サカナクション山口一郎・本広克行監督対談 「祭り」を昇華した「揺らぎ」のポップス

左:本広克行、右:山口一郎(Photo by Yoko Yamashita)



「『この映画は、女性が観る映画』と割り切ったんです」本広

─「葛藤」に対してのバランスの取り方という意味では、今作『曇天に笑う』の舞台そのものが「明治時代」という、日本がそれまでの伝統を守り続けるのか、西洋から渡ってきた新しい文化や価値観を取り入れるのか、その狹間で揺れ動いてた頃の話ですよね。

山口:そうそう、まさに。あと、この映画はイケメンしか出てこないですよね?(笑)

本広:原作では女性も出てくるんですけど、それも今回、男の子に変えちゃいました。「この映画は、女性が観る映画」と割り切ったんです。ただただ、かっこいい男の子をズラーッと並べた方が、女の子も楽しんでくれるかなと。案の定、ウチのカミさんも大興奮していましたね(笑)。

山口:「男性をこう描いたら、女性はハマるだろうな」っていう、その感覚を持っているのがモッくんのすごいところだよね。

本広:いわゆる「萌え」ってやつね。そこは今回、すごく勉強しました。というのも、僕らの共通の友人に片山正通さんっていうインテリアデザイナーがいるんですけど、彼の姪っ子が「腐女子」なので、彼女に池袋とか連れて行ってもらって(笑)。「ああ、これが女の子たちの萌えポイントなんだな」っていうのをどんどんインプットしていったんです。例えばキャラクター同士の関係性も、屈折していればいるほど萌えるんですよ。

─主人公と敵対する相手も、単なる悪役じゃなくてすごく魅力的ですよね。好敵手というか。

本広:おっしゃる通り、ライバルが大好物です(笑)。あと、なるべく二次元の世界観に寄せました。漫画の場合はいろんな部分を簡略化しているんですよ。セリフとか仕草とかでも、分かりやすくカッコ良さを描いた方がいいんです。

山口:だから今作の主題歌「陽炎」を作るときも、そこ気をつけましたよ。福士蒼汰くんに中山優馬くん、とにかくイケメンばっかり出てくるわけだから、主題歌もイケメンであってほしいじゃないですか。そういう意味ではあまりポップでキャッチーにし過ぎないよう気をつけました。

─サカナクションは、大根仁監督の『バクマン。』(2015年公開)でも音楽を担当しているじゃないですか。そのときとはかなりアプローチが違った?

山口:違いましたね。『バクマン』は漫画作家の話で、同じ作り手としての自分の目線と近いものがあったから、割とやりやすかったんです。映画の中のストーリーと、自分たちのバンドのストーリーを掛け合わせた上で、ちゃんと着地させることができたというか。でも今回は、あまり「自分」というものを前面に出さない方がいいのかなと思いました。もう少し匿名性を持たせるというか。

本広:そんなことまで考えてくれてたんだ!

山口:あと、ゴダイゴの“モンキーマジック”みたいな、ちょっと東洋っぽいシンセサウンドを入れたのは、音楽好きへの目配せというか。例えば彼女に連れて来られて観に来た男の子が、最後に「お!」って思ってくれたらいいなって(笑)。ゴダイゴっていいですよね。クラスの中のほとんどの人が聴いている音楽じゃなくて、その中の一人か二人に深く刺さっていくバンドっていうイメージ。そういう、マジョリティの中のマイノリティって、必要な存在だと思うし、残ると思うんです。僕もそこへ行きたいなと思いますね。

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