ミーゴス1万字インタビュー:ヒップホップ界のキングが語る過去・現在・未来

写真左からオフセット、テイクオフ、クエヴォ (Photo by Theo Wenner for Rolling Stone)

深夜12時過ぎ、我々はアトランタのクオリティ・コントロール・スタジオの外にいた。そこに到着したマクラーレンから勢いよく出てきたクエヴォは、誰に向けるでもなくこう叫んだ。「俺はロックスター!泣く子も黙るド有名人!」

クエヴォはその足でCスタジオに向かった。彼はアトランタの有名ストリップクラブMagic Cityからテイクアウトしたフライドチキンとマッシュポテトを右手で口に運びながら、左手でAkai MPK Miniキーボードを操作してみせる。彼のすぐ側では、ツアーDJ兼プロデューサー兼エンジニアのDJデュレルが、ラップトップから流れるサウンドをいじっていた。


稼いだカネを誇らしく手にしたクエヴォ(Photo by Theo Wenner for Rolling Stone)

食べる手を止めることなく、クエヴォはマリファナを巻き、ヘネシーを豪快に飲み干しながら、作りかけのビートをチェックしている。天才的にキャッチーなコーラスを生み出す彼は、超一流のビートメイカーでもある。巻き戻せと何度も声をかけながら、クエヴォはリピート再生している箇所に合わせて、Akaiのキーボードを操作する。完全に納得がいくまで、彼はデュレルに繰り返し指示を出し続ける。ファットなベースと808サウンドがリードするファンキーなトラックを、スタジオのあちこちに移動しながらチェックするクエヴォは、ご機嫌な様子でお決まりのセリフを口にした。「こいつはハードだぜ!」

『カルチャーⅡ』の大部分はワールドツアーの合間を縫って制作されたが、それはミーゴスにとって新たな試みだった。それぞれがホームスタジオで作ったものを持ち寄るというそれまでのスタイルは、ミーゴスのサウンドに大きく影響していたからだ。「家じゃ納得がいくまで徹底的にやれるからな」オフセットはそう話す。「勝手が分かってるから『これってハードか?』なんてことにならないしな。『バッド・アンド・ブージー』は俺ん家で生まれたんだぜ」彼は自身のパートを、床に座った一番下の息子に見守られながら録ったという。

南アフリカでは、人懐っこい猿たちが駆け寄ってくるリゾートでレコーディングが行われた。「ジャングルの真っ只中での曲作りさ」テイクオフはそう話す。「宿泊先の裏には見事な森が生い茂ってたよ」その環境は曲作りにも影響している。テイクオフはある曲についてこう話す。「(クエヴォが作った)『ここはジャングル、まじりっ気なしのジャングル』っていう、ボブ・マーリーみたいなジャマイカン調のラップなんかは、あの環境でしか生まれ得なかったはずさ」



普段とは異なる環境で制作されながらも、『カルチャーⅡ』は「正真正銘ミーゴスのサウンド」だとオフセットは話す。「ビートからベースまで、クラブのフロアを直撃するはずさ。レイドバックなのは俺たちのスタイルじゃない。底抜けに楽しくなくちゃな」テイクオフはこう付け加える。「トラップであることには変わりないけど、ぐっとファンキーになった。でもそれだけじゃないぜ。ミーゴスのバイブは健在さ」ミーゴスにとって最も重要なターゲット、それは女性ファンだとオフセットは話す。「ギャングスタラップであれトラップであれ、女どもを喜ばせなきゃダメだ」彼はそう話す。「『バッド・アンド・ブージー』は女性のための曲だ。あれは女性たちにもっと自信を持ってもらおうって曲なんだよ。この業界じゃ女性ファンが何より重要だからな。ゲームの勝者になりたかったら、女どもの心を掴まないとダメなんだよ」

Aスタジオでは、オフセットが別の曲のヴォーカルを録っている最中だった。ミーゴスはメンバーがそれぞれ録ったものを持ち寄り、出来のいいものは曲として完成させ、そうでないものはボツにするというのを基本的なやり方としている。オフセットはコンソールのそばの椅子に座った状態で、リピート再生されるビートに合わせて即興でパフォーマンスを繰り返していた。リズミックでアグレッシブなビートへのアプローチ、そして時に発せられる意味不明なシャウトは、あのジェームス・ブラウンを彷彿とさせる。プロセスを繰り返すうちに、リリックが徐々に形成され始める。「母さんを乗せるマイバッハ / 脇には振り払った干草の山 / ふと思い出す 心にぽっかりと開いた穴」

ミーゴスは以前、ひとつのヴァースを作るのに20分以上かけないというルールを設けていたという。そのルールが排除された現在でも変わっていないのは、リリックを決して書き起こさないというポリシーだ。あくまでフリースタイルにこだわることで、直感的でリアルなリリックが生まれるのだという。

リズム感を徹底的に追及するミーゴスは、すべてのシラブルを同位置に配し、各ワード間に絶妙な隙間を残すことを重視している。「俺の声はスネアっぽいんだ」クエヴォはそう話す。「全体的にドラム的なんだよ。でもそれ以上に、ベースとしての役割が強い」ライムの合間にアドリブ的に繰り出される(宝石類を指す)「シャイン!」のシャウト、そして「bwah」「skrrrt」「brrrup」等の決め台詞は、キャッチーなだけでなくリズム感を強調している。「ビートに0.5秒くらいの隙間が生まれる時に、あのアドリブをきめるのさ」クエヴォはそう話す。「俺の声よりヤバいハイハットとスネアなんてないぜ」

Translated by Masaaki Yoshida

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