でんぱ組.incが語る世界観、アキバカルチャーの果て

寄り添われるよりタイマンで

ーどれも最高な曲ばかりだと思うんですけど、ギターウルフが演奏に参加した「でんぱでぱーちゃー」。この曲、もはやコラボレーションに近いですよね。

相沢 今回のEPは、全体がでんぱ組らしくまとまってるところに「でんぱでぱーちゃー」でギターウルフさんが入ってくれたことで、私たちだけじゃ作れなかった歪みみたいなものが加わってよかったと思います。甘口ばっかりじゃないEPにできたなって思いました。こんなにやってくださるなんて思ってなかったんで、びっくりしましたけど。

藤咲 セイジさんの叫びも入ってるし、本当に早くコラボしたい!



ー皆さんが歌入れする時はもうあの状態だったんですか?

相沢 いや、歌入れの時はまだ何も。完成したものを聴いたら……。

藤咲 なんか、別物でした(笑)。

相沢 「デンパデパーチャー!!!! ロッケンロー!!!!」って。

藤咲 一瞬、間違えたかなって(笑)。

相沢 笑っちゃった。

小鳩 最高です!

相沢 でんぱ組.incって寄り添われるよりは、無茶苦茶にされたり退治されたり、VS.みたいな感じでやってもらった方が合うグループだなって、私は勝手に思ってて。ギターウルフさんもでんぱを半分おもちゃみたいに、でもしっかりタイマンしてやってくださったのがめちゃくちゃカッコよくてうれしかったです。こんなに向き合ってくれるんだって思いました。

ータヒチ80作曲・ヒャダイン作詞の「THE LAST DEMPASTARS」は逆に甘口ですよね。

藤咲 “P P M Y M L”っていうのが、昔でんぱに在籍してくれてた子たちのカラーのイニシャルなんです。

相沢 ピンク、パープル、ミントグリーン、イエロー、ライトグリーン。そういうところはやっぱりヒャダインさんですね。ヒャダインさんはでんぱの初期から関わってくださってるので、「今のでんぱ組.incってこうなんじゃない?」って、もふくちゃんや周りの人たちと話してくださってます。でんぱ組.incが今行けそうな場所とか向かうべき場所の方向性を、歌詞とか曲で背中を押してくれるのがヒャダインさんだなって思う。

藤咲 畑亜貴さんも「でんぱでぱーちゃー」の歌詞で私たちの未来のことを書いてくれるから、こうやって前から知ってくれている2人が参加してくれてるのが、すごく頼もしいです。



ー曲調も今までのでんぱにはないものだと思いますけど、この作品に自然と収まってますよね。

相沢 映画のエンディングロールみたいですよね。EPを通して聞くと、1本の映画を観た気分になるというか。

ー想像力を掻き立てますよね。前作のEPもそうでしたが、今回も最初から最後まで通して聴いてると「今っていつだっけ?」「どういうジャンルなんだっけ?」って時空が歪んでくる感覚があって。でんぱ組.incはアイドル性とアート性を併せ持つグループだと思いますが、その二面性に関して、どう捉えていますか?

藤咲 もふくちゃんがでんぱ組.incを作った時代って、アイドルは男性向け目線の方が強かったから、ファッションやアートの要素を取り入れたらもっと面白いことになるなってところから、でんぱ組.incがアート寄りになったんだと思うんです。私は毎回コスプレだなって思っているので、今回はこういうコンセプトで、こういうキャラで作っていくんだって思いながらやっていて。着せ替え人形じゃないですけど、自分やでんぱはいろんな変化をしていけると思うし、「何者でもいいけど、我らはでんぱ組.incなんだ」っていうところが、尖ってていいなと思います。そこにアートやファッションが馴染むのかなって思いますね。



小鳩 私はもともとでんぱのファンだったんですけど、当時AKBとかが流行ってた中、でんぱってヘンな格好してると思ってました(笑)。「Future Diver」もそうですけど、ギンギラギンの、それ歩けるんでしょうかみたいな、たっかい靴をみんな履いてて(笑)。



相沢 確かに(笑)。

藤咲 歩けなかった(笑)。

小鳩 スカートもボワンボワンしてたり。でも最先端だなと思ってました。でんぱ組.incが着てたようなジャケットや衣装は私も真似してたし、どんどん流行っていった印象があって。だから見たことないようなジャケ写とか、「何それヘン」って言われてもやった方がいいなって、それがでんぱだなって私は思います。

相沢 最初にでんぱ組.incが東京コレクションで、モデルとしてMIKIOSAKABEさんとコラボさせてもらった時、正直でんぱ組.inc全員ヲタクだし、ファッションとかマジわからんからファッショニスタとか怖すぎワロタ、みたいな感じだったんですよ(笑)。めちゃくちゃ怯えながら参加してたことが、ファンの方からしたら応援してあげようとか、可愛いなって思ってもらえてたのかもしれないですけど。でも私たちがファッションを知らなくても、私たちがいることで不思議な化学反応が起きて、ファッションとか知らなかった人に対してのハードルも下がって広まったし、逆にファッションの世界は私たちが怯えてたよりもあたたかくて。「面白いね」とか「ファンの人たちも熱量があってすごい素敵」って言ってもらえたり、それこそアートワークをやってくれてた歌麿呂(ファンタジスタ歌麿呂)さんは、ライブを観て泣いてくれたりしたんです。怖いと思っていたけど、こんなにピュアで優しくて、私たちを受け入れてくれる世界だったんだと思って、急に扉が開いた瞬間が見えました。音楽ってこういうこともできるんだって感じられたんですよね。

今回もそうですけど、ギターウルフさんやタヒチ80さんとは直接関わったこともなかったし、正直私はそんなにたくさん聴いてきた人間ではないけど、何かしらがうまいこと引っかかっていい感じになった。そのミックスが、でんぱ組.incにしかできないアートなのかなってなんとなく思ってて。これからもしかしたら違うことをやって失敗することもあるかもしれないけど、新しい世界を見つけた瞬間がやっぱり一番楽しいので、やり続けていきたいなって思いました。

<INFORMATION>


『ONE NATION UNDER THE DEMPA』
でんぱ組.inc
トイズファクトリー/MEME TOKYO
発売中

1.ONE NATION UNDER THE DEMPA
2.古代アキバ伝説
3.イッき♡いっぱつ
4.でんぱでぱーちゃー
5.THE LAST DEMPASTARS

https://tf.lnk.to/ONUTD

「ジャケットは、私が先に星に到着してて、そこにみんなが宇宙船で来て降りてくるって絵なんですけど、『梨紗ちゃん卒業するの?』って言われて(笑)」(相沢)
「逆に、置いていかれるみたいに見える人もいるんですよね」(小鳩)
「いや違う違う、勝手にやめさせないでって言ってるけど」(相沢)
「そうなっちゃうの面白い(笑)」(藤咲)

https://dempagumi.tokyo/

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