Dirty Hit新世代 ​​Pretty Sickが語るグランジ、日本の音楽、ファッションからの刺激

サブリナ・フエンテス(Photo by Kana Tarumi)

 
昨年、Dirty Hitからのデビューアルバム『Makes Me Sick Makes Me Smile』をリリースしたプリティ・シック(​​Pretty Sick)。バンドを率いる中心人物のサブリナ・フエンテス(Sabrina Fuentes)は10代前半の頃からモデルとしても活動し、ファッションの世界と繋がりながら、NYのインディ・ロックシーンでその名を轟かせてきた(現在は活動の拠点をロンドンに移している)。親友だというディレクター/アーティストのマノン・マカサエットはじめ、彼女の交友関係は広く、その相関図を見ていくことで現在のインディペンデントな音楽シーンの様子が浮かび上がってもくる。

今回、X-girlの撮影で日本を訪れたというサブリナが、プリティ・シックとして下北沢BASEMENTBARにてフリーライブを敢行。Luby Sparksの出演とともに嬉しいサプライズとなった翌日、サブリナにインタビューを実施した。聞いてはいたものの、想像を超える日本フリークに驚くばかり。「日本は2018年に初めて来て以来、毎年足を運んでる」「日本語のサウンドってすごく綺麗で、独特なリズムのフローを作るよね」と語る、彼女のフレッシュな感性をお届けする。(質問作成:つやちゃん/インタビュー:小熊俊哉)

※読者プレゼント実施中、詳細は記事末尾にて

【写真ギャラリー】​​Pretty Sick サブリナ・フエンテス撮り下ろし(全13点)


Photo by Kana Tarumi

―よろしくお願いします。

サブリナ:(インタビュアーの着ていたスピーディー・ワンダーグラウンドのTシャツを見て)あなたのTシャツいいね! 私の友達のレーベルだよ。

―そうなんですか?

サブリナ:ええ、友達と(ダン・)キャリーが運営してるレーベル。

―ロンドンで活動するようになって、しばらく経つと思いますが――。

サブリナ:もうすぐ6年かな。

―どういった方と仲が良いんですか?

サブリナ:ヴィジ(Viji)は仲良しだよ。彼女のバンドもスピーディー・ワンダーグラウンドに所属してて、Suzy Clueっていうんだ。あとはエレクトロニック・パンクとダンスミュージックをやってるbassvictim。それからxmalも仲良し。クールなエクスペリメンタル・ミュージックを作ってて、ポストパンクも好きな人たちだね。もちろん、ビーバドゥービーも。

―ロンドンに移って、何が良かったですか?

サブリナ:ミュージックシーンと、人との出会い! 街は大きすぎて、寒いし雨ばかりだけど、人と音楽は素晴らしい。ロンドンにはクールな人がたくさんいる。私が知っているロンドンの人たちは音楽への情熱に溢れてるんだよね。新しいことに興味を持って、積極的にトライする。要するに、失敗を恐れないってこと。ニューヨークは恥をかくことを恐れて、新しいことに挑戦する人が少ない気がしたかな。チャレンジ精神のある人がロンドンにはたくさんいる。




―ちなみに、ニューヨークにいた時はどういう人たちと繋がりがあったんでしょうか? 前任のドラマー(オースティン・ウィリアムソン)はOnyx Collectiveのメンバーだったそうですが、あのバンドはロックというよりジャズに近いのかなと。色んなシーンと繋がりがあったんですか?

サブリナ:オースティンの作る音楽は大好きだし、もちろんOnyx Collectiveも好き。そうだね……他にはWiki、Hello Mary、Clovis、それからTaranehにComet。Aspartameも好きだし……The Dare、Genesis Evansもかな。

―Wikiなど、ラッパーのアーティストとも繋がりがあるんですね。

サブリナ:ええ。ジャンル関係なく好きだから!




―ところで昨夜のライブ、素晴らしかったです。バンドの演奏もフロアの熱狂もクールだと思いました。プレイしてみていかがでしたか?

サブリナ:最高に楽しかった!もっと日本でライブしたいな。

―最後に披露された「Dumb」は名曲ですよね。

サブリナ:「Dumb」はマイ・ブラッディ・ヴァレンタイン、特に「You Made Me Realise」からインスピレーションを受けて作った。それからビョークも。その2組に強く影響されてできた曲なんだよね。歌詞は自分を見失い、迷いの渦の中にいる時期に書いたもので。どうやっても抜け出せないトラップの中にいるような感覚。まさに、どうしようもできない状況で生まれた詞だった。

―今おっしゃったようなフィーリングは、いつもどこからやってくるんですか?

サブリナ:幼い頃に感じた孤独だと思う。みんなのように、周りの人たちと打ち解けることが私にはできなくて。自分と同じような感覚を持っている人たちに出会うまで時間がかかったけど、今は自分の居場所を見つけられたと思う。



―曲作りは13歳から始めたんですよね。当時、何かきっかけがあったのでしょうか?

サブリナ:歌うことが好きだったから、音楽はずっと作りたいと思ってた。幼い頃、楽器のいらないボーカルだけの曲を自分で作ったりもしてたし。でも当時、私の周りには楽器を演奏できる人も音楽に興味がある人も、誰ひとり見当たらなかった。だから、まずは一緒に音楽をやる人を探そうと思って、現バンドメンバーでドラマーのエヴァ(・カウフマン)と出会ったんだ。それからずっと、一緒に音楽をやってる。

―自分の楽器としてベースを選んだのはなぜ?

サブリナ:実は好きでベースを選んだわけじゃないんだよね、本当はギターがやりたかった。あまり上手じゃなかったけど(笑)。サマーキャンプのギターレッスンに参加しようとしたら、申し込みのタイミングが遅くて、もう予約は埋まっちゃってたんだ。だから、代わりにベースを選んだ。今となっては良かったかも。ベースは好きだよ、ギターよりもはるかに簡単だし。私、本当にギターが下手なんだよね(笑)。


Photo by Kana Tarumi

―ちなみに、生まれて初めて作った曲はどんな感じでしたか?

サブリナ:(歌を口ずさむ)”Sweet love of mine, please be mine. I love you so. Sweet love of mine, all the birds in the sky. Why oh why, I love you so. Sweet love of mine.”ーーこんな感じだったかな。

―今より明るいメロディですね! どのタイミングで曲調が暗くなったのでしょう?

サブリナ:どうしてだろう(笑)! きっと大人になっていく中で痛みを知って、鬱々としたティーンになっちゃったのかも。

―ちなみに、ティーンの頃に憧れていたアーティストは?

サブリナ:グランジは好きだったな。王道のニルヴァーナにスマッシング・パンプキンズ。きっとサウンドに惹かれたんだと思う。すごくクールで衝撃だった。90年代のサウンドには、今でもノスタルジーを感じる。歌詞も好きだったしね。それから、シューゲイザー。マイ・ブラッディ・ヴァレンタインは好きだった。あと、ビョークは今でもずっと好き。エレクトロニックミュージックもよく聴いてた。

Translated by Miho Haraguchi, Natsumi Ueda

 
 
 
 

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