THE SUPER FLYERSとorigami PRODUCTIONSが振り返る、共作アルバムの背景、SKY-HIの存在

次なるコラボレーションへの期待

―Ovallの皆さんもTHE SUPER FLYERSも、ルーツであるジャズやファンクやR&BをJポップとクロスオーバーさせることでJポップシーンを底上げしている立役者に思えるんですが、そういう部分でシンパシーを感じたりはしますか?

TAK:そうですね。僕はアメリカにいる時からOvallの皆さんのことを、日本国内でいろいろな情報を吸収して音楽に反映させてすごく新しいものを作っているという風に見ていました。例えばブレインフィーダーがやっている、ジャズをはじめいろいろなサウンドが混ざっていて、しかもローファイに聞こえるけど実はめちゃくちゃちゃんとデザインされているようなセンスの塊みたいな音の先駆者なんじゃないかなって。R&Bやジャズのエッセンス、ネオソウル以降の質感をそれぞれが個々でも発信しているけど、3人が集まるとまた新しい質感の音になる。単一的な音の純粋さも魅力的ですけど、僕はいろいろなバックグラウンドを持った人が鳴らしている音楽の方が好きなので、昔からシンパシーは感じていました。

―Ovallの皆さんは様々なプロデュースワークでもそういうエッセンスを注入されている印象がありますが、それは意図的なものなんでしょうか?

mabanua:自分が好きなものを好きであり続けるっていうんですかね。結局音楽って誰かしらからの影響を受けて、各々のスタイルが確立されていくものだと思うんです。例えば僕がアレンジのオファーがいただいたとして、“かっこいいものにする”というのは共通の目標としてありますけど、どうかっこよくするかはやっぱり自分が好きで聞いてきたものや今影響されているもののラインでしかできないんですよね。例えば今ヒットしている曲を調べ上げて、全部のエッセンスを盛り込んでみたとしてもあまり響かないと思うんです。プロデューサーとして、ヒット曲だったり幅広い知識を持つことは良いことかもしれませんが、それよりかは個人が好きなスタイルや音楽を研究し尽くすことができていれば、結果的にそれがその人の色となって音楽シーンに貢献できるんじゃないかっていうことを最近僕は考えています。それが世の中にハマらなくなってくると大変なんですけど(笑)。

―でも、今のところはハマってますよね。

mabanua:そうですね。好きなもの=その人の色になっていて、オファーが来るっていう流れがあるんだと思うので。それはサポートという立場でも一緒で、TAKさんはいろんな演奏ができるけど、自分の好きなものを伸ばす努力をしているからこそ、TAKさんのスタイルが好きでオファーをしている人が多いんじゃないかなって思います。

関口:僕としても、自分に声をかけてくれるっていうのは、自分が好きで出してる要素の何パーセントかを求めてくれているからなんだろうなと思っています。あとは、そのアーティストと一緒にやることでベストな形にするために、パーセンテージの割合を自分で調整していく感じですかね。TAKさんのギターはいろいろなライブで見てますけど、例えばJポップ的なミュージシャンのサポートで弾いている時もTAKさんのカラーが絶対に出ていて、それがかっこいい。だからこそTAKさんはこの場に呼ばれているんだなって思います。

Suzuki:例えば鍵盤のひとつの和音にしても自分の手癖って出るんですよね。それは、日頃自分が好きで聞いているものだったり、「こういうことをしたいな」って思っているものが自然に引き出しに入っているからで。『Here, We Live』の時もそうでしたけど、アレンジやプロデュースのお話をいただくと、事前にそのアーティストのお話を聞いた上で、自分の限りある引き出しの中から、「じゃあこれはどうですか?」っていう風に出すので、必然的に自分の好みが入っちゃうんですよね。例えばこの3人でOvallをやっていても、バンドは自分たちの好きなことややりたいことの集大成でもあるわけですから、そこで個性を出すと、それに惹かれた人たちがオファーをくれる。そういう循環になっている気がします。それが個々のプロデュース作品の中にも出ていて、その作品を聞いて「このテイストが欲しい」って思ってもらえると、知らない間に自分たちのテイストがマーキングされていく。不器用で何でもできるわけじゃないからこそ、カラーが生まれていく気がします。

TAK:いやあ、勉強になります。あと、皆さんアーティストのプロデュースもされてますけど、例えばCMの音楽だったり、いろんなタイプの楽曲の制作もやられている。音楽のエンターテインメントだけでなく、もっと多面的にカルチャーにコミットされている方たちではありますよね。「あのCMの曲を作ってる人たちなんだ」とか「あの企業と仕事している人なんだ」っていうような広がり方もあるところもOvallのすごいところだと思っています。

―マーキングされる場所が本当に広範囲ですよね。

TAK:そうですね。その範囲が横も広いし楯もあるみたいな。そこも含めてすごく貢献されていると思うし、若いクリエイターに強い影響を与えているんじゃないかなって思います。

―では最後に、もしまたコラボレーションできるとしたら、どんなことをやりたいですか?

TAK:ライブを一緒にやりたいですね。ツインドラム、ツインギター、ツインベースのダブルトリオ+THE SUPER FLYERS feat. SKY-HIで。

関口:熱いですね(笑)。

mabanua:いやー、僕はドラムでもっちーに勝てる気がしない(笑)。

TAK:(笑)それやりたいな。それこそ架空のフェスが本当のフェスになって帰ってきた感じもしますし。僕はOvallのライブでライブプレイヤーとしての皆さんの芯の強さも目の当たりにしてるので、今度はそういう関わり方もできたらいいなって思います。

mabanua:僕がTHE SUPER FLYERSの皆さんとのレコーディングで感じたのは、例えば僕が好きそうなアンプとかエフェクターとかを持ってきてくれるんですよ。もっちーが「たぶんこういうプレイお好きですよね?」っていう感じで演奏してくれたり。そういう人に寄り添う優しさが僕らには足りないなって思いました(笑)。家にこもって制作していると、だんだんコミュニケーション能力が欠如してくるところがあるので。

関口:その懐の深さや引き出しの多さを勉強させていただきたいですね(笑)。

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