クイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジが語る、日本での異邦人感覚、音楽で「遊ぶ」ことの本質

ゲームセンターにあるアイスクリーム・パーラーみたいなもの

ー今回の来日は、セットリストを含めて、どのようなライブになりますか?

セットリストに関しては、全く気にしてないね。前のライブと違うものにするという以外には。曲はたっぷりあるから、どんな曲も好きなようにプレイできるんだ。毎回、毎回、スペシャルな日になるようにライブをやるだけだから。

ー去年の12月にLAのKia Forumでやったセットリストを見ると、1曲目が「No One Knows」で、アンコールのラスト曲が「A Song for the Dead」でした。この辺はやはり鉄板なんですね。

毎回「No One Knows」をプレイするのは自分でもわかってるんだ。大好きな曲でもあるし。それに、みんなが知ってる好きな曲をやるのに抵抗はない。でも、「No One Knows」をプレイするたびに、みんなの知らない曲をやりたくなってくる(笑)。みんなの知ってる曲がたくさんある中、カードを切るような感じで、Spoitifyで聴いたことのない曲をやりたくなるんだよね。今回の日本は2公演あるけれど、両方観たらその意味がわかると思うよ。





ーそのKia Forumでは、最新アルバム『In Times New Roman…』からの曲も何曲かやりましたよね。その中の「Paper Machete」はオーディエンスのリクエストでしたね。

新曲を求められるのはうれしいよ。求められてないものをやるのは気が引けるから。いつもライブでは新作からの曲を5~6曲プレイするんだ。だけどあまり長くプレイしようとは思わない。2時間半も黙って座って観てるようなライブはやりたくないんだ。いろいろやってくれる、何でもありのライブの方が楽しいからね。



ー昨年、End Is Nero Tourを発表した時に、このツアーはみんなで世界の終わりを祝うもので、猥褻なものとクリーンなもの、アウトサイダーと変人たち、そしてその間にいるみなさんに参加してほしい、ここがあなたの居場所だから、と招待を呼びかけましたよね。今回の日本公演で日本人を招待する時は、どのような言葉で招待したいですか?

こういう言葉になるかな。「今回私たちがお届けするものはどんなものよりも価値があるものです。私たちが提供するのは現実逃避であり、明かりを消して、音楽をかけるので、そこでは言いたいことを言っていいし、自分らしくいてくれればいいんです」。これはゲームセンターにあるアイスクリーム・パーラーみたいなものだ。俺が提供するのは現実逃避だし、ストレスなんてなしだし、何をすべきかなんて言わない。そんなことよりも、美味しいものを食べてほしいし、楽しく飲んでほしいし、いいセックスをしてほしい。それ以外に俺が提供するものなんてないから。



ー最新アルバム『In Times New Roman…』では、自身の最も素直でリアルな部分、とりわけダークで傷つきやすい部分をさらけ出していますよね。自分の感情、考えをどのように音楽として形にしていきましたか?

音楽に関して言えば、俺はアイデアをいろいろ考えて、それをこねくり回すのが好きなんだ。「Sicily」という曲があるんだけど、ビッグ・コーラスに入るところこそが俺が聴きたかったもので、そこに向けてのアレンジを考えたわけだ。「Emotion Sickness」という曲だと、アレンジが非常に奇妙で、ヴァース、コーラスという構成でもなく、小さなヴァースがたくさん出てくる感じだ。そういうのを集めて錠剤を作るんだけど、なかなか呑み込めなかったりする。理解しなきゃいけないのは、どのようにポップ・ミュージックが作られ、どうそれで遊べるのかということだ。俺がポップ・ミュージックで遊びたいのは、ダークで言いにくいことを言いたいからだし、呑み込むのは大変でも楽しめる音楽をやりたいからなんだ。というのも、俺は自分がポップ・ミュージックだと思ってるものを、あちこちいじくり回してるからなんだ。ポップ・ミュージックというのは、ビッグ・コーラスがあって、ヴァースがあって、わかりやすいものだよね。俺はポップ・ミュージックの骨組みからこねくり回して、音楽的にもテーマ的にも奇妙なものにして、それでもちゃんと呑み込みやすいものをやりたいんだ。





ー確かに、『In Times New Roman…』は何層にも重なったサウンドのレイヤーが楽しめるし、ダークでブルータルなサウンドだけど、どこか聴きやすさもありますね。

どの曲もフックをいろいろ作れたのが良かったと思うよ。うちのバンドにはギタリストが三人もいるし、ギタリストがキーボードも弾くし、ラップ・スチール・ギターも弾くからね。オプションはたくさんあるんだ。メンバーも多いから、一番難しいのはシンプルにやることだったりする。だから、シンプルなものをやるために、いろんなことをやって重ねていくんだ。それでわかりやすく作ったフックをさらにダークで複雑なものにする。それでシンガロングするんだけど、「ベイビー、俺のことなんて気にするな/彼女を手放さなければならなかった」なんて歌うのは辛いことで、決して楽しいものじゃない。だけどそこにはメロディがあるから、甘いものと塩辛いものがミックスしてるような感じだよ。フックとメロディはアゲアゲだけど、歌と歌詞は全然アゲアゲじゃない。でもそれが同居してるからこそ、独特の音のフレイバーが生まれるんだ。多くのポップ・ミュージックは、ミュージシャンがつまらなそうにプレイしてるけど、それってボーカルに注目させるためにやってたりする。それでボーカルは同じことを繰り返し繰り返し歌うから、聴いてる方は耳にこびりついてしまうんだ。俺たちはミュージシャンも面白いものをプレイして、サウンドも楽しめるようにしてる。何度も繰り返すフックもダークにしてるから、変態的なポップ・ミュージックになるんだ。俺はそういうアイデアが好きだし、変態になって、ぶっ壊れて、共謀を計って、全く違う純粋なポップ・ミュージックを作りたいんだよ。


Photo by Andreas Neumann


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