【シカゴ音楽旅行記Vol.2】パンク愛から生まれた「遊園地みたいな」DIY音楽フェス・Riot Fest

The Armedとダイブする観客(Photo by Shiho Sasaki)

世界有数の音楽都市、シカゴの知られざる魅力に迫る観光レポート連載【シカゴ音楽旅行記】(全4回)。第2回のテーマは音楽フェスティバル。世界的な人気フェスが目白押しのなか、ユーモアとDIY精神を持ち合わせたパンクロック・フェスに参加。そこには音楽のテーマパークが広がっていた。


「音楽都市」シカゴの多彩なフェス文化

シカゴは音楽フェスも盛んだ。コーチェラ、ボナルーと並んで「アメリカ3大野外フェス」と呼ばれるロラパルーザは2024年、チャペル・ローンが同フェス史上最大の観客を集め、YOASOBIや花冷え。が出演したことでも話題となった。会場のグラント・パークは摩天楼がひしめき合うシカゴの中心部ループエリアにある。文字どおり街のど真ん中に数十万人を動員する、都市型フェスの世界最高峰だ。

チャペル・ローン、2024年のロラパルーザ出演時の光景

グラント・パークの一角を占めるミレニアム・パークは観光名所のひとつ。クラウド・ゲートや噴水アトラクション「クラウン・ファウンテン」などの名物スポットでも知られ、建築家フランク・ゲーリーが手がけた野外コンサート会場「ジェイ・プリツカー・パビリオン」では、クラシック音楽のGrant Park Music Festivalシカゴ・ブルース・フェスティバルシカゴ・ジャズ・フェスティバルが入場無料で(!)毎年開催される。


クラウン・ファウンテン。シカゴ市民1000人の顔がLEDライトにより映し出され、口の部分から水が噴き出す。ミレニアム・パークの公園整備費(約2億2千万ドル)はすべて個人や企業からの寄付によって賄い、納税者に負担をかけることなく建設された(Photo by Shiho Sasaki)


ジェイ・プリツカー・パビリオン。劇場内だけで4000人、後方の芝生席を含めると計11000人を収容可能(Photo by Shiho Sasaki)

ミレニアム・パークは2024年7月でオープン20周年。ジェイ・プリツカー・パビリオンで開催された記念コンサートでは、シカゴ出身のコモンと、Grant Park Music Festivalでお馴染みのグラント・パーク管弦楽団が共演。ジェニファー・ハドソンのサプライズ出演も話題となった

筆者も長年愛読している音楽メディア、ピッチフォークが主催するPitchfork Music Festivalは、NBAシカゴ・ブルズ/NHLシカゴ・ブラックホークスの本拠地ユナイテッド・センター(ライブ会場としてもビリー・アイリッシュ、SZAらが使用)の近くにあるUnion Parkが会場。コアな音楽ファンも唸らせる最先端のアーティストやインディーシーンの良心が揃うブッキングは垂涎の的だ。


2024年のPitchfork Music Festivalに出演したジェシー・ウェアのステージ


「Riot Fest」はパンクの一大テーマパーク

そのなかで今回はRiot Festに参加することに。遡ること2005年、「シカゴで大好きなパンクロックのイベントを開催する」というシンプルな動機からスタート。回を重ねるごとに規模感を拡大し、現在では全米最大級のインディーフェスとなった。

オルタナ、メタル、ヒップホップなど「パンク」を拡大解釈したラインナップも魅力的で、2024年は地元の英雄フォール・アウト・ボーイ、同じ時代を生きた戦友のベック&ペイヴメント、2019年の解散後初ライブとなるスレイヤーがヘッドライナーを務め、解散直前だったNOFXが彼らの名を冠したステージ「NOFX World」に3日間とも登場。公式発表によると1日あたり5万人のオーディエンスが訪れた。


2024年のラインナップ(公式サイトより引用)


Riot Fest第1回(2005年)の映像。デッド・ケネディーズ、ミスフィッツなどが出演、当時の会場はCongress Theater(現在修復中)

フェス2日目、9月21日の土曜日正午すぎ。ループエリアから車で15分ほど離れた会場のDouglass Park付近は、バンドTシャツに身を包んだ人で溢れかえっていた。モヒカンやパンクファッションのガチ勢も多かったが、ナードな音楽ファンやシニア/ファミリー層もいたり客層は幅広い。最高気温は30度近く、夏フェス並みの暑さだ。


Riot Festに到着。「Rise」と「Radical」はサブステージに該当(Photo by Shiho Sasaki)


会場ゲート〜ステージまでの道中で見かけたエモいペイント(Photo by Shiho Sasaki)

Riot Festは一大テーマパークでもある。観覧車などの乗り物やアーケードゲーム、スケートボードのハーフパイプ、レスリングのリングコート(米プロレス連盟NWAとのコラボ)、歴史資料館、サーカス、ウェディングチャペル(約40組のカップルが挙式を挙げたらしい)、我々世代には懐かしいドラマ『フルハウス』のジェシー役、ジョン・ステイモスのバター像(劇中に登場するバンド、ジェシー&ザ・リッパーズの再結成&出演を祈願したもの)まで、遊び心に富んだアトラクションがてんこ盛りだ。


上述したテーマパーク要素とフェスのハイライトを1分40秒で網羅、Riot Festアフタームービー


移動遊園地を思わせる光景、筆者もこのあと観覧車にライドオン(Photo by Shiho Sasaki)


デロリアンの奥に見えるのがジョン・ステイモスのバター像とパンクの歴史資料館(筆者撮影)


スケートボードのハーフパイプ。「Riot Pop!!」はフェス独自ブランドの炭酸飲料(Photo by Shiho Sasaki)


プロレスリングでブレイクダンス(Photo by Shiho Sasaki)

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