でんぱ組.incが語る世界観、アキバカルチャーの果て

「エモい」とは?

ー『ONE NATION UNDER THE DEMPA』のコンセプトにもある“萌え”と“エモ”について、萌えの概念はなんとなくわかるんですけど、エモって難しいなと思っていて。今はみんな気軽に「エモい」とか言うけど、20年くらい前のバンド畑で育った自分みたいな人間からすると、エモ=ハードコアのイメージがあるんです。激情系の生々しいサウンドがエモだと思ってたのに、今は青春っぽい爽やかなものもエモだし、ちょっと懐かしいみたいなものもエモいって言うし。

藤咲 そうですね。“2000年代初頭の日本のほとんどが再現されてるけど、萌えとエモだけがない”っていうのが今回のストーリーですけど、それって今の時代のことだなって感じます。萌えやエモって、私的には感情が動くことを意味するのかなと思っていて。今の時代は、頑張ることをしなかったり、それこそ夢がなかったり、希望的なことが廃れてる感じがするんです。自分もちょっと気持ちはわかるけど、失敗するのが怖いのかなって感じる。もっと感情的に泣き叫んだ方が人間的だなって思うし、そういうところから発生するものがたくさんあるから、それを伝えるためにこういう曲を歌ってるんだろうなって思いますね。だから懐かしいとか青春とかのエモじゃないっていうのは、私も思います。

相沢 私、エモいって言葉をあんまり使わないようにしてて。普通に生活する上で、こうやって友達やメンバーと喋ってる時はエモいって言うんですけど、ファンの方の前では言わないようにしてたんです。エモいって抽象的すぎて、軽く感じる人もいれば、すごく感情的に捉えてくれる方もいるっていう温度差がめちゃくちゃ出ちゃう言葉だなと思っていて。それをうまく表現することがまだ私の中でできないから、エモいは使わないようにしようって、なんとなく禁句にしてたんですよね。そしたら、めちゃくちゃエモいって言わされるやんって思って(笑)。

一同 (笑)。

相沢 だからなんか恥ずかしかったです。久しぶりにエモいとか言わなきゃいけないって聞いて。「え? 何、エモって?」って、改めてもふくちゃんに聞きました。そしたら説明会みたいなのがあったよね。「プルチックの感情の輪ってのがあってね」って。

小鳩 紙になんか印刷されてて。

相沢 そうそう。エモいって、“楽しいと悲しい”とか、“怒りと喜び”とか、いろんな感情が動いたときに出るものだって。ライブとかでメンバーの気持ちと、お客さんの気持ちが動く瞬間は、エモだと思うみたいな。「でんぱのライブってそういうことだよね、だから今回は萌えとエモだ!」って言われて、納得するみたいな(笑)。それこそツアーで自分たちが歌っていく中で、エモいってこういうことかもってなんとなく感じられたり。今回のツアーはMCで、「これがエモかも」っていうMCをりあぴ(小嶋)が結構入れてくれたんですけど、毎回違うエモさがあったよね。

小鳩 声出しができるとみんなの熱量が余計リアルに伝わってくるので、毎回違うことが言えたなって思います。萌えとかエモって、感情が大きく動くから疲れるじゃないですか(笑)。

相沢 激しいよね。

小鳩 そう。最近の人たちはあんまり感情を動かすことに積極的じゃないっていうか、疲れるからあんまり感情を揺さぶられたくないって感じがする。私も結構そう思うタイプなんですけど、生きるのに必死で、悲しいとか楽しいとかも大きく感じたくないんですよね。でも萌えとかエモとか、そういう心がときめくことは、いっぱい大きく感じた方が生きてるって思うなって、改めて今回のツアーをやって思いました。感情は動かした方がいい。

藤咲 その話を聞いて、半年くらい前にときめきがなさすぎて、感情がわからないみたいな時期があったことを思い出しました(笑)。これじゃダメだってずっと思って生きてて。でも、ときめきなんてたくさんあるじゃんと思って、自分の好きなアニメだったりBLだったりを摂取してたけど、それじゃ足りないんですよね。どこからその感情って生まれるんだろうと思ったら、やっぱりライブなんですよ。今回の『ONE NATION UNDER THE DEMPA』のツアーで、感情がしっかりケアル(回復)されたというか。萌えとエモが私の中のときめきなんだって気づいたライブでした。

相沢 『でんぱぁかしっくれこーど』で、もふくちゃんがでんぱ組.incと一緒にやりたいことっていうのが、萌えの継承で。そこからの『ONE NATION UNDER THE DEMPA』で、改めてやりたいことが明確になったのを感じて、私たちも1個目より2個目の方が迷いなく、自分たちらしく歌うことができたような気がしました。





『ONE NATION UNDER THE DEMPA』

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