石若駿×上原ひろみの歴史的共演、アイナや田島貴男ら豪華セッション 『JAZZ NOT ONLY JAZZ』総括

Photo by Maho Korogi

ジャズドラマー石若駿率いる次世代の実力派バンド「The Shun Ishiwaka Septet」がアイナ・ジ・エンド、上原ひろみ、大橋トリオ、田島貴男、PUNPEE、堀込泰行といった豪華アーティストと奏でた一夜限りのスペシャルセッション『JAZZ NOT ONLY JAZZ』のレポートをお届けする。当日の模様は8月に有料配信、9月にWOWOWで出演者による貴重なインタビューなどを加えたスペシャルエディションを放送・配信されるのでお見逃しなく。

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6月21日、ドラマーの石若駿率いる実力派バンドが豪華アーティストと一夜限りのスペシャルセッションを行うライブイベント『JAZZ NOT ONLY JAZZ』がNHKホールで開催された。多彩なゲストの顔ぶれ同様に、会場には実に幅広い世代の音楽ファンが集まり、ジャズを軸としながらもジャンルを自在に横断する演奏と、素晴らしい歌・パフォーマンスに心から酔いしれた。

音楽評論家でDJとしても定評のある柳樂光隆によるDJを経て、開演時刻を過ぎると石若率いるThe Shun Ishiwaka Septetがステージに登場。この日は各ゲストとの演奏に加えて、間にはジャズスタンダードも演奏され、1曲目に選ばれたのはジョン・コルトレーンの「A Love Supreme」。西田修大(Gt)、細井徳太郎(Gt)、マーティ・ホロベック(Ba)、松丸契(Sax)、山田丈造(Tp)、渡辺翔太(P)というメンバーはそれぞれが多方面で活躍しつつ、普段から石若と演奏する機会も多いプレイヤーたちで、現在31歳の石若をはじめ、平均年齢は30代の前半。「A Love Supreme」に2020年代ならではの解釈を加え、フレッシュかつエネルギッシュに演奏された。


石若駿(Photo by Maho Korogi)


The Shun Ishiwaka Septet 左から渡辺翔太、細井徳太郎、マーティ・ホロベック、松丸契、石若駿、山田丈造、西田修大(Photo by Maho Korogi)

ここで最初のゲスト・堀込泰行が呼び込まれると、演奏されたのはキリンジの「エイリアンズ」。ライブ序盤でいきなり披露された名曲に大きな歓声が上がる中、堀込がリリース当時と変わらない透明感のある歌声を響かせ、さらにはドナルド・フェイゲン風のAORナンバー「New Day」で会場を盛り上げていく。石若が「思い入れの強い『エイリアンズ』を最初に演奏できて、今日は幸先がいい」と話し、バンドメンバーを紹介すると、続いて披露されたのは「Sunday in the park」。堀込は以前から下の世代と積極的にコラボレーションを行なっていて、この曲は星野源との活動などでも知られるMPCプレイヤーのSTUTSとのコラボレーション。STUTSもまた近年ジャズに傾倒した活動を行い、この曲からもジャズの広がりが感じられ、ステージ上では細井が長尺のギターソロで色を添えた。


堀込泰行(Photo by Maho Korogi)

続いて登場したのはOriginal Loveの田島貴男。石若が「念願の初共演です」と話し、田島は石若について、「中村佳穂さんのライブで見て、これはやばいと思いました」と話すと、まず披露されたのはジャズスタンダードの「Body and Soul」。ハリのある歌声でスタンダードを自らのものにして歌い上げ、軽快なギターソロも聴かせる田島の存在感はやはり抜群だ。マーティが躍動感のあるウォーキングベースを聴かせた「bless You!」では西田、細井、マーティとソロを回し、最後に石若がパワフルなソロを聴かせると、田島が「Clap your hands!」と場内に呼びかけ、手拍子の輪が広がっていく。その中心で熱量高くシャウトを決める田島の千両役者ぶりは流石の一言だった。さらにはブギーな「グッディガール」を続けると、曲の途中からラッパーのPUNPEEが登場して、こちらも巧みなステージングでオーディエンスを巻き込み、パーティーな空気を作り上げていく。


田島貴男(Photo by Maho Korogi)


田島貴男×PUNPEE(Photo by Maho Korogi)

この曲が終わって田島がステージから去ると、PUNPEEは「Jay-ZとThe Rootsが一緒にやったアンプラグドのアルバムが好きで、今日はあの感じでやれるのが嬉しい」と話して、ファンキーな「Renaissance」でさらに場内を盛り上げた。2010年代以降のジャズにおいてヒップホップとの融合は外せないトピックであり、The Rootsのドラマーであるクエストラヴがその文脈においてとても重要であることも踏まえ、PUNPEEはこのイベントに欠かせないピースだったと言える。


PUNPEE(Photo by Maho Korogi)

ここで再びジョン・コルトレーンのナンバーから「Naima」がスピリチュアルな雰囲気で演奏されると、続いて呼び込まれたゲストはアイナ・ジ・エンド。アイナが20歳のときに作ったというスタンダード感のあるポップス「スイカ」を、あの喉をギュッと締めるような独特の歌唱で堂々と歌い上げ、そのアイコン性の高さはここまで登場したゲストたちにも全く引けを取らないもの。アイナの楽曲に参加している西田も交えて思い出を語り合うと、続いて披露されたのは岡村靖幸のプロデュースで、石若がレコーディングにも参加しているバラードナンバー「私の真心」。渡辺のピアノソロから始まったこの曲で、アイナはまずピアノの前に座り込んで歌い、さらにバンド全体の演奏が加わると、軽やかにステップを踏んだり、激しくダンスをしたり、ときにはステージに横たわったりと、まるでミュージカルを見ているかのような奔放なパフォーマンスで観客を魅了。途中で挿入される松丸のサックスソロも艶があり、イベント全体の中でも特筆すべき名演だった。


アイナ・ジ・エンド(Photo by Maho Korogi)


アイナ・ジ・エンド(Photo by Maho Korogi)

8月16日にこのイベントの配信が決まり、その日は石若とビル・エヴァンスの誕生日であること、9月にはWOWOWでも放送・配信されること、さらには各メンバーと石若とのエピソードが語られると、続いて登場したゲストは大橋トリオ。ピアニカを用いたイントロからして印象的な「鳥のように」を歌い始めると、その清涼感のある歌声で場内に心地いい風を吹き込んでいく。かと思えば次に演奏されたのは大橋トリオのレパートリーの中でもロック色の強い「マチルダ」で、メンバーがソロを回したり、客席にクラップを求めたりと、アグレッシブなパフォーマンスも魅力的だ。MCでは石若について「これは石若駿と同じステージに立って演奏しないとわからないと思うんですけど、すごくやりやすいんですよ。ここにミュージシャンを目指してる人がいたら、それを目標に頑張ってほしい」と話し、「EMERALD」ではこの言葉通りに石若のリズムに体を委ねて歌声を聴かせ、山田のトランペットソロも素晴らしかった。


大橋トリオ(Photo by Maho Korogi)

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