the shes goneが語る、心の距離をテーマに人間の内面を描く理由

―「アポストロフィー」は、歌詞に関して「文明を頼って」「親指の言葉」のような独特な言い回しが多いですよね。

時代によって使うツールが変わっていく中で、のちのち懐かしいって思われるような生々しい単語を使いたくなかったんですよね。言葉を濁すことで、その動作であったり、背景にあるドラマが見えるなと思って。僕はコロナ禍で人間味っていうのを考えるタームに入って、人間としての熱、人間味を感じられるワードを探していたんだと思います。



―この楽曲では、最終的に2人が離れている距離を乗り越えていくストーリーがあるのかなと思いました。

そうですね。離れている2人っていうのが、ライブに行きたくても行けない方のことを思って、ダブルミーニングになっているんです。自分で作った縛りのせいで、1年ぐらい書けなくて勝手に苦しみました。僕にはまだ「大丈夫」って言い切れる度量がなくて、でも「大丈夫なはずだよね」ってお互いを励ますことはできると思って、この曲のゴールに辿り着きました。未来に対する不安も期待も、一緒に背負うことができたら頑張れる気がしたんです。

―6曲目の「スクールボーイ」では、青春時代の初々しい恋心について歌われていますよね。この楽曲のストーリーは実体験からきている部分もあるんですか?

全てじゃないですけど、自分の経験を入れている部分もあります。咲坂伊緒先生の漫画作品『サクラ、サク。』に「陽だまり」という曲を書き下ろした時に、1番だけ「スクールボーイ」っていうテーマも一緒に作っていたんです。自分がもっと大人になった時に、学生時代のことが思い出として残っていたとしても、感覚や空気感は忘れてしまうと思ったので、今のうちにこの曲を書こうと思ったんです。この曲は作るのに全然時間かからなくて。主人公の気持ちをただ片思いっていうより、複雑な内面を表現したかったんです。気になる子から相談を受けていて、自分は結ばれるはずないって分かっていたとしても、話しちゃうみたいな。サウンド面でもドラムのピッチをちょっと下げたり、曲のキーも他の曲よりちょっと低めだったりして、リスナーの方も落ち着きながら聴けると思います。あとギターソロが入っていたりするので、曲の変化が分かりやすい曲にはなったかなと思います。



―そういったストーリーはすぐ思いつくこともあれば、熟考していく中でストーリーが変わっていくこともあるんですか?

皆さんが作文や論文を授業で書いているのと近い感覚だと思います。書き始めたはいいけどゴールが分からない、でもテーマはもう決まっているみたいな。歌詞がストーリーになっているのは、僕が単純に覚えられないからなんです。コピバンやった時とか人の曲を覚えるのが苦手で。自分で0→1を作る場合、ストーリー性がある方が書かれてない細かい背景まで自分で理解しながら表現出来ますしね。「春よ、恋」に関しては、ストーリーがあまりないからこそ、書くのが難しかったです。

Rolling Stone Japan 編集部

Tag:

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE