もふくちゃんと成田光春が語る、ディアステ&パーフェクトミュージック経営統合後の3年間

緊急事態宣言下でさまざまなクリエイターを巻き込んで作ったMV、コロナ禍ならではの作品

―クリエイティブな目線で言うと、2人はプロデューサーとして3年間コロナ禍でいろんなアーティストの作品やイベントを手掛けてきたと思うんですけど、達成感があったというか満足感が高かったのってどんなことですか。


もふく:でんぱ組は一番最初の緊急事態宣言のときに、「なんと!世界公認 引きこもり!」っていう曲をヒャダインさんといろんなクリエイターさんを巻き込んで、1週間だけで曲作るみたいなのをやって、MVを1本作ったことがあったんです。それはあのときじゃないと生まれなかった作品だなというので覚えてます。本当にクリエイターの人たちも自分たちも不安で仕事も一気になくなって、っていうなかで。お金とかの話よりも、みんな仕事もなくなって家でやることもなかなかできない中だけど、時間だけはあるってなって。とりあえず演奏するよとか、作詞作曲やるよって。今まで関わってくれたクリエイターの皆さんが、バイオリンを弾いたりギターを弾いたり、ヒャダインさんが作曲したやつをワッて弾いたのがもう翌々日には集まるみたいな。そのスピード感で曲を作ったのでよく覚えてます。



成田:コロナで一気に変わっていったタイミングのときに、バンもんの「6 RESPECT」って曲があったんですけど、MVを作ってプロモーションをしようと思ったときに全部デジタルに置き換えなければならないっていうことになって。じゃあそれぞれステイホームの中で、オンラインミーティングで作りましょうと。「6 RESPECT」という曲なので、メンバー6人に対してリスペクトするところをそれぞれが言うんですけど、画面越しでも想いもグルーヴも伝わるよ、というポジティブな面も含めて表現できたのはすごく印象にありますね。「遠くでもちゃんと思ってますよ」っていう意味も込めた楽曲になったかなって。



―そういう経験があるからこそ、今ノーマルな形でライブという現場が戻ってきてるのを見ててどうですか? あの時期は無駄じゃなかったというか。

もふく:でも、やっぱり元と全く一緒じゃないよね。昔に戻ったんじゃなくって、もう別の世界線が始まったんだなっていう感じはします。声出ししてすごく懐かしいなみたいな感じもありつつ、やっぱりその3年で業界全体のファン層も入れ替わったり、アイドル業界の価値観も全然変わったりとかしてるんで。このコロナ禍でコールとかを知らないお客さんとかも増えているし、それが別にぜんぜん悪いことじゃないけど、本当に変わったんだなみたいなこともあるし、やっぱり客足も前と全く同じではないかな。みんな、VTuberに行ったりTikTok見たりとかで他のコンテンツを見つけたりとかやっぱり3年ってすごい大きいなと思っていて。たぶんコロナが終わったからライブハウスに行こうみたいな、すぐそんな風に切り替えができないんじゃないかな。もうライフスタイル、マインドとかも変わってるから。やっぱり世代がちょっと上の人たちはみんな「グランピングしようぜ」みたいに言ってるじゃないですか(笑)。

成田:ははははは(笑)。

もふく:「ライブハウスに行って大声で叫ぼう」みたいにすべてのお客さんがすぐにそう思えない、っていう中で、色々変えていかないとなっていうのを最近感じてます。暗い話はしたくないけど、多分みんな貧しくなってるなみたいなことは感じるからね。昔みたいにいいものを出したら反応してくれる世界じゃなくなってるっていうか。それより「良くない、けしからん」っていう方がモテるっていうか、話題になるからね (笑)。

―コロナで一気に価値観が変わった?


もふく:変わったよ~。お寿司ペロペロもなんでもそうだけど、なんかやっぱりコンテンツじゃない部分でのバズみたいな虚しいものは増えた気がするよね。単純な「めっちゃくちゃいい曲」だけ、みたいなものにもう若い子は反応しないんだと思う。昔の日本が持ってたサブカルチャー的な、「知る人ぞ知る」とか、「誰もやってない」みたいなのがかっこよくてみたいなあの感覚はもう全くなくなったっていうのは思います。もういわゆる質の良いだけのものを出しても刺さらないし、炎上を恐れずバズってやろう的な感覚も持ってないとダメなんだなっていうこともわかってるんですよ。だけど、「それはしたくないんだ」っていうプライドもあるわけじゃないですか? だからすごく難しい。今のアイドル業界を見てると、バズって客集めようみたいな即物的なことが結構多いなとは感じちゃうんですよね。でもそれが若い子が求めてることなんだろうなと思うと、うちらおじさんおばさんは、田舎でグランピングしてるしかないんだっていう岐路には立たされてるなとは思います。

成田:ははははは(笑)。この3年を経て、完全にエンターテイメントの選び方が変わったというか。TikTokやライバー系、YouTubeもそうですし、オンラインのコンテンツと戦っていかなければならないし、そこにネイティブな人たちにどういう風に届けていくかっていう手法を考えて行かないといけないなって。TikTokだったら、すごく尖り切って「この曲すげえな」みたいなことをやるっていうよりは、そこに迎合されるクリエイティブっていうのもやっぱりどこか片隅に考えなければならなくなったなっていうのはすごくあります。

もふく:ちょっと、味付けがスナックチックにはなるよね。「表面的に美味しい」とか可愛いとか、ピャッていう表面上のね。Instagramでもそう思ってたけど、もっといくんだそっちっていう即物的なものは、もう止めらんないよね。

成田:止められないですね。クリエイティブの考え方もちょっと変わってるんだろうなってすごく思うのと、あとはそこに球を投げていっても、誰も取ってくれないっていうパターンも全然あるので、やっぱりいかに尖りきってもそこに興味を示されなかったら、ちょっと迎合していった方がいいのかなって思います。決してライブでアイドルシーンにお客さんがいないとか、そういうわけじゃ全然ないんですよね。ただ傾向が3年前とはもう全然違います。楽曲が最高でめちゃくちゃウケて「うわ~」みたいなよりも、「かわいい、かわいい! これTikTokで聴いたことある」みたいな。でもTikTokから出たらライブには来ないっていう(笑)。

もふく:そうそう、「来ないんかい!」ってなるよね(笑)。

成田:知名度と現場が比例しなくなりましたね。それは本当に思います。

もふく:でも全然再生回数持ってないけど、現場には1000人いるとかは全然ある。だからどっちをどういう風に使うかが難しくて。全然考え方が違うんだなとは思う。


Photo by Mitsuru Nishimura


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