エル・デスペラードが語る、自由なパンク精神とプロレス観の源流

コロナ禍でいちばん自由にプロレスをやっていたのは僕と鷹木(信悟)選手

―正直、凱旋帰国したときのデスペさんと現在のデスペさんって全く違うレスラーに見えていて。特にコロナ禍以降、レスラーとして色気と求心力を纏い始めたなと思っているですが。

僕は、人からものを言われるのが大嫌いで。試合中に名前を言われるのはいいですけど、あれやれ、これやれと言われるとすぐキレちゃうんです。「てめえに何が分かるんだ」という風になってしまうから、歓声がない状態というのは僕にとってすごく自由だった。お客さんが声を出せない状態だから僕が喋ったことが全員に聞こえる。だからコロナ禍でいちばん自由にプロレスをやっていたのは僕と鷹木(信悟)選手ですよ。

―面白い。それがすごくいいタイミングだった。

もちろんコロナはない方が良かったけど、あったおかげで僕は自由になれました。

―でも、ここまで人って変わるのかと。

それは人の見る目が変わったんですよ。僕はもちろん、常にプロレスのことを考えているので知らないうちに必要なものと不必要なものを取捨選択してシンプルになっているはずなので。凱旋した当初は、「マスクマンで喋るな」と言われたくらいだったし、その一言が影響して、トライ&エラーをする中で何をすればいいか分からなくなっていた。やっても失敗する、そこからやらなくなる、出来なくなる、でもやらないと、もうダメだというのが当時です。それが最初の半年間。俺は、鈴木軍に入りたくてメキシコから帰ってきたんだもん。だから、「鈴木軍に入りたい」とリングの下から言ったとき、あれが凱旋して初めて本音を言えた瞬間、そこから自分は自由になれたと思いますね。

―明確な思いがあっての凱旋だったんですね。

そうですね。当時、自分に目をかけてくれた本隊の選手には本当に申し訳ないですけど、最初の半年間は本当に嫌でした。自分は強くなるために鈴木みのるがいる鈴木軍に入りたかった。

―これから例えば、入場曲なども含めて、音楽と何か一緒にやってみたいことはありますか? いちファン目線だと簡単に言えることではないけど、デスペさんプロデュースでバンドとプロレスの試合がミックスされたような興行は見てみたいです。

Zeppの会場の真ん中にリングを置いて、入場曲はバンド生演奏とかだったら面白いですね。

―今のデスペさんなら、実現しそうです。

こういう系は、佐藤光留さんが強いんだよな。佐藤さんのパワーに頼って、もしかしたら川崎球場あたりでやるかもしれないですね(笑)。

―デスペフェス期待しています。ぜひ、デスマッチもありで。

面白そうですね。



―では、最後に1.4東京ドーム大会について、現状で抱かれている感情やどのようなプロレスを魅せたいか、考えていることはありますか?

この間、目の手術をしていまだに顎を引くと右目と左目がずれるんですけど、12月末の最後の後楽園2連戦で感覚が掴めたらいいものが見せられるだろう、多分大丈夫だろうと思いますね。これはドームの前に水をさすなと怒られそうですけど、僕は意外とどこでやるということに固執してないので、ヒロムが公言しているジュニアのベルトを巻いたままヘビーのベルトを巻いて、東京ドームのメインで、ゴールデンタイムの地上波で試合する、という乗せれるものは全て乗せましたという夢があると思うんですけど、そうなると僕は天邪鬼だから、逆張りをしたくなって、千葉の山奥の誰も来れないところでやってやるという、そういうのがやりたくなっちゃうんです。それをパンクというのはちょっと違うと思うんだけど、僕なりのパンクというか。正直、対戦相手とリングがあって、見てくれる人が楽しんでくれるんだったらそれだけで僕は完結するので。いま自分が持っているものは全部出しますけど、多分ヒロムが前に立つといまの僕じゃなく、3週間後の自分にまた何かが生まれて勝つのであればその特別な何かが試合に出るだろうなと。もし負けるんだったらそれがでないときかなと思います。

―ベルトを戴冠した後の展望はありますか?

持ってない段階で今年は超刺激的に動けていたけど、ヘビー級にできないことはやりたいですよね。会社はジュニアを蔑ろにしていると思っているけど。なんでしょうね、ヘビー級よりジュニアの方が面白いよねと言わせたら俺たちの勝ちなので。それを魅せるだけじゃないですか。その辺でいうと、その感覚を持っているジュニアの選手はみんなパンクですよね。

―パンクスが増えて欲しいですね。異なるパンクイズムを持っている選手が増えてほしい。

なんとなく、今ある新日本ジュニアという世界があってその中で1位を決めるのは当たり前の話であって、外を見てないやつはまだ人を集めることはできない。多分ヒロムがやっていることと僕がやっていることの根本は一緒で、プロレスを観たことのない人に広めたいという思いしかないので。ここで自分が聴いてきたパンクに戻ってきたのかなと思います。

―同じ時代に月と太陽のような2人が異なるアプローチでジュニアを世界に届けようとしているのが面白い。

同日入門ですから。いつか2人でやるとしたら、アレだろうな……。3WAYだと死んじゃうから、葛西純・竹田誠志組VS高橋ヒロム・エル・デスペラード組だったら組んでやる。もう一人だけ試合を組む相手がいるとしたら、高橋ヒロム・エル・デスペラード組VSバッドラック・ファレのハンディーキャップマッチですね。あいつだけが同期ですから。まあ、どっちか死ぬだろうな(笑)。

Edit by Shunsuke Sasatani

<INFORMATION>



『ベルク Presents WRESTLE KINGDOM 18』
https://wrestlekingdom.njpw.co.jp/
日時:2024年1月4日(木) 14:45開場 16:30開始
会場:東京ドーム
毎年恒例“イッテンヨン”がまもなく開催! エル・デスペラードは、IWGPジュニアヘビー級チャンピオンの高橋ヒロムとタイトルマッチを行う。

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