illiomoteが語るフジロック出演への熱い想い、「破壊」をテーマにした新作EP

―歌詞って後からつけるんですか?

YOCO:歌詞はいつも最後にまとめて付けるんです。今回、「I.W.S.P」以外の「BABY END」、「Hit on!」、「MY SUPER GOOD FRIEND」は、同じ世界観のテーマで歌詞を書きました。なんていうか……。

MAIYA:中二病?

YOCO:(笑)。中二病っていうと、ちょっと意味が広すぎるので伝わりづらいかもしれないですけど、まず、今回のEPのテーマは「破壊」なんです。illiomoteをより多くの人に聴いてもらうにはどうしたら良いのかを考えたときに、音楽のトレンドと、今の私たちを比べて、自分を破壊するのかそれとも世界にある何かを破壊して新しい世界を見せるための表現をするのか、すごく考えました。そういうことに向き合う中で、心の中にある「本当はこうしたいのに」っていう爆発力を、2人それぞれが表現できたかなって思います。歌詞は、ある作家さんの本を最近すごく読んでいて、影響を受けました。


YOCO

―どなたの本ですか?

YOCO:友だちに、村田沙耶香さんの『コンビニ人間』と『地球星人』をおすすめされたんです。読んでみたら、「正常とは、異常とは」みたいなことを問いかけてくるようなストーリーで。今の世の中って、正常と異常で2分割されていて、そこの輪に入れるかどうかっていうことがすごくあると思っていて。そこに抱いているモヤモヤだったり、自分は正常って言われる世界に行きたいのか、それとも自分の感覚を信じてその道に進みたいのかっていうことを、本を読んで考えたんです。

―『コンビニ人間』って、ゆるい話なのかなと思いきや結構重い小説ですよね。

YOCO:そうですね。結構、グロッギーな気持ちになるというか。主人公がコンビニで働いている話なんですけど、途中から、元バイト仲間でお客さんのストーカーをしてクビになった中年男性を主人公が家のお風呂場で飼うことになって、洗面器にごはんを入れてあげたり、男性から「世界から僕を隠してくれ」って言われたりして。主人公もおじさんも、同じことで悩んでいると思ったんです。女という使命、男という使命、仕事や恋愛、人間の繁殖を、“しなきゃいけない感じ”に囚われている自分たちというか。ただ、村田さんの作品は、「社会が悪いんだ」って押し付けるわけじゃなくて、主人公たちが持っている社会とズレた感性の存在を見せて、問いかけられている感じが良いなと思うんです。私も改めて自分が持っている感覚と、社会の中にぼんやりとある「普通、正常」っていうものを見比べて、自分の感覚をどう破壊していこうか考えました。あと、自分は充実した感じで日々過ごしているんですけど、たまに異生物みたいに見られることがあって(笑)。例えば同業者の子と控室で一緒になったときに、「最近どうなの?」とか聞かれて、家から出てないし人に会ってないから、「何もないねえ」「ああ、そうなんだ」って、話が続かないみたいな(笑)。そういう話をすることでコミュニティには入るっていうことが人より少なかったりするので、きっとこういう人間はここでこぼれてしまうんだろうなって、日常で感じることがあります。

MAIYA:音楽とかカルチャーが好きな人だと、ある程度感覚は近いんですけど、そうじゃない人、全然感覚が違う人と話すときに(激しく身悶えながら)「ぐわぁぁ~! 気持ち悪ぃ~」ってなりますね。

―そういう風に感じてしまう、自分自身を破壊したい気持ちもありますか。

MAIYA:それは確かにあります。

YOCO:どこかで平気って思っているところもあるんですけど、ふと「そんなに変なのかな?」みたいに思ってしまうんです。そういう自分も完全に破壊して、もっと開けた感じにしたいなとは思います。

Rolling Stone Japan 編集部

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