サカナクション山口一郎・本広克行監督対談 「祭り」を昇華した「揺らぎ」のポップス

左:本広克行、右:山口一郎(Photo by Yoko Yamashita)



「『陽炎』は新機軸であると同時に、原点回帰的なところもあって」山口

─ちなみに「陽炎」の“モンキーマジック”的なアプローチは、太鼓チームGOCOOの名前、すなわち孫悟空とかけていたりもします?

山口:あ、それはなかったけど、「かけた」ってことにしようかな。

─(笑)。「陽炎」は、サカナクションにとって新機軸といえる仕上がりになったそうですね。

山口:音楽的なことをいうと、この曲ってBPM130を超えているんですよ。こういう曲調で130超えるってあんまりない。ちょっと盆踊りっぽいというか(笑)、“一向一揆感”みたいなものは出せたと思う。いわゆるフェスで盛り上がるようなギターロックとは一線を画す、新しいポップスのカタチ……日本人のDNAに訴えかけるようなアプローチが出来たのは、自分でも達成感がありますね。それに、新機軸であると同時に、原点回帰的なところもあって。

─というと?

山口:そもそもサカナクションって、デビューしたときには「外に向けて音楽を発信したい」という気持ちがそこまで強くあったバンドじゃなかったんです。なので、活動初期は悪戦苦闘や葛藤の連続で、そこに生じる「ゆらぎ」こそがアイデンティティになっていたんですよね。今回、モッくんからこういったお仕事をいただいて、その中で自分がどう「揺らぐ」か?というのをもう一度向き合えた。それは自分にとって、すごく大きな出来事でした。

─映画のオープニングとエンディングは「お祭り」のシーンで、そこの音楽もサカナクションが太鼓チームGOCOOと手がけています。昔から思っていたんですが、この曲を聴くと改めてテクノと盆踊りの親和性を強く感じました。

本広:そうなんですよ! 僕も初めてサカナクションのライブを見たとき「ああ、これはお祭りなんだな」って思った。

山口:その話を聞いて思い出したんだけど、北島三郎さんが最後に出演した2013年の紅白歌合戦は、僕らサカナクションも出演したんですね。で、サブちゃんが目の前で「まつり」を歌ったんです。そのときに僕、ちょうどアフロビートにハマってて、フェラ・クティとか聴きまくってたんですけど、その耳で「まつり」を聴いたときに「おお、これは完全にアフロビートだわ」って興奮した(笑)。日本の演歌とか土着な音楽って、トライバルなんですよね。ウルフルズの「ガッツだぜ」にしても、フィンガー5にしてもそう。無条件に高揚するけど、でもどこか切ないみたいな。そのバランス感覚が日本人っぽい。

─ところで、お二人はプライベートでもすごく仲良しなんですよね?

山口:はい。そういえばモッくん、いつの間にか結婚してたよね?(笑)。家族をもって作品は変わりました?

本広:子どもができて変わったかな。あんまり残酷な描写はやらなくなりましたね。子どもたちにとっていいことは何もないなと思ったので。トラウマになったりするじゃないですか。だから最近は人の映画を観て、「なんでこんな残酷なシーンを作るんだろう」ってムカつくこともある。

山口:え、こないだ『亜人』でメッチャ残酷なシーン撮ってたじゃん!

本広:あれ?(笑) でもあの映画は血が一切出てこないんですよ。

山口:そういう問題じゃないよ。

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