サカナクション山口一郎・本広克行監督対談 「祭り」を昇華した「揺らぎ」のポップス

左:本広克行、右:山口一郎(Photo by Yoko Yamashita)



「僕、現代アートの映画とか撮りたいです」本広

─(笑)。山口さんは、最近の音楽シーンについて思うところは?

山口:一時期「フェスで盛り上がる音楽」が重宝され過ぎて、主催者側も「浴びる」遊び方しか教えてこなかったから、主体的に音楽を聴く方法を聴き手がどんどん忘れていってる気がしますね。例えば僕らの時代って、サブスクなんてもちろんなかったから、1枚3000円するCDをわざわざ買うわけじゃないですか。そうすると、一度聴いて「ワケわかんない」と思っても、元を取ろうとして何度も聴くわけですよ。映画でもそう。地味で難解な映画も、「きっと何かあるはずだ」と思って、一生懸命観るわけです、主体的に。もちろん、そういう自分に酔っているところも無きにしも非ずなんだけど(笑)、そうやって新しい音楽や映画を発見していったわけじゃないですか。

本広:ああ、確かにそうかもね。

山口:ところが今は、とにかく「浴びせる作品」ばかり。映画はどうか分からないけど、少なくとも音楽はそうですね。フェスなんてその最たるもので、僕らもステージで演奏しながら「ほら、こういうのが聴きたいんでしょ」みたいになってしまっているところがあった。釣り堀で撒き餌を撒いているような感じというか。あと、主催者側も、音楽をちゃんと聴かせる音響システムができていなかったりする。音楽って、音を楽しむわけだから、低音が全然鳴らないとか、客席の後ろの方までちゃんと音が届いていない状態っていうのは、やっぱりマズイと思いますね。

─サカナクションは、ライブの音響にずっとこだわり続けてきましたからね。さて、あらためて『曇天に笑う』を観ての山口さんの感想を聞かせてください。

山口:僕は、「ライフワーク」と「ライスワーク」があって。どちらも大切だと思うんですよね。この映画は、モッくんにとってはライスワークなのかなって思いました。より多くの人に開かれた作品? 例えば『曇天に笑う』を観た中学生の女の子が、「本広監督ってどんな人なんだろう」と思って過去の作品をたどって行って『お金がない!』や平田オリザの舞台にたどり着く、みたいな。

本広:なるほどね(笑)。

山口:だから今、この瞬間に評価されるライスワークも、入り口としてはもちろん大事。でも、そこから入ってく人たちがたどり着くライフワーク、「30年後とかに評価されるものを作る」という意識も忘れたくない。モッくんだったら舞台とか。ライスワークとライフワークは同時にやって行くべきだと思う。だから、今度はライフワークを一緒にやりましょうよ。

本広:やりたいですねえ。僕、現代アートの映画とか撮りたいです。映画ではなかなか表現できないんですよ、現代アートって。

山口:前に話したストーリーで撮りましょうよ。 

─どんなストーリーですか?

山口:『お金がない!』風のやつ。脱サラした一人の男が、ふらっと立ち寄った美術館の一枚の絵に感動して、ギャラリーのキュレーターになるんですよ。で、若い芸大の女の子の作品を見て「この子を売り出すんだ」ってなって。恋愛しながら一つの絵を作るわけですよ(笑)。それで二人の絆は深まるんだけど、彼女が世界的に評価されちゃうわけ。で、距離が広がっていって。で、その子は死んじゃうの。そうすると二人で作り上げた絵画が残るわけじゃない? で、何十億の値段が付いてるの。それを買い戻すっていう話。

本広:いつもこんな話してるんですよ(笑)。でもいいね、それを一郎さん主演でやりたいし観たい。一郎さんを役者にしたい。

山口:役者になるのは絶対いやです(笑)。エキストラとかだったら全然やりますけど、セリフのある役はダメ。俺、大根仁監督に言われたもん。「いろんなミュージシャンのPVを撮って、その中で演じるシーンもあったけど、お前はダントツでセンスねえな」って。

(一同笑)

山口:あと、いつもこの話になるけど、映画業界が狭いですよね、窮屈。

本広:日本映画はめっちゃ狭いですよ。産業でいったら、「日本の年間映画興行収入1800億円は、紅しょうがの市場規模より小さい」んですって。だから、『君の名は』があんなにヒットしても……。

山口:有名な紅ショウガ一つくらいの売り上げってこと? それツライね(笑)。じゃあモッくん、また『踊る大捜査線』やりましょうよ。キャストも総入れ替えで、全く新しいシリーズにしちゃってもいいと思うんですよね。そこには僕、サントラで全面的に参加しますから。

本広:紅ショウガの新人気シリーズになれるかな……(笑)。



『曇天に笑う』
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http://donten-movie.jp/


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