ミーゴス1万字インタビュー:ヒップホップ界のキングが語る過去・現在・未来

午前2時過ぎ、スタジオでの作業を終えた3人が向かったのはストリップクラブだった。スタッフらを含めた総勢15人は、オフセットの愛車であるベントレーのベンテイガ、盟友リル・ヨッティが所有するベントレー、そしてクエヴォのマクラーレンを含む、計8台の高級車に乗り込んだ。アトランタの薄暗い通りを駆け抜ける高級車の列の先頭を走るのは、豪快なエンジン音を響かせながら、堂々と信号を無視し、猛スピードのまま車線変更を繰り返すクエヴォの愛車だ。その運転からも窺えるように、彼は相当の自信家だ。「お気に入りのMC5人は?」という筆者の問いに、彼はこう答えた。「トゥパック、ビギー、ジェイ・Z、カニエ、グッチ・メイン、あともちろん俺さ」

リアム・ペインからメアリー・J・ブライジまで、2017年だけでもクエヴォは無数の客演をこなしている。彼は現在の地位と名声に、少しも満足していないのだという。「『エレンの部屋』に出たいんだよ」彼はそう話す。「ジミー・キメルやジミー・ファロンの番組にも出たい。とにかくもっと有名になりたいんだよ」彼の理想、それは三拍子揃ったスターなのだという。「俺は一箇所に留まっていられない性格なんだ。高校時代には異なる3つのスポーツをやってたけど、この業界でも同じことをやりたいんだよ」その3つとはミュージシャン、俳優、そして映画監督だ。実際に現在、彼は子供の頃に好きだった映画にインスパイアされた作品を制作中だという。「『ジュース』、『ポケットいっぱいの涙』、スヌープドッグの全出演作、マスター・Pの映画、『I Got The Hook-Up』、『Baller Blockin’』ああいうビッグなのを作りたいんだよ」

さらにスピードを上げるマクラーレンの助手席で、筆者は思わずブレーキを踏む仕草をしてしまった。そういったリアクションにすっかり慣れているのか、クエヴォはまったく気にかけていない様子だ。「そんなビビるなって」彼のその言葉は、残念ながら少しも気休めにはならなかった。

(左)ワイドレシーバーを務めていた高校時代のオフセット(右)クォーターバックとして記録を残した学生時代のクエヴォ(中央)2002年頃のクエヴォとテイクオフ。2人は最近クエヴォの母親に一軒家をプレゼントした。「すげぇ喜んでたよ。感極まって一日中泣いてたからな」ークエヴォ

その1週間後、話題を呼びながらも酷評されたウィル・スミスのNetflilx映画『ブライト』のプレミアでのパフォーマンスを控えていたミーゴスは、ロサンゼルス市内を走るトレイラーの中で、酒とマリファナを手にパーティに興じていた。オフセットがカーディ・Bとのビデオを通話を楽しみ、ヨッティがアップルジャックスの箱に手を伸ばしていた時、突如クエヴォは劇場でマリファナを吸ってやると豪語し始めた。「ウィルには悪いが俺は吸う!」(その夜、彼は有言実行してみせた)

そのすぐ隣では、テイクオフがその日3本目のマリファナを巻いている。その作業に集中していた彼が手を止めたのは、話題がトゥパックとビギーの抗争と死に移った時だった。まるで火がついたかのように、彼は目を大きく見開いて、2人の死をめぐるストーリーの数々、そしてヒップホップの歴史について熱く語り始めた。ミーゴスのマネージャーの1人であるRELは、テイクオフが14歳だった頃に、3人が警察に呼び止められた時のエピソードが忘れられないと話す。警察官に職業について尋ねられた時、テイクオフは自分はラッパーだと答えたのだという。オフセットはテイクオフについてこう話す。「テイクオフは気にくわないやつや仲間のことについては声を荒げるけど、基本的には無口なんだ。ラップの内容があんなにも鋭いのは、黙ってるようで色々と分析してるからさ。やつは最高のラッパーさ」

午前0時半、カーディを加えた一行は、ダウンタウンのクラブで行われるオフセットの誕生日パーティに向かっていた。オフセットが着ているサンローランの女性ものの黒い長袖シャツには、無数のダイヤモンドが散りばめられている。リベラーチェを思わせるその服は、実に2万ドル相当だという。その夜ステージに立った彼らは、自身のヒット曲の数々を披露しながら、眩いアクセサリーの数々を存分にひけらかしていた。

パーティが終わりに近づくと、オフセットとカーディは外に出た。そこに待っていたのは、カーディが彼への誕生日プレゼントとして用意した、ペパーミント&ホワイトのカラーが目を引く、40万ドル相当のロールスロイスのレイスだった。歓喜の雄叫びを上げたオフセットは、踊るようにしてその運転席に乗り込んだ。カーディを膝の上に乗せてじゃれ合う2人の様子は、ダイヤモンドを交換し合った王と王妃を思わせた。「ペパーミントのロールスロイスで出発だ!」彼はそう声を上げた。「神様に感謝だ!」


Translated by Masaaki Yoshida

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