the shes goneが語る、心の距離をテーマに人間の内面を描く理由

―若い時期って、人との距離が取りづらかったり、自分のことを知って欲しいけど知られたくないみたいな天邪鬼な気持ちを持つ人も多いと思うんです。兼丸さんは若いうちから心の距離をテーマに描き続けていますが、そこには何か理由はあるんですか?

それは1つ明確にあります。僕がバックボーンとして影響受けてきたバンドが、FUNKISTとback numberとSEKAI NO OWARIなんですけど、どの方も音楽をやる以前に種類の違う傷の負い方をされているんですね。それが自分にも当てはまる部分があって。僕は音楽が好きだからやっているというより、自分が抱えるフレストレーションなどを曲にしないとやっていられないという思いからバンドを始めたので、そこが根本にあって常に人間同士のことを考えているんだと思います。

―今作に収録された8曲の中で「春よ、恋」が先行配信されましたが、こちらの楽曲はとりわけ「君が好きだ」というストレートな思いが込められているなと思いました。

この曲は歌い出しとサビの歌詞がメロディとともに出てきていたんですけど、ストーリーの背景が自分の中で分かってなかったので、2年前にスタジオセッションして曲自体は完成して、ずっと温めていたんです。この曲は絶対的に春の風が吹いているような音だなと思っていて。the shes goneは春っぽいねって言われることがあるんです。たしかに「春の中に」や「栞をはずして」みたいな楽曲もあるので春のイメージがあるのは分かるんですけど、それとは別にアコギがあることで春っぽい爽やかな印象があると思って。そういう部分を考えた時に、「春よ、恋」ではアコギではなくバンドサウンドで春の爽やかさを伝えたいと思って、それに結構時間がかかってしまいました。

―なるほど。

歌詞でも苦労しましたね。他の曲の中には、絶対1パーセントはマイナス思考な自分がいるんです。でもこの曲では、それを出したくなかったんですよね。根暗な自分を出さないように歌詞を書くことに時間がかかって、1年ぐらい待ってもらいました。この曲は、歌詞では登場人物がどういう状況かってストーリー性は書かずに色んな人に当てはまるように書きました。あとは好きっていう言葉をなるべく使いたくなかったんです。でも、この悶々としているけど1番楽しい時の気持ちを言葉にするとしたら何なんだろうって考えたら、最後の最後に「好きって言う言葉以上に君を好きで居たいんだ」っていう主人公の気持ちを表すのにぴったりな言葉が出てきたのでそのまま使いましたね。



―歌詞を書く上で最後にバチっとハマる言葉が出てくることは多いんですか?

僕の場合は曲によりますね。共感できるって言葉はよく頂けるんですけど、あまりそこは意識していなくて。なるべくみんなと同じような表現は使いたくないなってモードで分かりやすい言葉や単語を使わないようにする時もあります。でも最終的に色々組み立てていったらストレートな言葉がすっとはまる時があるんですよね。この曲の場合は、他の言葉が最初に浮かんで「これは何を言いたいんだろう。この人はどういう気持ちなんだろう」って考えた時にまとめる言葉がすっと出てきました。逆に前に出した「ラベンダー」って曲では、なるべく好きっていう単語を避けていたんですけど、それ以外に思いつかなかったので「好きになっていく」という言葉を使いました。

―曲によってシンプルな言葉に辿り着く過程が色々と違ったりするんですね。

ぱっとメロディと言葉が出てきて、それが頭で考えるまでもなくハマっていると感じた時は無理に変えても絶対に違和感が出てくる。だからシンプルな言葉が出てきた時は自分でも納得しているし、いい意味でリスナーの方が頭を使わずに理解してくれるだろうなと思ってそのまま使うことにしています。

―今回の「春よ、恋」に関しては、長い時間考えた上で出てきた言葉だったんですよね。

他のワードや追いメロを考えてなかったんですよね。アウトロでロックバンドとしてメンバー全員が好きなことをやっている中で、最後にハマる言葉が欲しいなと思って、2年ぐらい悶々と考えている期間があったんですよね。それを常に考えていたからこそ、やっと言いたい言葉が出てきました。

Rolling Stone Japan 編集部

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