THE SUPER FLYERSとorigami PRODUCTIONSが振り返る、共作アルバムの背景、SKY-HIの存在

カバー曲の妙味

―皆さん、アルバムを聞いた時の率直な感想は覚えてらっしゃいますか?

Suzuki:いろいろな仕事をやっていく中で、ときどき知っているミュージシャンとの自由度の高いご褒美のような楽しい現場があるんですよね。音源を聞き返してもそういう嬉しさが詰まっているなと思いました。origamiのミュージシャンがコンパイルされた作品を客観的に聞く楽しさもありましたね。「Michael Kanekoはこうするんだ?」っていうような感覚があってワクワクしました。自分たちの個性を存分に出しても受け止めてくれるし、実際に演奏を差し替える場合もTHE SUPER FLYERSの面々は期待値を超える演奏をしてくれたので楽しかったですね。

関口:「やっぱりorigamiのカラーってあるんだな」と思いました。それに、THE SUPER FLYERSの皆さんのテクニックやセンスがどの曲でも発揮されているなっていうのは、レコーディングの時も完成した作品を聞いた時も思いましたね。

mabanua:機材が発達して一人でも充分なオケが作れる時代になったことで、一人のトラックメーカーと一人のシンガーだけしか参加していないけどヒットしている作品って海外にもいっぱいあるわけです。そういう作品って当たり前ですけど、いろんな人のマインドが入り乱れている感覚はしないんです。でも、このアルバムを聞くと、いろんな人のマインドが入り込んでいることを全体から感じることができる。日高くんのすごいところって、オーディション番組を見ても思ったんですが、自分が主催しているからといって矢面に出過ぎないところなんですよね。自分が仕切っていると、最後に出てきて「ありがとうございました!」ってついやりたくなるものだと思うんですけど、それをし過ぎないところにセンスと美学を感じます。『Here, We Live』もジャケの通り、「みんなで作っています」っていう感じがあります。

―リスナー側からすると、ひとつの素材に徹しているようにも思えました。

mabanua:そうですね。日高くんのファンからしたら日高くんの歌をもっと聞きたいのかもしれませんが、日高くんが一歩引くことで他の人が引き立つ。これまでいろいろな作品に参加してきた中で、制作陣があまりフォーカスされず歯痒い思いをしたこともありますが、日高くんのおかげで「こんなにたくさんの人が関わっているんだ」っていうことがわかりやすく伝わる。そういう作品の存在って大事なんじゃないかなって思います。

―アルバムのラストはSuzukiさんプロデュースによるビヨンセの「Crazy In Love」のカバーですが、それこそ大所帯のバンド感が爆発していますよね。

TAK:「Crazy in love」というビッグチューンにShingo氏が向かっていきましたね(笑)。

Suzuki:(笑)最初「どうしようかな」と思ったんですが、直球で勝負しました。お客さんが「ライブでこういう曲を聞きたいな」って思うものを想像して作っていきましたね。あまりアレンジを変えすぎると曲の根幹が変わって、例えば「ジャズミュージシャンがカバーしました」みたいになってしまう。それはそれで良さはあるけど、今回は原曲を最大限リスペクトしつつ、THE SUPER FLYERSがストレートにライブを意識してカバーするとこうなる、というところを見せたかったんです。それぞれのことをよく知っているので、「もっちーだったらこう叩いてくれるだろうな」とか、「淳人くん(北川淳人、B)だったらこのフレーズ弾いてくれるだろうな」っていうところまではっきり見えましたし、しかも素晴らしいホーン隊もいるから、その良さも出せるなと。TAKさんがいろいろと選択肢を与えてくれる中で、そういうことを考えながら作っていきました。



―こういう打ち込みの楽曲を人力でカバーするというのはうまくないとできないものですよね。

Suzuki:そうですね。THE SUPER FLYERSだからこそ臆することなくできたんだと思います。僕も遠慮なく「お願いします!」って言えました。すごく楽しいレコーディングでしたね。

TAK:「こういうプレイヤーだからこういう演奏ができるはずだ」とか、「ここまでハードルを上げても大丈夫だ」っていう、あてがきみたいな感じでアレンジの方向性を考えてくれたのも大きかったと思います。信頼を感じたからこそみんな張り切って演奏してましたね。シンガーのKayoちゃんと(吉岡)悠歩も「かまします!」って感じでしたから(笑)。

Suzuki:みんなが知ってる曲だけに、「何言われてもいいよ」っていう感じで振り切れたところはありますよね(笑)。


左から田中“TAK” 拓也、Shingo Suzuki、関口シンゴ、mabanua(Photo by Kimi Mikawa)

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