エル・デスペラードが語る、自由なパンク精神とプロレス観の源流

プロレスを観るのが好きすぎる人はプロレスラーにはならない

―パンク好きというのは、きっと元を辿ると「TRAIN-TRAIN」が影響していると思いますけど、そこから能動的にハマっていくのはいつ頃?

ここから一気に高校まで飛びますね。当時やっとMDが手に入るようになって、後輩から借りたDragon Ashを聴いてましたね。あの、全員が警察官の格好をしてパトカーが写ってるジャケットの……、『Buzz Songs』だ! 大好きなアルバムですね。当時12月の寒い日に部活のあと一人でウェイトトレーニングをしていたんですけど、『Buzz Songs』って最後にボーナストラックが入っているじゃないですか。それに気づかず流しながら練習をしていたんですけど、突然人の会話が聞こえて、心霊現象だと思ってめっちゃ驚いた思い出があります(笑)。



―確かにありましたね、ボーナストラック! でも、Dragon Ashはロック、パンク、ヒップホップを全部持っているようなバンドですね。ああいうミクスチャー感に惹かれたですか?

何でもありなのが好きなのかもしれないです。

―では、Dragon Ashは青春時代のサウンドトラック的な存在なんですね。

そうですね。『Buzz Songs』はめちゃくちゃ印象に残っています。あとは、当時同じタイミングで聴いてたと思うんですけど、Hi-STANDARDとNICOTINEも聴いていました。

―自分の中でその2バンドが自分に刺さったのはなぜだったんでしょう。

うーん、もうちょっと音楽にちゃんと詳しければ、分析できるのかもしれないけど、単純に好きというか。上がるかどうかっていうのが大きいですね。

―そこから、BRAHMANを聴き始めたり?

いや、そこから大学に行ってメタル期が訪れるんですよ。SEX MACHINEGUNSばっかり聴いてて。

―それは周りで流行っていた?

いや、全くですね。1回テレビか何かでSEX MACHINEGUNSを観たのは天山(広吉)さんが「世直しGOOD VIBRATION」のMVに出ていて。天山さんがメンバーに電気あんましていた映像ですね。



―天山選手がMVに!? ではその頃からプロレスもお好きだった?

ぶっちゃけ、保育園のときには絶対プロレスラーになると思っていて。それ以降、頻繁に観に行ったかと言われると僕は観に行ってないんですよ。なりたいものであって、観たいものではないという。不思議な感覚というか。

―ヒロムさんにインタビューした際にも同じようなことをおっしゃっていました。

プロレスラーになった人はみんな同じような感覚があるんじゃないですかね? プロレスを観るのが好きすぎる人はプロレスラーにはならないんですよ。僕が知っている周りの人、鈴木(みのる)さんもそうですし。あの方はなると決めたときにファンだったときのものを全部捨てたと言ってましたから。

―なるほど。要はアントニオ猪木さんも殴る相手になるということですもんね。

そういうことですね。僕はいま新日本プロレスに入ってはいるんですけど、入るんだったらそのときいちばんでかい名前じゃないと嫌だなというのがあっただけで、新日本プロレスファンだった時期はほぼないので。

―ちなみにどこのファンだったんですか?

FMWのファンでした。

―なるほど。そこでデスマッチと繋がってくる。

そうかもしれないですね。でも後期FMWだからエンターテインメントの方で冬木(弘道)さん体制のころ。その何でもあり感がすごく好きなんですよね。サンダーボルトデスマッチもあったからデスマッチもやっていたし、田中将斗さんとかも出てたくらいですからね。そういうことを考えると1個を突き詰めるというよりは、すごく面白いものを全部やってしまおうという方が好きなのかもしれないです。

―音楽の聴き方にも繋がってきそうですね。

だと思います。欲張りなので。


Photo by Mitsuru Nishimura

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