結束バンド、初のワンマンライブと新曲で切り開いた「バンドサウンド」の可能性

青山吉能(後藤ひとり 役)「結束バンドLIVE-恒星-」(©はまじあき/芳文社・アニプレックス)

結束バンドの最新シングル『光の中へ』が5月24日に発売された。TVアニメ「ぼっち・ざ・ろっく!」の劇中バンドとして出発した結束バンドは、昨年末にリリースされたアルバム『結束バンド』が絶賛され、音楽ファンからも非常に高い評価を得た。そうした盛り上がりをうけて5月21日に東京・Zepp Haneda(TOKYO)で開催された初のワンマンライブ「結束バンドLIVE-恒星-」は即完。今回リリースされた2つの新曲(表題曲とカップリング曲「青い春と西の空」)はここで初披露され、いずれも最高の盛り上がりをみせていた。

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藤森元生が作詞作曲を担当した「光の中へ」は、藤森のバンドSAKANAMON直系の疾走感が映えるマスロック寄りのエモ。これに対し、樋口愛が作詞、南田健吾(agehasprings Party)が作曲を担当した「青い春と西の空」は、ポストロック/エモにそのまま通じるイントロに対し、歌が入るパートはポップな展開で、それでいて双方の繋ぎには全く違和感がない。どちらの曲も、編曲担当の三井律郎がこだわってきた“下北沢サウンド”の新たな引き出しを開けつつ連続性を損なわない仕上がりが絶品で、既存曲のイメージを引き継いだ上で音楽性を拡張する2曲になっている。



これは結束バンドのどの曲にも言えることだが、渋さと爽やかさのバランス、コアな作り込みとキャッチーさの両立が本当に素晴らしい。そういう匙加減のうまさがメンバーの持ち味にそのまま一致し、表現上の必然性が自然体で成り立っている。これは、2000〜2010年代の邦楽ロックへのオマージュ、みたいなコンセプトを超えたところで活きている味わいで、劇中キャラクターのイメージと演者自身のイメージが混ざり生まれる在り方の面でも、音楽それ自体の個性の面でも、唯一無二のポジションに達したバンドなのではないかと思う。

実際、「結束バンドLIVE-恒星-」は本当に素晴らしいライブだった。自分がまず驚かされたのが、大部分の曲でリードボーカルを務める長谷川育美の卓越したパフォーマンス。とにかく歌がうまく終始疲れをみせない上に、喋りのペースや間の保たせ方、力強いのにテンションを上げすぎない煽り方もあまりにも堂に入っている。大胆不敵かつ、それでいて柔らかい佇まいは「ぼっち・ざ・ろっく!」で演じる喜多郁代とは異なるのだが、それが示されているからこそ、アニソンの再現ではなく“生の結束バンド”のライブなのだということがよくわかる。こうした“劇中キャラクターと演者自身のイメージのズレがうまく映える”印象は水野朔と鈴代紗弓も同様で、ライブ本編は概ねこの感じで進んで行ったのだが、それがアンコール頭の「転がる岩、君に朝が降る」(ASIAN KUNG-FU GENERATIONのカバー)では一変する。


長谷川育美(喜多郁代 役)


水野朔(山田リョウ 役)


鈴代紗弓(伊地知虹夏 役)


青山吉能(後藤ひとり 役)



ギターを携え登場した青山吉能の佇まいは「ぼっち・ざ・ろっく!」の後藤ひとりにそのまま通じるもので、歌い回しの面でも、ギターソロの素晴らしい音色の面でも、「ぼっち・ざ・ろっく!」の切実な雰囲気を見事に体現していた。この青山のパフォーマンスも、キャラクターを演じて無理にそちらに寄せたのではなく、後藤ひとりと自然に重なるところが多いから結果的に寄っている感じなので、他メンバーが歌う曲と並べても優れた一貫性が得られる。

以上のような劇中キャラクターと演者自身のイメージの相互作用が映える「結束バンドLIVE-恒星-」は、「ぼっち・ざ・ろっく!」のイベントというよりも生の「結束バンド」のライブであり、「ぼっち・ざ・ろっく!」に惹かれた人々を結束バンド経由でバンドサウンドの世界に連れていく、そういう意味で理想的なライブになっていた。楽器陣(右ギター:生本直毅、左ギター:五十嵐勝人、ベース:山崎英明、ドラムス:石井悠也)の演奏も素晴らしい。今後も折に触れて開催してくれることを願うばかりだ。



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<INFORMATION>


『光の中へ』
結束バンド
アニプレックス
5月24日発売
配信リンク:
https://anxmusic.lnk.to/9Dh66O

M1. 光の中へ
M2. 青い春と西の空
M3. 光の中へ -instrumental-
M4. 青い春と西の空 -instrumental-

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