横山健とKen Yokoyama、20年の流れを振り返る
ーなるほど。Ken Yokoyamaがスタートしてもうすぐ20年が経ちますけど、自分のスケジュール帳を見たら20年前のちょうど今日(取材日)から1stアルバム『The Cost of My Freedom』の取材が始まってました。
KEN 本当? そうか……。
ーレコーディング自体は2013年10月には終わっていて。
KEN そっかそっか、その年の1月と10月にレコーディングするっていうけっこういびつなスケジュールだったんだよね。アコギの曲を先に録って、10月にバンドとつくった曲を録って。
ーあの頃はこの先どうなるかわからないと思ってましたけど、今やKen YokoyamaとしてSNUFFと同じくらいの数の作品を出して、Hi-STANDARDと並ぶくらいの活動歴になっていて。この20年の流れについてどう感じますか?
KEN うーん、そうだなあ……。
ーKen Yokoyamaって特殊じゃないですか。バンドメンバーはよく変わるけど、そこに横山さんがいる限り解散というものはないわけで。
KEN それはわからないよ? もし俺が辞めるって言ってもほかの3人でKen Yokoyamaを続ける選択肢はあるわけで。
Jun-Gray 1カ月前ぐらいにその話はしたんだよ。健が「俺がいなくなったらどうなると思う?」って。うちら3人とも「終わりだよ!」って言ったんだけど。
ーそんな話をしたんですか(笑)。
KEN 俺ひとりがこのバンドを辞めて3人がKen Yokoyamaって名乗って続けていくとしても俺に止める権利はないね(笑)。まあ、そのときは軽い冗談で話したけど、本当にそういう気持ちだな。Ken Yokoyamaっていうのは俺個人の名前じゃなくてバンドの名前なんだっていう。街歩いてるとお客さんから声かけられるじゃない? そこで「Ken Yokoyamaさんですか?」って言われたら食い気味に「横山健だけど?」って言うからね(笑)。
ーあっはっは!
KEN 「Ken Yokoyamaっていうのはバンドの名前なんだよ」って……まあ、さっきの質問に戻るけど、この20年がどうだったかって、単純に「こうだった」って回答はできないな。
ーなぜできないんでしょうね。
KEN いろんな気持ちがあるからだろうね。パッと思いつくだけで3つくらいの気持ちがあるんだけど……1つ目としては、すごく充実してた。ずっと作品を出し続けてるし、ライブも続けてるし、すごく楽しい20年間だったな。自分に嘘をつかない活動ができてる。2つ目は、もうちょっとデカくなってたかったなって思う。なんでかっていうと、別に人気がどうとか、金がどうとかっていう問題じゃなくて、俺たち……ってか、俺がいろいろ悩んでさ。
ーそれはどういう悩みですか?
KEN 今の音楽の聴かれ方……アルバムの価値が昔ほどじゃなくなったと思っていろいろ悩んでしまったり。今の自分たちの立ち位置を客観的に見ると悩まざるを得ないポジションでさ。これがもっとでかいバンドだったら別にそんなことどうだっていいんだよね。
ーああ、たしかに。
KEN 具体的にどのバンドぐらいとは言えないけど、でかいバンドだったら「みんな、好きなように聴くっしょ」って余裕で構えてられるし、そもそも「前線に留まるためには」って考えること自体がすでに自分たちの今置かれてる立場を表してしまってるわけよ。だから、もうちょっとバンドがデカくなってて、こんなことでいちいち悩んでいたくなかったなっていうのはある。でも、そこを見て見ぬふりをすると落ちていくだけだから。
ーそれはそうですね。3つ目は?
KEN もうひとつ考えられるのはハイスタとの戦い。人からは比べられるし、やってる側としては意識するし。
ーハイスタはデカいですね。
KEN そう、さっき話したけど、ハイスタぐらいの大きさになると自分たちの音楽がどうやって聴かれてるかなんて考えないんだよ。
ーそう考える自分も横山さんの中にいるんですね。
KEN これはにわかに信じてもらえないんだけど、自分の中にHi-STANDARDの横山健とKen Yokoyamaの横山健がいて、ハイスタの横山健っていうのはすごく泰然としてるんだよね。で、Ken Yokoyamaの横山健はそいつのことを羨ましがってんの。同じ人間でありながらライバル視してるというかさ。
ーKen Yokoyamaはスタートも特殊だったし、2011年にハイスタが再始動したことでまた思いもしなかった形で特殊な状態になっていって。
KEN それってつまり、横山健は特殊な人間ってことなんだよね……。
ーまあ、横山さんは元から特殊ですよ、よくも悪くも。
KEN よくも悪くも!(笑)まあね。