アルファ・ミストが語る「ジャズの探求に終わりはない」音楽的冒険を支える仲間たちの貢献

 
ウガンダのルーツと向き合った理由

―今回のアルバムで南アフリカのフォーク・シンガー、ボンゲジウエ・マバンドラ(Bongeziwe Mabandla)を起用した経緯を教えてください。

AM:僕はこれまで、自分の知り合いや友人以外のアーティストを起用したことはなかった。でも彼は、僕がその領域を越えて手を伸ばした最初のアーティストなんだ。歌詞の内容こそ彼の言葉(コサ語)が話せない自分には理解することができなかったけど、英語に翻訳されたものを読んだら、信じられないほど素晴らしかったんだ。

―そのボンゲジウエ・マバンドラが参加した「Apho」について聞かせてください。

AM:さっきも話したけど、僕はギターでも曲を書く。この曲もギターで書いた曲で、普段とは違う曲を書いてみようと色々と試しながらできた曲なんだ。ギターもそうだし、グルーヴやリズムも他の曲とはちょっと違っている。この曲は、今の僕が本当に興味を持っているサウンドが詰まっている曲なんだ。僕はギターのループとハイエナジーなサウンドが好きなんだけど、ボンゲジウエがそこに美しいメロディを加えてくれた。あのメロディラインは彼自身が書いたものなんだ。その二つの要素が一つになって、僕のこれまでの作品とはかなり異なるサウンドが生まれたと思う。




―まさに「Apho」は新境地ともいえそうな、聴いたことがないタイプの曲でした。同じことはアフロビート的なアプローチの「Genda (Go Away)」にも言えるのではないでしょうか。

AM:僕の母親はウガンダ人。つまり僕もウガンダ人なんだけど、ロンドンで生まれ育った僕とは違って、母親はウガンダからロンドンに来たから、彼女はルガンダ語を話すんだ。僕はそれを理解することは出来るけど、話すことはできない。そのなかで、僕が理解できる数少ないルガンダ語の一つが「Genda」で「あっちへ行け」という意味なんだよ。否定的な意味で覚えているわけじゃなくて、ちょっと冗談混じりで笑いを誘うようなイメージだね。

この曲には子供の頃の思い出を込めたかったんだ。曲で使われているのは正しいアクセントじゃないかもしれないけど、それはそれでいいと思ってる。新しい国に引っ越してきた人たちが、自分の子供に古い言葉を教えているリアルな様子が表現されている方が大切だからね。だから、この曲には僕の姪っ子も参加してくれているんだ。彼女は、僕よりもさらに次の世代だから、僕以上にルガンダ語が話せない。でも僕らは二人とも、僕たちなりにその言語を話そうとしている。言葉を伝えようとすることは大切なことだと思うし、たとえおかしな発音になったとしても、自分たちの伝統を守るために学ぶべきだし、それを繋いでいきたいと思うんだ。


Photo by Kay Ibrahim

―今回、アフリカのミュージシャンと共演していたり、アフロビートが取り入れられていたりするわけですが、そういう曲ではアフロビートを得意にしているドラマーのジャズ・カイザーが大きな役割を果たしていますよね。

AM:僕もそう思う。彼女自身の音楽を聴いてもらったらわかると思うけど、彼女の音楽にはたくさんアフロビートが使われていて、彼女はとても上手く扱うことができるんだ。このアルバムでもそれがすごく機能していると思うよ。




―僕は『Variables』がきっかけで、あなたがウガンダにルーツを持っていることを知りました。あなたのミドルネーム「Sekitoleko」もウガンダに由来する名前なんですよね。これまでにも自分の作品で、そういうルーツの要素を表現したことはありましたか?

AM:実は僕のアルバムは全て、どこかにウガンダの要素が入ってるんだ。「Mulago」という曲のタイトルは僕の母親が生まれた病院だし、「Naiyti」はナイトって意味で、ウガンダでは語尾に「イー」みたいな言葉をつけて「ナイティー」っていうんだ。意識してウガンダのルーツを表現しようとしているわけではないけど、自分にウガンダの血が流れているから、自然と曲名のアイデアが出てくるんだと思うよ。

―最後に、日本でのライブはどういう感じになりそうですか?

AM:もちろん『Variables』の曲をたくさん演奏するけど、日本に来る機会は貴重だから、昔の曲もプレイする予定。僕たちは即興のバンドだから毎回違う内容になると思うし、どうなるかはお楽しみ。日本に行くのが待ちきれないよ。かなり久々だからね。日本でみんなに会えるのを楽しみにしているよ。






アルファ・ミスト
『Variables』 
再生・購入:https://alfamist.ffm.to/variables 

ALL TOMORROW’S COLLECTIVE Vol.1 アルファ・ミスト来日公演
6月5日(月)ビルボードライブ大阪
6月7日(水)ビルボードライブ東京
6月8日(木)ビルボードライブ横浜
1st show:OPEN 17:00 START 18:00
2nd show:OPEN 20:00 START 21:00
詳細:https://smash-jpn.com/live/?id=3896

Translated by Miho Haraguchi

 
 
 
 

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