クイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジが語る、日本での異邦人感覚、音楽で「遊ぶ」ことの本質

自己探求のツールから唯一無二の存在に

ー前作の『Villains』ではプロデューサーにマーク・ロンソンを迎えて、ダンサブルなサウンドになりましたが、今回はセルフ・プロデュースですよね。あのダークでブルータルなサウンドにするには、自分たちでやる必要があったのでしょうか? 

マーク・ロンソンと仕事をした時は、ずっと「ダンス」というワードを言い続けてたんだ。それはジョークでもあるし、マントラでもあって。自分たちの考え方を決めるためにマントラにしたんだ。今回の曲は前作と比べてダンサブルでもグルーヴィでもなくなったから、マークを呼んでさらにダンサブルなものを作りたいとは思わなかったね。俺もメンバーも個人的な経験をいろいろ乗り越えてきたし、自分たちのことは自分たちでしか扱えないってわかってる。しかも自分に起こったことを詳しく話しすぎると、とても耐えられないことになってしまう。だから、プロデューサーに向けて、世界に向けて、詳しく話しすぎると、見失うことだってあるし、どんどんソフトなものになってしまうんだ。デモの段階ですでにストーリーは語られてるわけだから、その曲をもう一度録り直すとなると、ソフトにするのか、よりエキサイティングなものにするのか、もっと水で薄めたものにするのかってなるよね。でも、アイデアの中にはすぐに形にするのがベストなものもあるんだ。一発で形にして、誰のフィルターも通さないこと。とにかく一発で形にしたかったんだ。できる限りパワフルでダーティでぶっ壊れたものにしたかったんだ。音楽というものは何かを語るよね。それが馬鹿げたことであっても、何か重要なことを語ってる。音楽における最大の間違いは、どこかに収まろうとすること、誰か他の人のふりをすることだと思うんだ。もし俺が重要な声明を出す時に、変に気に入ってもらおうと思って出したら、間違いを犯すことになる。俺は俺らしいやり方で出さなきゃいけないんだ。



ー今回、音楽は先に出来ていたけれど、歌と歌詞には時間がかかったそうですね。

どんな曲においてもメロディは一番大切なものだから。リフとか歌詞以上にメロディなんだよ。メロディが良くなかったら、もうそれ以上追求する意味がなくなる。レコーディングで歌う時、歌詞もメロディもすでにあったけど、曲にきちんとフィットするのかどうかが重要だった。そこは非常に複雑になっていたからね。例えば、楽しく過ごした時って、言いたいことはたくさん出てくるよね。自分に起こった良いことを話すし、相手に起こった良いことも話せる。だけど良くないことが起こったら、あまり話すことは出てこないものだ。話すのが辛い時だってあるし、ちょっと抑え気味に話すことだってあるし、抑えないでそのまま話したくなることだってある。苦しいことを経験した時は、言いたいことは一つしかないんだ。それ以外に何を言っても、自分ではそれが正しいとは思えない。だから、自分が正しいと思えるようになるまで、時間が必要だったんだ。

ー12歳の時からバンドをやっていますが、自分と音楽の関係は変わりました?

初期の頃、音楽は自己探求のツールだった。音楽を武器だと思ってたし、枕や毛布のようなものだと思ってた。自分がどうにでもできる、自分のものだと思ってたし、自分に何かをしてくれるものだと思ってた。それが年月を重ねていくうちに、何でも共有できるパートナーのような存在になってきたんだ。自分を見失った時は助けを求めるし、解決を求める存在になったんだ。さらに年を重ねると、自分が唯一正直になれる存在になった。唯一告白ができる存在になったんだ。だから、俺を理解してくれる唯一の存在なんだよ。俺が一度も嘘をついたことのない唯一の相手だし、他の人から見られないように鍵をかけておく唯一のものだし、俺が理解できないことを説明してくれる唯一のものなんだ。自分が大切にしてるものをこんな風に形作れたのは面白いと思うし、それが上手くいったことも面白いと思うんだ。俺が言う「上手くいった」というのは、みんなが買ってくれるという意味じゃなく、自分のためになったという意味だ。


Photo by Andreas Neumann

ー『In Times New Roman…』を聴くと、自分もいろいろ乗り越えてきたことを思い出したし、いろんな感情が湧いてきたけど、最終的には今ここに生きていることが重要なんだなと思えました。

俺自身は他人が何を感じ取ろうと関係ないし、そこに立ち入るのは傲慢なことだと思うけど、そこで生まれた感情はリアルだと思うんだ。時々思うんだけど、俺とかバンドのことを知らないまま、人々が俺たちの音楽を聴いて、「これは何なんだ?」ってなってくれたらいいなと思ってて。俺は何も知らない人に聴いてもらいたいんだよね。俺自身、音楽をやりながらも、何も知らない人になりたいと思うから。俺は誰かの情熱とかアートを、その人のことを知らないまま感じたいと思ってる。音楽はその人のスペースを形作るものだし、その人以上にクールなものにもなり得るから。

ーおそらく今度の来日公演に来る人たちは、2002年の初来日で喰らったファンもいれば、最近ファンになった若い人たちもいると思います。それこそロック・ミュージック・ファンもいれば、パンク、オルタナティブ好きもいて……。

俺たちはそのどれでもないね。俺は今までなるべくそういうジャンルの外にいようとしてたくらいで。よくあるのは、「俺はもう最悪だ。誰かのシナリオの中に入らなきゃ。そこで誰かに会えるかもしれない」ってなることだ。誰かのシナリオの中に入るのは簡単なことだからね。12歳、18歳、29歳、42歳、60歳……。俺たちのライブの客の年齢層はそんな感じだ。アイスクリーム・パーラーに行くと、アイスクリームはいろいろあるけど、基本の味は一つしかないよね。俺はそんな風になりたいんだ。俺たちのお客さんにもそうなってほしい。だから俺には選択肢がないし、いろんなものの外を走り回ってる感じなんだ。

ー前にイギー・ポップに大きなインスピレーションをもらったと話していましたよね。年を重ねていくということに関して、イギーから得たものはありますか?

俺が彼に惹かれるのは、どの年齢の時も彼が素晴らしくやれてところなんだよね。あれだけ自分のことを理解できてる76歳は他にはいないよ。世界における自分のポジションを理解してるし、自分が何者なのか、他人が自分をどう見てるのかをちゃんと理解してるんだ。その年齢らしく自分らしく生きてる人を見てるだけで、俺はインスピレーションをもらえるよ。彼は自分自身に満足してるからね。この先自分がどんな目的地を設定しようと、自分自身に満足できてなきゃいけないと思うんだ。まあそれこそが最高の目的地になるんだろうけど(笑)。だから、どこに行こうが関係ないんだ。まずは自分に満足できなきゃ。そうすればどこに導かれようと大丈夫だから。




Photo by Andreas Neumann

<INFORMATION>

Queens of the Stone Age
最新アルバム『In Times New Roman…』
https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=13404

Queens Of The Stone Age 来日公演情報

大阪:2月5日(月)Zepp Namba Osaka
OPEN 18:00 / START 19:00 
TICKETS 1Fスタンディング¥9,000/2F指定席¥12,000(各税込/1ドリンク代別途必要)
<問>キョードーインフォメーション:0570-200-888

 東京:2月7日(水)Tokyo Dome City Hall
OPEN 18:00 / START 19:00
TICKETS アリーナスタンディング¥9,000/バルコニー指定席¥12,000(各税込/1ドリンク代別途必要)
<問>クリエイティブマン:03-3499-6669

チケット発売中!
公演ウェブサイト:
https://www.creativeman.co.jp/event/queens-of-the-stone-age24/

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