プリンス『パープル・レイン』の衝撃「音楽について知っておくべきDNAを全て含んでいる」

プリンス(Photo by Sherry Rayn Barnett /Michael Ochs Archives/Getty Images)

ローリングストーン誌による「歴代最高のアルバム500選 | 2020年改訂版」の関連企画。今回は8位のプリンス『パープル・レイン』について。このアルバムを事前投票でトップに挙げたのは、ラン・ザ・ジュエルズのラッパー兼プロデューサーであるEL-P。彼に同作の衝撃を語ってもらった。




『パープル・レイン』は、僕が音楽について知る必要のあったすべてのDNAを含んでいる。ラップは入っていないけれど、それでもあの作品は自分の背中を押したすべての要素があわさったものだ。

9歳のときだった。あの映画の予告編を見た――映画自体は見せてもらえなかったけれど。でも、予告編には、彼がステージ上を駆け回り、指をなめ、乳首を触り、髪を整えるシーンが入っていた。それを見て、「これ、マジでなんなんだ」って思った。本当にそれが一体どういうことなのかわからなかった。あまりにわいせつだというので見せてもらえなかったけれど、母親を説得してアルバムは買ってもらえた。いわば抜け穴だ。だって、「Darling Nikki」を聴いた僕はこんな感じだった。「どうやらマスターベーションってなにかを知らないといけないみたいだな」(笑)。「なにが起こってるのかははっきりわからないけれど、この一部になりたい」って思ったよ。



プリンスには、大人になるってこういうことなんじゃないか、という僕の考えや、あるいは謎に訴えるところがあった。プリンスこそ、僕に成長したいと思わせてくれた人だった。そうすれば彼が話していることをわかるんじゃないかと思ったんだ。

あの作品はいわば、リンドラムにのった(ジミ・)ヘンドリックスのギターだ――ソウルであり、ロックであり、ファンクなんだけれども、でも同時に、それまで結びついたことのないやり方で結びついたものだった。プリンスにちょっかいを出す連中があらゆるジャンルにまたがっているのには理由がある。音楽には、再び作り出すことはできないけれど、別の方向に活用することができるアイデアというものがある。彼がやっていたことの断片を取り出して、そこからサウンド全体を築きあげることだってできるだろう。あのレコードのほんの一部分を土台に、全音楽人生をつくりあげることもできるかもしれない。

Translated by imdkm

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