もふくちゃんと成田光春が語る、ディアステ&パーフェクトミュージック経営統合後の3年間


2社それぞれの持ち味が合わさって、オンラインに一気に舵を切れた

―2人のカルチャーの原体験で大きなウエイトを占めてるものって、なんだと思いますか?


成田:僕は北海道の函館市の出身なんですけど、北海道ってすごくオルタナティブとかエモバンドが多くて、全国的に見てもハードコアパンクバンドが函館にいっぱいいるっていうんで見に行ったりとかして「バンドってすごい格好良いな」みたいな原体験もありますし、タワレコもディスクユニオンもない街なので、インターネットを始めるのがすごい早かったんですよね。それで前澤(友作)さんがやっていた「STM online」っていう、JインディーかららもうUSインディからハードコアから揃ってるオンラインショップでCDを買って、ちょっと遠くの札幌市に行くと新しいオルタナティブのバンドがいたりとか。オルタナティブというスタイルに憧れて、通販も含めてどんどん新しい景色が広がっていった感じが原体験としてはありますね。

もふく:私は高校生の時にパーラメントを聴いて、そこからがちょっと転落の人生が始まったんですよね。P-ファンクが完全に脳をおかしくしたんですよね(笑)。そこからノイズにハマった時期が一番長かったんで、ノイズ業界は多分一番深いとこまでいった自負があるというか。もう本当に3人しくらいしかいない「良い音を聴く会」ってとこまで行ったんで(笑)。サイン波だけ聴いて「いいですね」っていう会まで行ったの。そこまで行っちゃって途中で「ハッ! これ音楽じゃないわ! なんか違うところに私はたどり着いてるのではなかろうか?」ってなってから急にポップスのジャンルに入っていったんで。そこから、同人音楽がニコ動とかでめちゃくちゃ流行ってて。「こんなに音が悪い音楽がこの世にあるなんて」っていう (笑)。でもちょっと心が洗われたんですよね。「なんかこれ、良いのでは?」っていうところが原体験ですね。

―統合して一緒にやるぞってなって間もなく、コロナがやってきたわけじゃないですか? それは振り返ってどうですか。

成田:いきなりいろんなことできなくなっていったんですけど、結果的に、それがさっき言ったスケールメリットじゃないですけど、いろんなアイデアが出てオンラインの方に舵を切ったりとかっていうスピード感はかなりあった方だなとはすごく思います。ライブ配信でストリーミングライブとかがすごい早い段階で立ち上がって。2社それぞれの持ち味が合わさって、オンラインに一気に舵を切れたっていうのはあります。

―アイドルさんだと特典会とか握手会がオンラインに変わってっていうのはわかるんすけど、例えば神聖かまってちゃんみたいなバンドだと別にそういう特典かいってないじゃないですか? それをオンラインライブという空間でオーディエンスと成立させるのって、結構大変そうなイメージがあるんですけど。

成田:バンドっていう大きいところで考えると、ブランディングだったりとか、オンラインでの届け方っていうところに抵抗があるグループも多いと思うんですけど、かまってちゃんだけは特例で、ピアキャスやらニコ生をずっと昔からやっていて、「デジタルの寵児」みたいなバンドなので(笑)。そういうボトムがしっかりあったので、オンラインの ビジネスっていうところでの活動感としては、じつはライブが少しできなくなったっていうぐらいでしたね。

もふく:あとコロナ禍で嬉しかったのは、「続いてほしいから」って、お客さんが一生懸命ECやオンライン特典会でグッズを買ってくれて、それはすごく支えられましたね。アイドル好きな方々ってやっぱり生活費の中でも、かなり重要なところに「オタ活」を入れ込んでくれるじゃないですか? コロナ禍でみんなきついのに、優先順位を変えずに多分買ってくれていたりしたのかな、そういうのはちょっと感じたかな。

―もふくさんは、コロナ禍で現場が減ってく中で、所属アイドルさんにモチベーションの相談をされたり、逆に声をかけてあげたりしたことは多かったですか?


もふく:そうですね、アイドルを辞めたとて他の業界も全部つらかったわけだから、「コロナだからやめます」、っていうよりただ底知れぬ悲壮感みたいな、「未来が見えないな」っていう全体的な暗さみたいなものがひしひしとチーム全体にあったというのはあるとは思います。それは実は今もまだ残ってるなと思うんです。みんな病みがちなところはコロナ禍がちょっと良くなってきたからとはいえ「はい終わりました」じゃないというか、どう上げていくんだっていうのは、課題としては全然あるというか。モチベーションという意味では、「うちらはオンラインで面白いことやろうよ」みたいな感じでした。ただ、もう本当に戦争状態みたいな感じで、ある意味みんな一体感はあったというか、「頑張ろう」みたいな感じにはなってましたね。

―オンラインイベントやそういう取り組みで印象に残ってる事例ってあったりしますか。

もふく:豊洲PITで虹コンがライブやろうってなってたのに、直前で緊急事態宣言になっちゃって無観客で急遽やるみたいになって。その時とかはさすがにみんなすごくへこんでたけど、逆にこれと全く同じライブを絶対に有観客でやろうね、それまで絶対みんなやめないでねみたいな、変な一体感ができて。そういうのはみんなモチベーションになったんじゃないかな。それで本当に客入れした初めてのライブは、めっちゃみんな喜んでいたし、それこそ去年ぐらいから徐々に声出しがOKになって、「じゃあ、次声出しライブ解禁ね」ってなったら、それはみんなすごくエモーショナルな気持ちになってたし、そういうのはすごく覚えてます。

成田:よく思い出すのが、バンドじゃないもん!のツアーのスタートが埼玉であったんですけど、そのタイミングの1発目でコロナ禍になって。ライブもどんどん中止になっていって、結局ライブハウスが今度は悪者になっていってしまった瞬間があったんですよね。でも、どうしてもやっぱりライブを届けましょうっていうことで、ソーシャルディスタンス全開の「はらっぱライブ」っていう富士山の麓で収録した映像で配信をやりましょうという企画を作ったときは、結構印象にありますね。バンドじゃないもん!単独で、広大なキャンプ場の真ん中でやってっていう感じの。そういう表現としての映像を残せるといいかなと思ってちょっとやってみました。

―今は声出しもやってますし、はらっぱでライブをするって今考えると非現実的ですよね。

成田:今だったらあまりやらないですよね(笑)。

もふく:本当ですよ。なんだったんだっていう(笑)。


Photo by Mitsuru Nishimura

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