the shes goneが語る、心の距離をテーマに人間の内面を描く理由

―今作の1曲目「栞をはずして」は、失恋に苦しむ人々を救うメッセージが強く込められたバラードになっていますよね。

結論を言うとこの曲は過去の自分を救いたくて作ったんです。去年、先行配信を出すタイミングで他の曲が候補にあったんですけど、中々納得する歌詞やメロディが出てこなくて。そんな中、家で制作していたら、この曲が出てきたんです。イントロはそのまま僕が持ってきたものを使っていて。この曲ができて、今はこういうメロディと歌を自分が欲しているんだってことを見つけましたね。こういう哀愁と明るさをどっちも感じさせるメロディが珍しかったので、明るい曲にするか失恋曲にするかで迷ったんですけど。辛い時に前に進むきっかけになる曲をいつかは作らなきゃいけないなとは思っていたので、それをやる時期なんだなと納得しました。自分が初めての彼女に振られてしまった時に必要だった曲というのを念頭に置いて作りました。全てがノンフィクションではないですけど、過去の自分も救うつもりで作りました。

―2番のサビの歌詞では主人公の切ない感情が強く描かれていますよね。

2番に関しては、時系列として別れて少し経った後、主人公がまだ引きずっている状況だと思うんですよね。聴いている側にとっても主人公にとっても辛いことを受け入れる作業が必要だと思ったんです。皆さんの中で思い浮かぶ自分にとって大切な人に、目の前で「さよなら」って言われたら1番しんどい。でもそれってもう受け入れるしかないことかなって思って。それをどうやったらメロディに合う文字数に収められるか考えて、2番の歌詞を書きました。恋が終わったことを一緒に認識しつつ、頭の中で好きな人の声を再生できるくらい人を好きになれたことに自信を持っていこうよ、そんなに人を思える自分がいるなんて素敵じゃないかっていう風に少しでも前向きに持っていきたいと思い作りました。

―今回のミニアルバム制作において音楽的な部分のブラッシュアップ、またバンドとして今までになかった挑戦などありましたか?

個人的には、アコギの使い方やベースの立たせ方を今まで以上にブラッシュアップしましたね。

―7曲目の「どの瞬間も」は、アルバムの中でもロックサウンドが前面に押し出されている楽曲ですよね。

この曲は、シンプルにロックバンドとしての提示。短くてパワーのある曲をここで出しました。



―歌詞の世界観がサウンドにも影響していくんですか?

歌詞は最後の最後まで悩むことが多いので、最初になるべく曲のイメージをメンバーに伝えて、みんなの噛み砕き方でサウンドが変わっていきますね。ファーストアルバムに3分台でテンポが早くてギターロックなサウンドの曲はあったんですけど、「どの瞬間も」はそれと全く同じにはしたくなかったんですよね。一つのジャンルに括られるのが嫌だったので、コーラスをめちゃめちゃ攻めた動きにしていたり、アウトロではギターのアルペジオの音を入れることで、「きっと報われるはず」っていう最後の言葉が恨みじゃなく、ちゃんと音で昇華してあげようとしたんです。言葉数が少ないからこそ、アウトロのギターで前向きな提示を挑戦的に入れました。あとは、なるべくシーケンスを使わず、自分たちの楽器で音を鳴らすことを意識していて。「どの瞬間も」では、最後のサビで4本ぐらいのギターが後ろで小さく、お客さんが聞こえないぐらいの音で鳴っているんです。ブラッシュアップの面では、アコースティックギターの使い方を意識しています。僕たちが思うバンドの中のアコースティックギターの音を考えて入れました。アコースティックギターが参加している曲が他のアルバムより多くなっていると思います。「アポストロフィ」では、イントロからAメロであえて僕はアコギを弾かないようしました。

Rolling Stone Japan 編集部

Tag:

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE