アルファ・ミストが語る「ジャズの探求に終わりはない」音楽的冒険を支える仲間たちの貢献

 
アルファ・ミストの音楽を支える仲間たち

―ここからは、あなたの音楽を形にしてくれている個性的なメンバーについて聞かせてください。トランペット奏者のジョニー・ウッドハムはあなたが運営するレーベルSekitoから、JSPHYNXの名義で『Reflex』をリリースしていますね。

AM:僕とジョニーが一緒に仕事をしたことのあるミュージシャンたち、みんなの才能をジョニーの音楽と融合させることができたのが『Reflex』という作品なんだ。彼は普段、トランペットで伝統的なジャズやビバップのラインをたくさん演奏している。でも、彼がビートを作ると、すごくモダンなUKサウンドになるんだよね。ジャングルやドラムンベースの要素が出てくる。『Reflex』には(ホセ・ジェイムズらを支えてきたジャズドラマーとしての顔だけでなく)UKだとドラムンベース界隈でも有名なリチャード・スペイヴンも参加していて、みんながジョニーのサウンドの魅力が引き出してくれているんだ。




―そのジョニー・ウッドハムは、『Variables』でどんな貢献をしていますか?

AM:ジョニーは、僕がリリースしたほぼ全てのアルバムで演奏してくれている。僕はたくさんのラインやメロディを書いているけど、ジョニーは、彼が作り出す音色を使って、それを支えてくれるんだ。もし違う人がトランペットを演奏すれば、それは違うものに聴こえると思う。

そして、ジョニーの音楽はタイムレスなんだ。彼はフレディ・ハバードが好きで、あの頃のミュージシャンたちに夢中なんだけど、新しい音楽、新しいコード、新しいサウンドを操る方法も知っている。伝統的な方法で演奏しながらも、新しいサウンドを作ることができるんだ。どちらが片方が上手く演奏できる人はたくさんいるけど、新しい曲を伝統的なスタイルで演奏できる人はあまりいないと思うんだよね。彼はどこか違う時代から来たみたいなミュージシャンなんだ。



―ギタリストのジェイミー・リーミングもまた、Sekitoからアルバム『Resynthesis』をリリースしています。

AM:『Resynthesis』は、ジェイミーの性格がすごく出ている作品だと思う。すごくクリーンで、ハーモニーがとてもメランコリックなんだ。悲壮感はないけれど、内省的で、考えさせられ、感じさせられる。それはジェイミーの人柄でもあって、すごく美しい彼のグルーヴが反映されているんだよね。会ってみないとわからないだろうけど、彼と会って一度でも会話をすれば、なぜ『Resynthesis』がああいうサウンドになったのか、すごく納得がいくはず。僕はやっぱり自分自身を音楽に変換できる人たちが最高のミュージシャンだと思うんだ。つまり、自分という人間によって音楽を表現できる人たち。ジェイミーはそれを見事に実現しているんだ。同じことは、ジョニーにも言えるよね。

―ギタリストとしての特徴は?

AM:本当に素晴らしい音色とテクニックを併せ持ちつつ、その場その場で常に音の探求を心がけているんだ。僕は長年にわたってジェイミーと多くのショーを行ってきたけど、彼は毎回新しいことを考えようとする。ギターに関してすごくオープンマインドで、且つしっかりと訓練されている。探検家であるからこそ、僕たちにより多くのことを解き明かす機会をくれ、音楽の世界のなかで成長させてくれるんだ。彼のそういう面からは、僕も影響を受けている。




―今回の『Variables』でも、ギターが重要な役割を果たしていますよね。

AM:ギターの音は常に大好きだし、すごく重要だと思う。ピアノで弾く3音の基本的なコードも、ギターで弾くとなぜか響いてきたりするよね。ピアノでは退屈に聞こえることが、ギターではなぜか素晴らしく聴こえたり。だから、僕は自分の音楽の中にギターの雰囲気があるのがとても好きなんだ。常に全てのトップに立つわけではないけれど、素晴らしいサポートとして、鍵盤との相性もすごくいい。普段は、鍵盤かギターのどちらかを使うことが多いかもしれないけど、僕は両方あったほうが土台が強くなると思う。

―このアルバムで、特にお気に入りのジェイミーのプレイが聴ける曲を教えてください。

AM:オッケー。例えばタイトル曲の「Variables」。この曲は僕が書いたんだけど、雰囲気を出すために、僕自身は冒頭でちょっと演奏しているだけなんだ。そして、あとはジェイミーに任せた。なぜなら、僕はこの曲で、ギター、ベース、ドラムで作り上げるジャズが聴きたかったから。なぜかはわからないけど、ピアノが好きでも、そういうジャズが聴きたくなる時もあるんだよ。だからジェイミーにお願いした。そしたら、ジャズっていうよりロックっぽくなってさ(笑)。たぶん、それがジェイミーがあの曲に感じたヴァイブだったんだと思う。ツアーで演奏するたびに毎回姿が変わっていってすごく興味深かったよ。彼は、演奏するということよりも、「自分自身でいること」を意識している。だから、あの曲で彼自身を上手く表現した結果があのサウンドだったんだろうね。



―しかし、そこまで任せているんですね。メンバーを心底信頼していると。あなた自身は鍵盤奏者として、『Variables』でどんな表現をしようと思ったのでしょうか?

AM:僕はプロデュースをし、全ての曲を書いたけど、鍵盤奏者としての僕の役割は、ただ楽しむことだった。僕はたまたまキーボードを弾けるだけ(笑)。本当は他のキーボード奏者を呼んで、楽譜を渡したっていいんだ。それをしたって、全てが僕の音楽であることに変わりはない。でも、敢えて自分でキーボードを弾いたのは、それが僕にとって楽しいことだからなんだ。だから、鍵盤の上で楽しむというのが僕の役割だった。色々考えたり、ストレスを感じたりっていうのは、曲を書き終わった時点ですでに終わっていたからね。

―マインドとしてはプロデューサーやコンポーザーとしての比重が大きいわけですね。では、次はベーシストのカヤ・トーマス・ダイクについて。彼女はベースだけでなく、『Variables』の「Aged Eyes」、前作『Bring Backs』の「People」でのギター弾き語りも魅力的で、こういう曲がアルバムを魅力的にしていると感じています。「Aged Eyes」はどういう曲なんですか?

AM:その2曲は、ギターで書いたから、生まれた部分もある曲だね。僕はギターを上手く弾くことはできないから、ライブで僕がギターを演奏する姿を見ることはないと思うけど、僕はギターが大好きで、家やスタジオにいるときに弾くこともある。カヤは、歌詞とハーモニーのアレンジを担当してくれるんだ。彼女もまた僕の音楽にとって本当に大切な存在で、これまでの僕のアルバムの全てのアートワークも担当してくれている。彼女は今、彼女自身の作品を作っているところで、もうすぐリリースされる予定。たぶん、数カ月以内にはリリースできるんじゃないかな。


Translated by Miho Haraguchi

 
 
 
 

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