んたんだ。今回の舞台じゃ、ディレクターから「もっと喜劇的に」とか「もっとダークでおどろおどろしく」とか指示されるけどね。キャラクターのイメージを決めるのは彼らだから仕方ないけどさ。

ー1996年にあの曲をレコーディングした時のことを覚えていますか?

ティム・ライスから依頼されたんだ。彼とは親しくしてるし、オファーをもらって光栄に感じたよ。「アリス・クーパーならではのものが聴きたい」って言ってくれたんだ。あの曲の不気味なムードはそれが理由さ。俺としては、自分のアルバムに入っててもおかしくないようなロック調の曲にしたかった。原曲の湿っぽいブレイクダウンの代わりに、ギターソロを入れるっていう案もあった。さすがに嫌がられるだろうと思ってボツにしたけどね。

ーティム・ライスとはどういう間柄なんでしょうか?

長年にわたる友人だよ。彼の家に行ったこともあるんだけど、すごい数のレコードを持ってるんだ。レアなやつに目がないらしいから、(クーパーのデビューアルバム)『プリティーズ・フォー・ユー』のテストプレスとかをあげたら大喜びしてくれてさ。それ以来ずっと仲良くしてるよ、すごくいいやつさ。

ー『ヘロデ王』を演じるにあたって、彼から何かアドバイスはありましたか?

俺と彼、それに俺の親友のバーニー・トーピンは、皆リリシストだっていう点で共通してる。ティムは曲以上に歌詞を重視するタイプで、俺のリリックを気に入ってくれてた。俺自身彼のファンだったし、彼がアンドリューと組んだ作品はどれも大好きだった。彼はアンドリューにとって不可欠な存在さ。

彼は多分リハーサルに顔を出すだろうから、その時に直接聞いてみるつもりなんだ。「3つか4つくらいパターンを考えたんだけど、どれがいいと思う?」ってね。彼は優れたユーモアのセンスの持ち主だ。俺は人生の9割を遊んで過ごしてるような人間には無条件で好感を持つんだけど、彼は間違いなくそういうタイプさ。何に関してもシリアスになりすぎないからね。最悪のタイミングで場違いな発言をするような人間を極端に嫌うタイプだ。

ーセリフに手を加えようとしましたか?

俺なりにグッとくるセリフをたくさん考えたよ。劇の最後でヘロデ王が「私の前から消え失せろ」って言うシーンでは、俺は10くらい代替案を出した。メル・ブルックス風に「王座こそ私の居場所だ」とかね。「おいジーザス、もっとしっかりしろよ」みたいな、相手を王と認めない彼の皮肉たっぷりなセリフなんかもそうだ。どれが採用されるかは、放送を見てのお楽しみさ。

ー生放送で演技をすることに不安を覚えますか?

いいや。俺はスタジオに篭りっきりの人間とは違って、オーディエンスの前に出ることに慣れてるからね。俺の人生の99パーセントは人目にさらされてるようなもんだからさ。

ージョン・レジェンドとはもう会いましたか?

グラミーで顔を合わせたことがある程度だね。彼は役にぴったりだと思う。穏やかで物腰の柔らかいところが、ジーザスのイメージとすごくマッチしてるからね。気性の激しい人間には務まらない役なんだよ。

ー演者たちの相性も大切ですよね。

もし聖書に忠実であろうとするなら、ジーザスは無口なはずなんだ。ヘロデ王は張り合いのないその態度が気にくわないから、あの手この手でジーザスを怒らせようとする。最後には無理だって悟るんだけどね。ちなみに現時点で、俺は他のキャストについては全く知らないんだ。ジョン・レジェンド以外はね。

ーサラ・バレリスがマグダラのマリアを演じることになっています。

へぇ、それはいいね。もしかするとキャストはミュージシャンで固めるつもりなのかな。ペテロ役は派手めで社交的なイメージの人物がいいだろうね。劇中で唯一の情熱的なキャラクターだからさ。他のキャラクターが口を閉ざしている時でも、ペテロだけは「私は何があってもあなたの味方です」なんて調子さ。そのくせジーザスを3回も裏切るんだよな。

ーペテロ役には誰がいいと思いますか?

セバスチャン・バック(元スキッド・ロウのヴォーカリスト)なんかいいかもな。ハマると思うよ。テッド・ニュージェントでもいいね。

ーセバスチャン・バックは過去にジーザス役を演じていますが…

そうなのか?確かにぴったりだな。あとはマリリン・マンソンにユダ役をやらせたら完璧だね。

ーそれこそまさに…

タイプキャスティングだよな(笑)

Translated by Masaaki Yoshida

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