藤本夏樹が語る、Tempalayを通して見る「音楽」のあり方、果敢な実験精神

自分たちを深く追求して、曲を作っていくことが今はしたい

―『((ika))』というタイトルについては綾斗くんに聞いた方がいいとは思うんですけど、ネットで「ika」の意味をいろいろ調べてたら、「既存のあり方やルールをまるで見知らぬことのように認識することを社会調査では異化と呼び、異化の視点で物事を見ることによって、常識を打ち破る新しい発想が生まれる」というのを見つけて、この解釈はTempalayというバンドにすごく当てはまるなと思ったんですよね。

藤本:なるほど。たしかに、そういうことをしないと音楽を作ってる意味がないというか、すでに多くの人がいいと思ってるようなものを作っても意味がないし、言い方が難しいですけど、いい曲はある程度勉強すれば作れるというか、すでに「いい曲の作り方」みたいなものはあるわけじゃないですか。「どれだけいい曲的要素を入れるか?」みたいなことは重要だったりするかもしれないけど、いい曲的な要素しかない音楽には価値がないと思うんですよ。再生されるためだけに作られた音楽とか本当に意味がないなと思うし、常識的にいいとされてるものをみんながみんな好きなわけじゃないじゃないですか。音楽を作ってる人はいろんな音楽を聴いて、「俺だったらこうするのに」とか絶対あるはずで、それを素直に出すことはめちゃめちゃ擁護したいというか、そうあるべきだと思ってますね。

―ネットに大量の情報があるから「いい曲」を作るだけだったら、そこにリーチすることは容易になったし、それこそAIで「いい曲」が簡単にできてしまう時代の中で、「でもそれって面白くはないよね」っていう考えはベーシックにあると。

藤本:「うわ、この人のアク出てんな、気持ちわる!」っていう方が俺はテンション上がるんですよ。「カフェで流したらいい感じ」みたいな音楽って、「これ作ってる人マジで何がしたいんだろう?」みたいな、そういうものは本当に吐くほど嫌悪感があるので……そういうことは常に思ってますね。それが「常識を打ち破る」ということなのかはわからないけど、「すでにいいとわかってるものを改めて作るなよ」っていうのがありますね。

―その意味では、Tempalayはすでにいいとされているものとは違うアプローチをしたうえで、ポップなものや美しいものを生み出す実験ができる場所だと言えそうですね。

藤本:もちろんその中で綾斗やAAAMYYYが「これ以上はやったらダメ」ってストップをかけるところもあると思うんですけど、そういうことはソロでやればいいというか、自分のために完結する音楽はソロでやればいい。でもTempalayも基本的には実験の場だと思ってて、怒られない範囲で実験してます(笑)。

―最初に「売れたい」とか「会場を大きくしたい」とかは考えてないという話をしてくれたように、やっぱりその実験が音楽をやる醍醐味だと。

藤本:誤解してほしくないのは、全然売れなくていいと思っているわけではなくて、もう十分にTempalayというバンドは大きくなったと感じてるっていうことで。だからこれからは会場の規模を大きくするとかじゃなくて、Tempalayのことが好きな人たちのリスナーとしてのレベルを上げたいというか、そういうことができるバンドがかっこいいと思うし、そういう存在になりたいなって。例えば、Tempalayを聴いた子がアーティストになって、より素晴らしい音楽を作るとか、そういう連鎖が生まれるとやっぱり嬉しいじゃないですか。そう考えると、広げることよりも大事なことが絶対にあって、そのためにももっと自分たちを深く追求して、曲を作っていくことが今はしたいんですよね。

ー自分たちが深く追求した作品を作ることで、聴き手のレベルを上げて、創作のいい循環を生む。それがまた自分の作品つくりのモチベーションにもなるでしょうしね。

藤本:自分たちを好きでいてくれる人をもうちょっと音楽の方にもってこさせたいというか、「サビになったら手を上げる」みたいな、音楽はそれだけじゃないんだよっていうのはやっぱり思うし、自分がインスタのストーリーで海外の音楽を紹介しても圧倒的に反応が薄いというか、友達のバンドと仲良くしてる写真とかの方が反応が多くて。もちろんそれはそれでいいんだけど、でもやっぱりお客さんと好きな音楽で「これいいですよね!」ってなれたら最高だなって思う。今はまだ自分の好きな海外アーティストの来日公演にいるような人たちはTempalayのライブに来てない感覚があるので、そういう人たちにもちゃんと響かせたいなっていうのがありますね。


Tempalay(Photo by Mitsuru Nishimura)


『(((ika)))』
Tempalay
ワーナーミュージック・ジャパン / unBORDE
発売中
配信リンク:
https://tempalay.lnk.to/ika_Album

Tempalay Tour2024 “((ika))"
5/17(金)東京・Zepp Haneda
5/24(金)北海道・Zepp Sapporo
5/26(日)宮城・仙台PIT
5/29(水)愛知・名古屋Zepp nagoya
5/31(金)福岡・Zepp Fukuoka
6/1(土)広島・ブルーライブ
6/9(日)新潟・LOTS

惑星X
10/3(木)東京・日本武道館

https://tempalay.jp/

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