我儘ラキアが語るチームワークの流儀 ギャル・ラッパー・アイドル・アーティストの融合

我儘ラキア:左から海羽、星熊、L、MIRI

我儘ラキア(WAGAMAMARAKIA)を初めて観たのは、2022年のライブイベント『REDLINE ALL THE REVENGE』だった。ライブハウス・シーンの強者が揃った出演者の中で、バンドをバックに踊って歌う、オーディンスを鼓舞する熱いMC……「アイドル? バンド?」「しかもギャルとラッパーがいる」と脳がバグった。

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2016年、大阪で結成された我儘ラキアは、星熊南巫、海羽凜、L、MIRIの4人。バンドセットでのライブはもちろんのこと、全国のライブハウスを回る対バンイベントの共演者もアイドルではなくバンドの方が多かったり、2023年はなんとスリップノット主宰の『KNOTFEST JAPAN』のステージに立つなど、ロック系のイベントやフェスにこれまで多数出演。さらに作曲や作詞も自分たちでこなすから(星熊とMIRIはソロアーティストとしても活動中)、感覚的には「バンドやってる人たち」という目線で見てしまう。

そんな彼女たちにとって近々の大きなミッションが、11月23日に東京・Zepp Shinjukuで開催されるワンマンライブ『GAL SQUAD』だ。それと連動して、8月から4カ月連続リリースを敢行。8月の「IDOl」は世界観全開のラップにメンバー4人が挑戦した、ラキア流ハイパーポップといった趣の一曲。9月の「Vertex」はNOISMAKERのAG(Vo)とHIDE(Gt)プロデュースによる、スケール感のあるアンセミックな一曲。独自の路線でアイドル道を突き進む4人に初インタビュー。

—我儘ラキアって音楽性や精神性の部分では全然アイドルっぽくないけど、ライブでは「アイドルです」って毎回言うし、こないだのTIF(「TOKYO IDOL FESTIVAL」)にも出てたし、やっぱりアイドルっていう軸は大切にしてるんですか? だからこその「IDOl」という曲なのかなって思ったんですけど。

星熊:すっごい申し訳ないんですけど、アイドルを大切にするというより、今回は利用させていただいた感じなんです。この国におけるアイドルって、ちょっと弱いところがある子の方が応援されやすいって自分的には思っていて。でも世界のアイドルって自立していて、自分で曲が作れるし、それが当たり前というか。海外では「アイドルなのに」じゃなく、「アイドルって凄い」って尊敬される存在だと思うんです。だから新しい世界基準の「これがアイドルなんだよ」ってものを提示しようと思って「IDOl」ってタイトルをつけたんですよね。なので、日本のアイドル文化を大事にしようっていうよりは、マジで変えてやろうって心意気でこの曲を作りました。

L:私的には、アイドルって要素は大事なものの一つです。星熊も言ってたように、日本だとアイドルって「自分が支えなきゃ」って応援したくなる存在で、可愛らしいアイドルが定番になってるけど、自分の中のアイドルは完璧な存在なんですね。人それぞれアイドルの定義は違うけど、自分はラキアの中で、歌もダンスも完璧にこなしたいって気持ちがあります。「IDOl」って曲ができたとき、「自分の好きなものをギュっとこの曲に詰め込めばいいんだ」と思って。



—Lさんが思う「完璧なアイドル」とは?

L:もともと好きだった安室(奈美恵)ちゃんとか、海外だったらアリアナ・グランデとか。女性から見て憧れる、女帝みたいなイメージがある人。ステージでは完璧でいたいけど、自分の魅力でもある、大好きなギャルの部分も見せたい。「IDOl」の歌詞はMIRIが書いてくれたんですけど、ギャル要素も入ってるし、新しい自分を出せたと思います。

MIRI:Lの歌詞は、私の中のLのイメージで書きました。私たち、アイドルとして7年やってきてるのに自己紹介の曲がなかったし、1人ずつ前に出てくるような曲をやりたいねって前から話してたので、じゃあその子のキャラに合った歌詞を書こうってことで。Zepp公演(2022年12月の「KT Zepp Yokohama」単独ライブ)が終わった頃から、「IDOl」の構成は考えていて。「一人ひとりラップ調にして、歌というよりはリズムでノれる曲を作りたいよね」ってクマ(星熊)と話してました。

星熊:この半年、作曲面で外仕事をいろいろやってたんですけど、自分が普通の曲に飽きちゃったんです。Aメロ、Bメロ、サビ、Aメロ、Bメロ、サビ、みたいに展開が想像できる曲。もともとラキアと自分のソロで作る音楽は相容れないし、それぞれ分けるって話をしてたんですよ。でも逆にこのタイミングで自分の好きなタイプの曲、海外のヤバい女の子たちがやってるような音楽をラキアでやったら面白いかなって思いついて、前に出した「GR4VITY G4ME」(2022年4月発表)より、肩の力を抜いて作りました。実験的でもある。



—確かに、星熊さんのソロワークスと通じるところがありますよね。

星熊:ちょっと似てるかもですね。「もしかしたらわかってもらえないかもしれないから、ここまではやらないでおこう」って踏みとどまっていたラインを大きく越えて今回は行きました。挑戦しないと面白くないっていうか、でもこれぐらい振り切った方がメンバーも楽しいし、私たちが普段聴いてる音楽にも通じる要素があるし、テンション上がるなと思っていて。自分たち目線の流行ってる音楽を作った感じです。

—海羽さんのリリックは?

星熊:私が書きました。

—なかなか強烈ですけど、どういう風に書いていったんですか?

星熊:えっと……適当っす。

一同:(笑)。

星熊:自分から見た(海羽)凜ちゃんって、見た目も含めて「おしとやか」というよりは、ヤンキーとまでは行かないけど、もっとアート的な可愛さがあるのになって思ってるんです。普通に美しく歌うだけなのは飽きてきたし、一回ぶっ飛べばいいんじゃないかと思って、凜ちゃんのビジュアルに合ったリリックを書いて、声の出し方とかもアドバイスしました。

—ハングルのところも含めて?

星熊:ハングルの発音に関しては、凜ちゃんの方が知ってる感じだったので、お任せしました。

海羽:この歌詞を見たとき、ドーパミンみたいなのが出るくらい可愛い歌詞だなって。

星熊:すごい表現やな(笑)。私と凜ちゃんって一見感性合わなさそうなんですけど、好きな音楽が似てるところもあって。私が最近ソロで出した「新羅DARKPOP」って曲、あれって周りの日本人に最初全然理解してもらえなかったんですよ。関係者に「聴かせて」って言われて送ったら、返事が帰ってこんってことがめっちゃあって。でも、トラックメーカーの人や海外の人は「Oh my god!」ってウケたりしてたから、私ってやっぱ住む場所ここじゃないのかなと思いながら暮らしてて。で、そんなときに凜ちゃんがこの曲を「あれ可愛い」って言いだして、「え、ほんまに言ってる?」って聞いたら、「理解できないのが可愛い」って言われたんですね。そう思って作ったから、「この子わかってるんだ、怖い」と思って(笑)。みんなが想像している海羽凜とはちょっと違うけど、もっと深いところから引き出した可愛さを「IDOl」のリリックに込めました。



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