追悼シネイド・オコナー 不条理な世界と闘ってきたシンガーの必聴10曲

「All Apologies」(1994年)



1994年は誰もがカート・コバーンを悼んでいたかのようだった。その中には、コバーンが憧れていたニール・ヤング(アルバム『Sleeps With Angels』をコバーンに捧げた)やパティ・スミス(後に「Smells Like Teen Spirit」をカバー)の姿もあった。だがオコナーはコバーンの死からわずか数カ月後に「All Apologies」を全身全霊で歌い、一二を争う感動的なトリビュートソングを世に送り出した。彼女のバージョンはオリジナルよりもシンプルで、「塩の巣窟を見つけて/全部僕が悪いんだ」という歌詞の切なさを、ありえないほど繊細なボーカルで表現した。1994年にリリースされたアルバム『Universal Mother』に収録されたこのカバー曲は、彼女が手がけた別のアーティストのカバー曲に比べると影が薄いが、オコナーが亡くなった今、より一層胸にしみる。-A.M.

「Thank You for Hearing Me」(1994年)



オコナーのベストアルバム『Universal Mother』に収録され、ピーター・ガブリエルとの束の間の恋から着想を得たと言われる伸びやかなこの曲は、おそらくもっとも円満な別れを歌った曲といえるだろう。どのバースも同じ歌詞――「付き合ってくれてありがとう」「一緒にいてくれてありがとう」など――が繰り返され、さながら讃美歌のような印象を与える。そこへシネイドの穏やかな歌声が加わり、内省的で円熟した雰囲気が漂う。苦々しい思いは一切なし、感謝の気持ちにあふれた別離の曲だ。D.B.

「No Man’s Woman」(2000年)



怒り、それも抑圧されて怒りを吐き出すことはオコナーの得意分野。2000年にリリースされた『Faith and Courage』に収録されたこの曲で、彼女は正論をぶちまける。「私には他にやりたいことがある/こんなところまではるばるやって来たのは/つまらない男の女になるためじゃない」 だが美しいヒップホップ調から胸の内を吐露するコーラスに移ると、「No Man‘s Woman」はタガが外れた暴徒と化し、オコナーは困惑を乗り越えて音楽の中に美と解放を再び見出す。-D.B.

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from Rolling Stone US

Translated by Akiko Kato

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