神はサイコロを振らない・柳田周作が語る、バンド結成秘話と作品作りへのこだわり

このままシンガーソングライターでやっていくのもありかも、そう思った矢先に黒川と再会する。

「黒川はバンドを解散したばかりだったのですが、僕の方は弾き語りシンガーソングライターとしてファンもそこそこついていて。それを知った黒川に、『バンド組もうや』って言われたときには開いた口が塞がらなかったですね(笑)。本当に調子の良いやつだなと思ったんですけど、やっぱり僕自身もバンドへの憧れがあったので、そこから二人で曲を作り始めました」

二人が大学2年になった時、黒川の所属する軽音サークルに新しく入ってきたのが吉田喜一。「ギターがめちゃめちゃ上手い」と評判だった彼を、柳田の自宅での鍋パーティで口説き、最初はサポートという形でバンドに招き入れた。同じタイミングで声をかけたのが、桐木岳貢。

「当時の桐木はハードコアバンドをやっていて、ライブを観にいったらベースの弾き方がめちゃくちゃカッコ良かったんです。『絶対にこの人とバンドを組みたい!』と思ったので、やはりサポートから加入してもらうことにしました。実を言うと、吉田にも桐木にも『正式メンバーになってほしい』『このバンドで売れるまで頑張ろうぜ』みたいな話をしたことが一度もなくて。ヌルッと始まって今に至るという感じなんですよね(笑)。だから、吉田と桐木は未だにサポートメンバーと思っている可能性は大いにある……そんなことはないか(笑)」



そんな神サイの新曲「修羅の巷」は、福山雅治と大泉洋が主演するドラマ『ラストマン−全盲の捜査官−』の挿入歌として書き下ろされたもの。歪んだギターリフや疾走感あふれるリズム、そしてボーカル柳田周作による艶やかな歌声が絡み合う楽曲がバンドやドラマのファンに突き刺さり、Billboard Heatseekers Songsで1位を獲得するなど話題沸騰中だ。全盲で壮絶な過去を持つ主人公・皆実広見や護道心太朗の生き方に、柳田自身が感じた気持ちを投影。その上でマイノリティや社会的弱者に対し、「心だけは搾取されてはいけない」というメッセージも込めた壮大かつヘヴィなロックナンバーだ。

「この曲も、過去に作った楽曲も、結局は自分自身のパーソナルなことを歌っていて。誰かのためではなく自分のために書いた曲を、自分以外の人がその人生を重ね合わせて聞いてくれていることに、最近は感動することが多くて。以前はやたら周りくどい言い方や、わざと難解な表現を用いていたのですが、「俺はこう思ってるんだ」ということを分かりやすく赤裸々に表現した方が、面白いことができるんじゃないかと最近は思っています。あと、作品作りはもっと身勝手なエゴの塊だって良いんじゃないか?と思う気持ちもありますね」

Photo = Mitsuru Nishimura

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