追悼・ジェフ・ベック 世界を魅了したギタリストの軌跡

サウンドガーデンのキム・テイルは、次のように言葉を継ぐ。「ギタリストと聞いて、いつも真っ先に頭に浮かぶのがジェフ・ベックだ。ベックはギターの達人だが、テクニックをひけらかすタイプではない。70年代後半から80年代後半にかけては、多くのギタリストがテクニックばかりを重要視していた。彼らは、ギターを声ではなく、弾きこなすべき道具として扱ったんだ。でも、ベックは違った。ベックは、ギターをマイクとして使った。それだけ自信があったんだ」(同じ特集記事の中で、ベック自身はジャンゴ・ラインハルトから多大な影響を受けたと語っている)。

2009年、ソロアーティストとしてロックの殿堂入りを果たしたベックは、授賞式で歴史的なスピーチを披露した。ヤードバーズのメンバーとしてロックの殿堂入りを果たしてから17年後のことだ。授賞式でベックは、「今夜は自分を褒めてあげるべきだと、誰かに言われた。でも、私はそんなことはしたくない。なぜなら、私はバンドを追われた身だから。私は追い出されたんだ。あんな連中、クソ食らえ」と吐き捨てたのだ。当時ベックは、ローリングストーン誌に「自分がノミネートされるなんて、信じられなかった」と語った。「私が殿堂入りだなんて、あり得ないことだと思った。その後も私はずっと音楽を続け、さまざまな変遷をたどってきた。それに耳を傾けてくれた人に心から感謝している」



ベックは、英国文化が世界を席巻した“ブリティッシュ・インヴェイジョン”や当時まだ新しかったブルース・ロックにおいて頭角を現したギタリストだが、その後もジャズ・フュージョンからトランス(イモージェン・ヒープの「Rollin’ and Tumblin」)、さらにはオーケストラ・ロック(2010年の『Emotion and Commotion』)やヘヴィーメタル(オジー・オズボーンの2022年の『Patient Number 9』のタイトルトラックに参加)といったジャンルに自らの卓越した音楽性を注ぎ続けた。「ジェフ・ベックのようなアーティストにアルバムに参加してもらえることは、光栄以外の何ものでもない。ベックのようにプレイできるギタリストはこの世に存在しないし、「Patient Number 9」のギターソロには度肝を抜かれた」と、当時オズボーンは語った。

30年以上にわたり、ベックはシールからケイト・ブッシュ、さらにはロジャー・ウォーターズやモリッシー、ZZトップに至るまで、多種多様なアーティストたちとのコラボレーションを行ってきた(「自分が指名されたというのに、断る理由なんてないだろう? 私が生きていることを覚えてくれている人がいるだけでありがたいのに」と、こうしたコラボレーションについてベックは本誌に語った)。ベックと長年来の友人である俳優のジョニー・デップが共演したアルバム『18』は、惜しくもベックの最期のアルバムとなってしまった。本作には、ふたりがカバーしたビーチ・ボーイズやヴェルヴェット・アンダーグラウンド、マーヴィン・ゲイ、ジョン・レノンの楽曲が収められている。

ソロアーティストとしてもベックは精力的に活動し、多くの作品を残した。2010年代における「最優秀ロック・インストゥルメンタル・パフォーマンス」部門へのノミネートや受賞をはじめ、1989年から通算7回もグラミー賞に輝いたのだ。

「ギターがとてもメロディアスなおかげで、ボーカリストの不在を感じさせない」と、ベックの演奏について語るのは、ギタリストのマイク・キャンベル。「ベックの中には精神性と自信がある。それは、もっと偉大なものに対するコミットメントでもある。ベックのライブを観た後、私は自宅でさっそく練習をはじめた。『ジェフ・ベックのようになりたいのなら、なすべきことをなせ』。ベックは、私にこう教えてくれたんだ」

>>関連記事:ジミー・ペイジ、クラプトン、ジェフ・ベックによる83年の「いとしのレイラ」を振り返る
>>関連記事:ジェフ・ベック、ジミ・ヘンドリックスとの思い出と最新アルバムを語る


From Rolling Stone US

Translated by Shoko Natori

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE