知らないうちに原子爆弾開発に関わっていた、若き女性たちの真実 米

第2次世界大戦まっただ中の1944年、マンハッタンプロジェクトの一環でオークリッジのY-12工場でカルトロンを操作する作業員(GALERIE BILDERWELT/GETTY IMAGES)

ローズマリー・レーンさんは上司からオフィスに呼ばれた。大事な話だと言われ、若い看護士は何の疑いもなく医師の後をついていった。オフィスでは病院スタッフ数人がラジオの前に集まって、トゥルーマン大統領の国民演説に耳を傾けていた。現在進行中の戦争で驚くべき進展があり、これですべてが終わるだろうと誰もが感じた。最新兵器が日本で実戦使用されたのだ。

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ローズマリーさんはトゥルーマン大統領が爆発の威力を語るのを聞いた。「複数の実験室での戦い」と「科学の英知による功績」が爆弾を完成させ、無数の国民が知らず知らずのうちにこの計画に手を貸していた、と。さらに大統領は、陸軍長官が間もなく声明を発表して「テキサス州ノックスビル近郊のオークリッジ、ワシントン州パスコ近郊のリッチランド、ニューメキシコ州サンタフェ近郊の某所に関する事実を明らかにする」と続けた。

ある地名がローズマリーさんの注意を引いた。彼女の出身地、オークリッジだ。噂はたちまち口コミやメディアで彼の地にも広まり、企業や一般家庭に重大発表の衝撃が走った。ついに秘密が公表された。その秘密――原子爆弾の開発――は、警備されたオークリッジの門の外にいる人間だけでなく、今では「マンハッタンプロジェクト」として知られる計画で重要な役割を果たしていた数万人の人々にも知らされていなかった。

あれから78年経った今、クリストファー・ノーラン監督の映画『オッペンハイマー』をきっかけに、多くの人々がまずは上層部の興味深い視点からマンハッタンプロジェクトを初めて知ることになるだろう。物理学者や化学者、頭脳明晰な人々や軍上層部。いずれも秘密を「知っていた」人々だ。だが理論を現実にする手助けをした女性作業員たちがいなかったら、そうした人々の努力も実を結んでいなかっただろう。

アメリカ男性はみな戦場に送られたため、驚くほど大勢の女性たちが、様々な職務に駆り出された。オークリッジでは老いも若きも男女問わず動員され、戦争の在り方、医学、国際政治、環境を永遠に変えることになる兵器の開発で重要パートを任された。作業員の大半は広島の実戦で原爆が投下されるまで、自分たちが歴史的出来事に果たした役割を全く知らなかった。彼らが爆弾の開発と製造を決めたわけではないが、彼らはその選択と顛末から永遠に離れられなくなった。その多くが女性たちだった。ほとんどがまだ10代だった。




Akiko Kato

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